料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

文字の大きさ
27 / 48

第22話 人工ダンジョンのボス

しおりを挟む
「じゃあ、俺たちは先に出発させてもらうぜ……ちなみに、左の通路を進ませもらう」

 最後の課題を前に、二人組の男たちが先に出発した。
 俺とフレイアとソフィアは残ってオジサンの説明を受ける事に。

「彼らは数回目の受講なので先に行きましたが、このダンジョンは三つの道があります。左側を進むと言っていたので、皆さんは真ん中か右の道を進むようにしてください」
「あの、私たちが左側を通ってはいけない理由は?」
「左側の通路に出る魔物とボスを、あの二人が先に倒してしまいますからね」

 なるほど。それはそうか。
 魔物を倒して素材集め……とかなら別だが、ダンジョンを突破しろという課題で、後をついて行くだけでクリアっていうのはダメだよな。

「ちなみに、このダンジョンに現れる魔物は弱いが、距離が物凄く長い。地上からここへ戻って来るのも翌日になるので、野営をする事になるだろう。尚、仮に夜通し歩いて深夜に戻って来たとしても私は居ない。その為、夜はしっかり休むように」

 野営か。
 俺は全く問題無いが、フレイアとソフィアは大丈夫だろうか。
 チラっと様子を伺ってみたけど……二人とも何とも思っていなさそうだな。

「以上で説明は終わりだ。では、最後の課題、頑張ってくれ」

 そう言って、オジサンが何処かへ行ってしまった。

「じゃあ、真ん中と右……どっちでも構わないよな?」
「うむ。では、真ん中にしよう」
「あ、私も連れて行ってくださーい!」

 フレイアの提案で真ん中の道へ入り、ソフィアもついて来る。
 暫く歩くと、魔物っぽいのが現れたのだが、

「……このネズミが魔物なのだろうか? 随分弱いし、ダンジョンに棲みついている動物かな?」
「そうかもしれないな。無視しても良いが、目障りなら私が斬り捨てよう」
「あの、それってラージ・マウスって言って、一応魔物として扱われているんですけど……お二人にとっては障害にならないんですね」

 とにかく出現するのが弱い。
 ネズミだとか、蛇とか、サソリとかが、ちょっと大きくなった程度の魔物だ。
 白虎の力や風魔法を使うまでもなく、蹴り倒しながら暫く進むと、黄色いスライムが現れた。

「お。ちょっとだけ魔物っぽくなったな。俺の風魔法を試してみよう……ウインド・カッター」

 腰に差した借りている杖を手にすると、手首のスナップを利かせながら杖を振り……一撃でスライムを倒した。

「うむ、見事だな。アルフレッドは体術と風魔法が使えるようになったのだな。剣しか使えない私とは大違いだ」
「……今のは、どっちかっていうと魔法じゃなくて体術な気が……いえ、何でも無いです」

 ソフィアが俺の魔法について、何か言いかけてくれていたようだが、何だったのだろうか。
 良く聞こえなかったので、改めて聞いてみよと思ったのだが、前方に明るい光が差し込んでいる。

「あれ? まさか、もうダンジョンは終わりなのか?」
「そんな事はないだろう。あの試験管の男性は、ダンジョンにボスが居ると言っていたし」
「だよな。じゃあ、このダンジョンを出た所にボスが居るのかもな」

 光苔の薄暗い明かりに慣れていた目には眩し過ぎる外へ出ると、大きなドラゴンが居た。
 なるほど。これなら確かにボスっぽいな。

「あ、アルフレッド……これは棄権しよう。流石にこんなのがボスだなんて、おかしい」

 フレイアが棄権するというが……あぁ、俺が白虎の力を使わずには勝てないと言いたいのか。
 確かに、白虎の力を使えば一撃だが、使わずに風魔法だけで倒すのは難しいのかもしれない。

「あ、アルフレッドさん! フレイアさんの言う通りです。ドラゴンの鱗は魔法が効きにくいですし、無理ですよっ!」

 なるほど。ドラゴンに風魔法は効かないと。
 それは確かに困ったな。だが、白虎の力を使わずに冒険者としてやっていけるようになりたいのだが……いや、待てよ。
 俺一人なら使わずに挑んでも良いけど、フレイアとソフィアと一緒に行動している訳だし、二人の合否もかかっているから、ダメか。
 俺の我が儘に二人を付き合わす訳にもいかないし、さっさと倒すか。

「アルフレッド!? 何をする気なんだ!? 流石にアルフレッドでも無理だ……は!?」
「え!? えぇぇぇっ!? あ、アルフレッドさん!? ちょ、ちょっと、今ドラゴンを殴って……一発で倒しました!?」

 フレイアとソフィアが何か騒いでいるけど……お、前と違ってこのドラゴンは消えないのか。

「おーい、フレイア。ドラゴンの肉を適当に斬ってくれないか? 旨そうだから食べてみよう」
「は……ははは。なるほど、私が勝てぬ訳だ。えーっと……ど、ドラゴンステーキという奴か。アルフレッドの料理は旨いし、楽しみだな」
「えっ!? これ、夢……ですよね? どうしてドラゴンに遭遇して平然と……あ、私も食べます! 食べますぅーっ!」

 流石に、大きなドラゴンの肉を全ては持ち運べないので、少し早めの昼食とする事にした。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

処理中です...