偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜

一寸光陰

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【追話】友人はイカれてる

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「ごめん、別れてほしい」

俺は驚きで一瞬思考が固まる。

ついこの前までは仲良くやってたじゃないか。

「は?え?なんで?理由教えてよ」
「そうくんにかける時間がなくなったの」
「なんで?」
「私、涼夜君のファンクラブに入ったから!」

「は??」

俺がポカンと口を開けている間に、元カノは「じゃあね~」と明るく手を振って去っていってしまった。

3度目だ。

3度、涼夜とか言う男のせいで好きな人が奪われた。

クラスのマドンナもファンクラブに入ってるとか言うのだからもう終わりである。

「マジで涼夜って誰だよ…」

俺は顔も知らぬ楠涼夜に恨みを募らせていた。


何の縁か、楠涼夜と同じ高校に入学した。
風宮かぜのみや高校は、アルファ校を除く高校の中では最も頭の良い学校であり、アルファである俺もギリギリで受かった。しかし、アイツは首席で合格したらしい。何とも憎たらしいやつだ。

アイツが壇上に上がった時、自然と視線が奪われた。
カリスマ性とはこういうことを言うのか、と素直に感動してしまった。

近寄りがたい美貌にも関わらず、表情は穏やかな笑みを浮かべているのがミスマッチで目が離せない。話題のイケメン俳優も隣に並んだら霞んでしまいそうだ。
いつの日だったか、女子たちに見せてもらった盗撮写真よりもイケメンだった。

同じクラスだと分かった時、友達になろうと決めた。
いや、同じクラスでなかろうと友達になりたいと考えていた。

新しく友達になった雪都と話しかけに行く。

アイツは相変わらず穏やかな笑みを貼り付けて立っていた。
隣には少し小柄な活発そうな男子。

そうちゃんと呼んで、と言うと小柄な男子ーー幹斗は楽しそうに「そうちゃん!」と呼んでくれた。

その時、柔和な笑みを浮かべていた涼夜が一瞬真顔になった気がした。

俺が涼夜の方を見ると、やはり涼夜は穏やかな笑みを浮かべていた。

見間違いだったかもしれない、いや、やっぱり見間違いじゃなかったのか?

とりあえず分かったことは、涼夜は難攻不落だということだ。

涼夜は決して「そうちゃん」とは呼んでくれなかった。


しばらく一緒に過ごして分かったのは、涼夜は幹斗に対する愛が強いことだ。

涼夜と仲良くなりたい人は多い。
皆んな、涼夜くん、涼夜くん、と寄ってたかる。涼夜もにこやかに対応している。
しかし、涼夜が下の名前で呼ぶのは幹斗だけだった。かく言う俺も、高崎君なんて他人行儀に呼ばれている。
皆んなも、幹斗が涼夜にとってどれほど大事な存在か弁えているらしく、幹斗に対して悪意あることをする奴はいなかった。

雪都が時々幹斗のことを睨んでいるのはちょっと気にかかるが。


更衣室で体操服に着替えていると、幹斗の首筋に視線が行った。

「うわっ!噛み跡すごっ」
「えっ?マジ?」
「うん。ちょーくっきりついてるぜ」
「おい!涼夜、やめてって言ったよな?」
「ごめんごめん。幹斗の可愛い寝顔を見てたらつい」
「もー!」

涼夜はキラキラとした笑顔で笑っている。
ここまでの笑顔を見せるのは幹斗の前だけなのだから、完全に幹斗に依存していると言っても過言ではないように見える。

兎に角、この場に雪都がいなくて良かったと思った。
オメガは希望したら別室で着替えることもできるのだ。

大体のオメガは別室に行っているが、幹斗は行かないんだな。
まあ、彼氏がこんなに近くで牽制してたら誰も手は出さないだろうが。

「次やったら本当に許さないからな!」
「高崎のせいで幹斗に嫌われるじゃないか」
「は?俺のせい?お前が自制しろ!」

なんだかんだ、俺は涼夜たちと過ごす時間が好きだった。

涼夜もまた、だんだんと心を開いてくれるようになった。

「ほんっと、涼夜って幹斗のこと好きだよなー」
「当たり前じゃないか。だって運命なんだから」
「ふーん」
「まあ、お子ちゃまな聡一郎には分からないよ」
「おい!
ったく…。だんだん俺の扱いが雑になってきたな」
「あはは、悪い悪い」
「でも、涼夜が心開いてるのなんて幹斗くらいしかいないから、俺にも開いてくれたのかな、なんて考えて嬉しいんだけどな」
「まぁね。
考えてみると、聡一郎は初めての友達かもしれないな」
「初めての!?ちょー嬉しいんだけど!
さんきゅ!
…ってか、幹斗は?」
「俺は幹斗のことは初めから友達としてなんて見たことないし、物心ついた時から結婚するって決めてたから」
「うわーー、マジ重すぎ」
「文句ある?」
「ないでーす」

いつも完璧な優等生の涼夜が砕けた態度取るのは友達である俺の前だけだ。
そう思うと優越感がすごい。

ただ、どんどん遠慮がなくなって、イチャイチャもヒートアップしてるのはやめてほしい。
切実に。








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