料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

文字の大きさ
18 / 48

第15話 魔法使い見習いのソフィア

しおりを挟む
「あぁ、そうだよ。ただ、正確に言うとここは職業学校の宿舎だけどね」
「よかったー! ここまで物凄く遠かったじゃないですかー。もしも、これで違う場所だったら……って、ビクビクしちゃいましたよー」
「わかる! 俺たちも昨日来たんだけど、道を間違えたんじゃないかって何回思った事か」
「ですよねー! あ、私はソフィアっていう名前なんですけど、お兄さんは?」
「すまない。俺はアルフレッドだ。こっちは、フレイア。これからよろしく頼むよ」

 ソフィアと名乗った少女は、自身の身長と同じくらいの長い杖を持っているので、魔法を使うのだろうか。
 この世界に魔法がある事は姉さんから聞いて居るけど、魔法らしい魔法といえば、クララの治癒魔法しか見た事が無いんだよな。
 しかもハッキリとは見ていないから、是非とも魔法というのを見てみたい。

「とりあえず、その中に荷物なんかを置くんだけど、仕切りとかが無いから、貴重品は置かない方が良いかもしれないな」
「えっ!? そうなんですか。それはちょっと困りましたね。見ての通り、私は魔法使い志望なので、腕力も体力もなくて……ここへ来るのも、体力の限界で休み休み来たくらいなんです。出来れば杖以外の荷物は置いておきたいんですけど……」
「そういう事なら……フレイア。ソフィアの荷物を聖壁の中へ入れてあげる事は出来ないだろうか」

 ソフィアが困っていたので、フレイアに聞いてみたのだが……あれ? 何か不機嫌になってないか?

「フレイア、どうかしたのか? やっぱり体調が……」
「ち、違うんだ。その……いや、何でもない。ソフィア殿の荷物を聖壁で守れば良いのだな? 任せておけ」

 そう言って、フレイアがソフィアのリュックを預かり、二人で宿舎の中へ。
 聖壁スキルの説明を行い、戻って来た。

「フレイアさん、ありがとうございます」
「いや、大した事ではないから気にしないでくれ」
「ところで講習は明日からで、今日は自主訓練だって話を聞いたんですが、お二人は何をされているのですか?」
「私とアルフレッドは、前衛タイプだからな。私がアルフレッドに胸を借りて稽古をつけてもらっているのだが……生憎、二人とも魔法は使わないのだ」
「そう……ですか。わかりました。では私は、その辺で魔法の練習をしてきますね。夕方までには戻りますねー!」

 そう言って、ソフィアが森の中へと姿を消す。
 今の所、この辺で魔物は見かけていないが、大丈夫だろうか。

「さて、アルフレッド。私たちも訓練を再会しようではないか」
「そうだな……だが、ソフィアの近くでも構わないだろうか。もしも魔物が現れた場合、彼女は先ず対応出来ないと思うんだ」
「まぁ、そうだな。正直言って、強そうには見えなかった」
「だよな。俺もそう思ってさ」

 ソフィアは歩き方とか身のこなしとか……隙だらけなんだよね。
 後衛で魔法を使うタイプだと思うから、そういう身体能力よりも、魔法の力的なのが重要なんだろうけど、近付いてしまえば白虎の力を使わなくても勝てそうだしさ。
 魔物とかと戦う時も、前衛に守ってもらって、後方から攻撃魔法を使ったりするんだろうし、一人で行動している時に魔物と遭遇してしまったら、為す術もないと思うんだ。
 フレイアと考えが同じだと分かったので、早速移動しようとしたんだけど、

「アルフレッド。少し待って欲しい。私もソフィアは弱いと思うが、しかしそれは過保護ではないだろうか」
「そうかな? 確かに、これから冒険者としてやっていく訳だけど、今は未だ見習いだし……」
「そういう意味ではなくて、ここは冒険者になる為の見習いが集まる学校の敷地なのだろう? そんな場所に魔物が出るとは思えないという事だ」
「それはそうだけど、万が一って事はないか?」

 フレイアから待ったが掛かってしまった。
 だけどフレイアの言い分も分からなくはないので、結果としてギリギリ小さく視界に入るくらいの距離という、何とも微妙な場所で修行をする事に。
 出来ればソフィアの魔法を見たかったんだけど、無断で他人の手の内を知るのも良くないかと思い、フレイアとの稽古に専念する事にした。
 ……何となくだけど、フレイアの剣が鋭く、昨日よりも力が込められている気がするんだけど……き、気合が入っているのだろう。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

処理中です...