12 / 15
楠涼夜は欠点がない
しおりを挟む
「あのさ、ちょっと相談したいことがあるんだけど良い?」
5月の中頃、新しい学校生活にも慣れてきた。
雪都が俺にそう言った時、涼夜は丁度委員会でいなかった。
もしかしたら、それを狙ったのかもしれない。
きっと涼夜の話だろう。
誰もいない講義室には春風が吹く。
髪を靡かせて立つ雪都は春の妖精のようだった。
「あのね、お願いがあるんだけど…」
「涼夜のことだろ?」
「え?」
「いや、昔からよくあることだし」
「僕は皆んなとは違うよ!そんな周りの女子とは一緒にしないで!」
彼は目尻をキッと上げる。
彼の地雷を踏んでしまったようだ。
それもそうか。彼はただのファンなどではなく、運命の番なのだから。皆んなと同じ扱いを受けたら腹立たしくなるよな。
「ごめん、そんなつもりはなくて。
えっと、分かってるよ。
雪都が涼夜の運命の番だってことは」
彼は目を大きく見開いた。
「雪都の態度を見ててもだけど、涼夜も雪都に対してはちょっと他の人とは違う対応してるところあるから。」
そう言うと、彼は嬉しそうに微笑んだ。
「雪都は気付いてるだろうけど、俺はベータだからさ。涼夜の運命の番じゃないし」
「それなら話が早いね!僕と涼夜くんが仲良くなれるように手伝ってよ。全然涼夜くんと良い感じになれなくて困ってるの…。」
しょぼんとする彼は庇護欲をそそる。
しかし、俺はすぐにうんとは言えなかった。
「ねぇ?だめ?いや?」
「嫌ってわけじゃないんだけど…」
「じゃあ手伝ってくれるってことだよね!」
「いや、でも、涼夜って結構頑固なところあるし、俺が役に立つかはわかんないって言うか…」
「…協力したくないってこと?
やっぱり、中町くんって涼夜くんのことが好きなんだ」
「違うよ!そんなわけねぇじゃん!」
「じゃあ、手伝って欲しいな。よろしくね~!」
彼はそう言うとパタパタと講義室から出て行った。
途端に俺の心は鉛のように重くなった。
とうとう決意を固める時が来たのかもしれない。
覚悟を決めなくては。
いつかはこんな日が来ると分かっていたのだ。
涼夜と距離を置き、正しい方向へと導く。
これが、親友としてできる、最大の恩返しではないか。
その時、ピコンとスマホが鳴った。
“さっきは突然ごめんね!協力してくれてありがとう!
詳しいこと言うの忘れちゃってたから、今言うと、あんまりベタベタしないで欲しい!たったそれだけ!例えば、アーンし合ったり、手繋いだり、ハグしたり、そう言うことはやめてね”
俺は了解と打ち込む。
出来るだろうか、俺に。
中学生の頃の、登下校の騒動を思い出す。
いや、あの時とは違うんだ。
彼は運命の番で、涼夜もそうなることをきっと望んでいるに違いない。
これで良いんだ。
俺は自分にそう言い聞かせた。
5月の中頃、新しい学校生活にも慣れてきた。
雪都が俺にそう言った時、涼夜は丁度委員会でいなかった。
もしかしたら、それを狙ったのかもしれない。
きっと涼夜の話だろう。
誰もいない講義室には春風が吹く。
髪を靡かせて立つ雪都は春の妖精のようだった。
「あのね、お願いがあるんだけど…」
「涼夜のことだろ?」
「え?」
「いや、昔からよくあることだし」
「僕は皆んなとは違うよ!そんな周りの女子とは一緒にしないで!」
彼は目尻をキッと上げる。
彼の地雷を踏んでしまったようだ。
それもそうか。彼はただのファンなどではなく、運命の番なのだから。皆んなと同じ扱いを受けたら腹立たしくなるよな。
「ごめん、そんなつもりはなくて。
えっと、分かってるよ。
雪都が涼夜の運命の番だってことは」
彼は目を大きく見開いた。
「雪都の態度を見ててもだけど、涼夜も雪都に対してはちょっと他の人とは違う対応してるところあるから。」
そう言うと、彼は嬉しそうに微笑んだ。
「雪都は気付いてるだろうけど、俺はベータだからさ。涼夜の運命の番じゃないし」
「それなら話が早いね!僕と涼夜くんが仲良くなれるように手伝ってよ。全然涼夜くんと良い感じになれなくて困ってるの…。」
しょぼんとする彼は庇護欲をそそる。
しかし、俺はすぐにうんとは言えなかった。
「ねぇ?だめ?いや?」
「嫌ってわけじゃないんだけど…」
「じゃあ手伝ってくれるってことだよね!」
「いや、でも、涼夜って結構頑固なところあるし、俺が役に立つかはわかんないって言うか…」
「…協力したくないってこと?
