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楠涼夜はいつでも目を惹く
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「新入生代表挨拶、楠涼夜」
「はい」
涼夜は堂々と壇上に登る。
皆がその美しさに息を呑むのが分かる。
涼夜は硬派な学ランをキッチリと来ているのに、何故か爽やかだ。
逆にシンプルな黒い学ランが涼夜の美しい顔を引き立たせていた。
涼夜はそんな皆の様子を気に留めることもなく、スピーチを始める。
その時、一瞬、涼夜の瞳が揺らめいた。
ほんの僅かな時間だった。
誰も気付かないような刹那。
しかし、長年の付き合いである俺はすぐ分かった。
それは特殊なことだった。いつも冷静沈着な涼夜が動揺することなど滅多にない。
涼夜が反応した時の目線の先を追う。
そこには、小柄な新入生がいた。
白い肌に大きな黒い瞳の美少年。
彼は頰を赤く染め、瞳を潤ませて、涼夜をまっすぐ見つめていた。
まるでこの世には涼夜と彼しか存在していないかのように。
あぁ、彼だ。
彼が、本物のーー。
俺は彼が涼夜の運命の番だと即座に悟った。
運命の番ーー
理性を超えて本能で求め合う2人のこと。
家族よりも深い絆で結ばれる2人のこと。
そして、楠涼夜が長年求めているもの
幸運なことに、涼夜と俺は同じクラスだった。そして、彼も同じクラスだった。
俺はチラチラと彼の方を見てしまう。
白浜雪都という名のようだ。
彼の雰囲気によく似合う美しい名前だと思った。
彼は涼夜の方をじっと見ているようだが、涼夜は全く彼を見なかった。
それが逆に不自然すぎて、涼夜にとって彼が特別なのだと分かった。
しかし、入学式が終わっても、入学祝いに俺らと涼夜の家族で寿司を食べに行っても、その後俺の家で2人でゲームをしても、涼夜が彼の話をすることはなかった。
「幹斗、こっち来て」
俺は涼夜に誘われるままにベッドに座る。
涼夜は俺の手を掴んで口付けを落とす。
次はおでこに、鼻に、頬に、そして唇に。
涼夜の瞳は熱を帯び、俺の頭はぼうっとする。
次に首筋に、鎖骨に、
だんだんと口付けの位置が落ちていく。
いつものあの流れだ。
いつもはこのまま涼夜に押し倒されているが、今日はそういうわけにはいかない。
俺は涼夜の口元を抑える。
「涼夜」
「なに?」
涼夜はいつものように穏やかな笑みを浮かべている。
まるで何もなかったかのように。
「今日さ…、
…やっぱ何でもないわ。
明日も学校だし今日はやめとこ。
おやすみ、また明日な」
「おやすみ」
涼夜に問いかけることなどできなかった。
何故かはわからない。
あの子運命の番だろ?よかったな!本物に巡り会えて!
そう言うだけで良いはずなのに。
口は鉛のように重かった。
「はい」
涼夜は堂々と壇上に登る。
皆がその美しさに息を呑むのが分かる。
涼夜は硬派な学ランをキッチリと来ているのに、何故か爽やかだ。
逆にシンプルな黒い学ランが涼夜の美しい顔を引き立たせていた。
涼夜はそんな皆の様子を気に留めることもなく、スピーチを始める。
その時、一瞬、涼夜の瞳が揺らめいた。
ほんの僅かな時間だった。
誰も気付かないような刹那。
しかし、長年の付き合いである俺はすぐ分かった。
それは特殊なことだった。いつも冷静沈着な涼夜が動揺することなど滅多にない。
涼夜が反応した時の目線の先を追う。
そこには、小柄な新入生がいた。
白い肌に大きな黒い瞳の美少年。
彼は頰を赤く染め、瞳を潤ませて、涼夜をまっすぐ見つめていた。
まるでこの世には涼夜と彼しか存在していないかのように。
あぁ、彼だ。
彼が、本物のーー。
俺は彼が涼夜の運命の番だと即座に悟った。
運命の番ーー
理性を超えて本能で求め合う2人のこと。
家族よりも深い絆で結ばれる2人のこと。
そして、楠涼夜が長年求めているもの
幸運なことに、涼夜と俺は同じクラスだった。そして、彼も同じクラスだった。
俺はチラチラと彼の方を見てしまう。
白浜雪都という名のようだ。
彼の雰囲気によく似合う美しい名前だと思った。
彼は涼夜の方をじっと見ているようだが、涼夜は全く彼を見なかった。
それが逆に不自然すぎて、涼夜にとって彼が特別なのだと分かった。
しかし、入学式が終わっても、入学祝いに俺らと涼夜の家族で寿司を食べに行っても、その後俺の家で2人でゲームをしても、涼夜が彼の話をすることはなかった。
「幹斗、こっち来て」
俺は涼夜に誘われるままにベッドに座る。
涼夜は俺の手を掴んで口付けを落とす。
次はおでこに、鼻に、頬に、そして唇に。
涼夜の瞳は熱を帯び、俺の頭はぼうっとする。
次に首筋に、鎖骨に、
だんだんと口付けの位置が落ちていく。
いつものあの流れだ。
いつもはこのまま涼夜に押し倒されているが、今日はそういうわけにはいかない。
俺は涼夜の口元を抑える。
「涼夜」
「なに?」
涼夜はいつものように穏やかな笑みを浮かべている。
まるで何もなかったかのように。
「今日さ…、
…やっぱ何でもないわ。
明日も学校だし今日はやめとこ。
おやすみ、また明日な」
「おやすみ」
涼夜に問いかけることなどできなかった。
何故かはわからない。
あの子運命の番だろ?よかったな!本物に巡り会えて!
そう言うだけで良いはずなのに。
口は鉛のように重かった。
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