料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人

文字の大きさ
28 / 48

第23話 旨過ぎるドラゴンステーキ

しおりを挟む
「さて、何処が旨いんだろうな」

 二度目のドラゴンを倒し、目の前に大きな肉があるんだけど、姉さんと一緒に暮らして居た頃もドラゴンを調理した事は無い。
 山に熊は居てもドラゴンは居なかったからね。
 とりあえず、仮に鶏みたいな感じだとすると、モモ肉が旨いのだろうか?
 まぁ食べてみれば分かるか。

「フレイア。火を頼む」
「うむ、任せろ」

 適当な石を板状に斬って、フレイアに火を点けてもらったら、ダッシュで調味料の代用品を取って来る。
 次はフレイアが切り分けてくれた肉の中から、一番骨が少なそうな赤身の肉の塊を選び、塩コショウで下味を付けて、強火で焼く!
 表面をしっかり焼いて旨味を閉じ込めたら、石板の端――火が弱いところでじっくり焼いて……出来たっ!

「うわ、旨っ! ドラゴンってメチャクチャ旨いんだなっ!」
「こ……これはっ! す、凄まじい……旨味が口の中に溢れるっ!」
「はぅぅ……美味し過ぎて、言葉が出ないですっ!」

 ただ、塩コショウをして焼いただけなのに、こんなに旨いのかっ!
 食べた事はないけど、日本でよく聞いた黒毛和牛とかの最高級品がこんな感じなのかもしれない。
 ……あ、あれ? 気付いたら、あっという間に食べ終わっていた。

「……もう一枚行くか」
「うむ! これは……止まらないな!」
「い、いいんですか!? 私、何もせずに食べてるだけですけど、こんなに美味しい物を良いんでしょうかっ!?」

 フレイアは即答で。ソフィアはオロオロしているが、気にするなと声を掛け、今度は醤油の代用品とワサビ……と俺が勝手に呼んでいる植物をベースに作ったソースで食べてみる。

「こっちも旨いっ! 塩だけの方が肉の旨味がよく分かるが……これはこれでアリだなっ!」
「なっ!? こんな味のソースは初めてだっ! アルフレッド……一体、どれ程沢山の料理のレパートリーがあるんだ!?」
「アルフレッドさん……結婚しましょう! そして、毎日この料理を食べさせてください」

 いや、ソフィア。流石に毎日ドラゴン料理は無理があるだろ。
 あと、フレイアはどうしてそんな驚いた顔をしているんだ? 流石にソフィアの結婚しよう……は冗談だと思うぞ? ……えーっと、物凄くソフィアの目が輝いているが、冗談……だよな?
 暫くドラゴン料理を堪能し……気付けば、かなりの時間が過ぎてしまっていた。

「さて。旨いご飯も食べたし、そろそろ行くか」
「アルフレッド。この残ったドラゴンの肉はどうするのだ? ドラゴンの死骸は鱗や骨に、血も素材として買い取ってもらう事が出来、捨てる所が無いと言われる程だぞ?」
「そうなのか? しかし血はもう無理だな。あと骨と鱗くらいは持ち運べるかもしれないが、肉は傷むからな」

 ドラゴンの血が貴重な物だなんて知らずに、普通に血抜きして、地面に掘った穴へ流していたな。
 ドラゴンの死骸が買い取ってもらえるというのであれば、装備品を揃えたり宿代にしたりと、冒険者として生活していく資金の足しにしたい。
 なので、ダッシュで竹を取ってきて、大きめの籠を作ると、骨と鱗を放り込む。
 肉は今晩の食事分くらいだけ取って、後は諦めるか。

「あ、待ってください。それなら、私の水魔法で……フリーズ・ブリッド」

 ソフィアが杖をかざし、ドラゴンの肉へ青白い弾を放つと、カチコチと固まっていく。
 ソフィア曰く、ドラゴンの鱗は魔法が効きにくいが、その内側の肉には普通に魔法が通じるらしい。

「凄いな! これなら数日はもちそうだな!」
「はいっ! という訳で、暫くアルフレッドさんのドラゴン料理が食べられますね!」
「そうだな。だが、肉ばっかりだとバランスが悪いから、夕食は野菜を多めにしような」

 そう言って大きな籠を背負うと、目的地に向かって歩きだす。
 とりあえず、道中で野営に適した場所を探しながら進まないとな。

「あの……アルフレッドさん。ドラゴンのお肉に目がくらんで、沢山凍らせちゃいましたけど……それ、重くないですか?」
「ん? いや、これくらいなら全然平気だぞ? 昔住んで居た山で倒した、とてつもなくデカい熊を運ぶ時の方が大変だったな」
「アルフレッドさんが運ぶのに苦労する熊って一体……いえ、やっぱり何でも無いです。聞かない方が幸せな気がしてきました」

 ソフィアからよく分からない事を言われながら歩いて行き、日が傾いて来た頃に、丁度良い感じの泉を見つける事が出来た。
しおりを挟む
感想 41

あなたにおすすめの小説

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...