やっぱり、中町くんって涼夜くんのことが好きなんだ」
「違うよ!そんなわけねぇじゃん!」
「じゃあ、手伝って欲しいな。よろしくね~!」
彼はそう言うとパタパタと講義室から出て行った。
途端に俺の心は鉛のように重くなった。
とうとう決意を固める時が来たのかもしれない。
覚悟を決めなくては。
いつかはこんな日が来ると分かっていたのだ。
涼夜と距離を置き、正しい方向へと導く。
これが、親友としてできる、最大の恩返しではないか。
その時、ピコンとスマホが鳴った。
“さっきは突然ごめんね!協力してくれてありがとう!
詳しいこと言うの忘れちゃってたから、今言うと、あんまりベタベタしないで欲しい!たったそれだけ!例えば、アーンし合ったり、手繋いだり、ハグしたり、そう言うことはやめてね”
俺は了解と打ち込む。
出来るだろうか、俺に。
中学生の頃の、登下校の騒動を思い出す。
いや、あの時とは違うんだ。
彼は運命の番で、涼夜もそうなることをきっと望んでいるに違いない。
これで良いんだ。
俺は自分にそう言い聞かせた。
387
あなたにおすすめの小説
ギャルゲー主人公に狙われてます
一寸光陰
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。
自分の役割は主人公の親友ポジ
ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、
僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
やっぱり、すき。
朏猫(ミカヅキネコ)
BL
ぼくとゆうちゃんは幼馴染みで、小さいときから両思いだった。そんなゆうちゃんは、やっぱりαだった。βのぼくがそばいいていい相手じゃない。だからぼくは逃げることにしたんだ――ゆうちゃんの未来のために、これ以上ぼく自身が傷つかないために。
【完結】番になれなくても
加賀ユカリ
BL
アルファに溺愛されるベータの話。
新木貴斗と天橋和樹は中学時代からの友人である。高校生となりアルファである貴斗とベータである和樹は、それぞれ別のクラスになったが、交流は続いていた。
和樹はこれまで貴斗から何度も告白されてきたが、その度に「自分はふさわしくない」と断ってきた。それでも貴斗からのアプローチは止まらなかった。
和樹が自分の気持ちに向き合おうとした時、二人の前に貴斗の運命の番が現れた──
新木貴斗(あらき たかと):アルファ。高校2年
天橋和樹(あまはし かずき):ベータ。高校2年
・オメガバースの独自設定があります
・ビッチング(ベータ→オメガ)はありません
・最終話まで執筆済みです(全12話)
・19時更新
※なろう、カクヨムにも掲載しています。
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
起きたらオメガバースの世界になっていました
さくら優
BL
眞野新はテレビのニュースを見て驚愕する。当たり前のように報道される同性同士の芸能人の結婚。飛び交うα、Ωといった言葉。どうして、なんで急にオメガバースの世界になってしまったのか。
しかもその夜、誘われていた合コンに行くと、そこにいたのは女の子ではなくイケメンαのグループで――。
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる