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エンドレス「地下迷宮」編
第43話 売人の中
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ブワッ! と吹き荒れる眼下のマグマ。
チリっ──と音を立てて火の粉が顔をかすめる。
「ええ~……なにこれぇ……」
シンプルに熱い。息苦しい。
これまでも嫌な感じや気持ちの悪いステータス欄はあった。
けど、これはいくらなんでも変わりすぎでしょ……。
マグマ……マグマだよね、これ?
ドロドロの炎が数字のはるか下で波打ってる。
「これってさぁ……落ちたら死ぬ、感じだよね?」
おっかなびっくり顔を出してそっと下を覗き込む。
ぶおっ──!
「ひぇ~……!」
前髪がチリチリと焦げる。
「えぇ~……これどうやって数字を動かしたら……」
一瞬トホーにくれた後、ふと思った。
「いや、べつに無理して動かす必要はない……のかな?」
このまま帰っても別にプラスマイナス0では?
「いや、でも僕バッファーだし……。ここのまま帰ったんじゃ僕の存在意義が……。っていうかこんなヤバいステータス欄なんだから絶対に弱体化させとかないとヤバいって……」
とはいうものの。
グツグツ火の精霊が夏合宿してるみたいなマグマの前になすすべなく固まっていると。
「ゆ!」
「アオちゃん!」
地獄に仏。
マグマにアオちゃん。
僕のネックレスの中からアオちゃんがにゅるんと出てきた。
「アオ、おと~しゃまを持ち上げるゆ?」
「お願いできる? 下から火の粉が飛んできてるから気をつけてね?」
「ゆ? わかったゆ!」
と、いつものように姿を変えたアオちゃんは僕のお尻を包み込むと、ニュニュっと脚のなが~い椅子へと変化した。
さて。
謎の売人、ビンフのステータスは……っと。
名前 ビンフ・ベリアル
称号 狂信者
種族 半魔
性別 女
年齢 46
LV 68
HP 126
SP 115
STR 32
DEX 252
VIT 46
AGI 153
MND 91
LUK 1
CRI 1
CHA 84
ビンフ・ベリアル。
称号『狂信者』
種族『半魔』
すでに人じゃない?
狂信者ってなに?
狂信者だから半魔になった?
麻薬中毒とは違うの?
っていうか悪魔と半魔の違いって?
なんにしろ、だ。
麻薬を売りさばくこの女は人類の敵! とみなしていいだろう。
そして僕のやるべきことは「ビンフの数字を動かして弱体化させること」だ。
その後は、救援が来るまで彼女を引き止めておく。
さらに彼女の持っている魔薬の在庫を破棄させ、これ以上の麻薬の被害者を出さないようにできれば御の字。
そんなとこ。
そのためにも、まずはこのマグマをどうにかしなきゃいけないんだけど……。
「アオちゃん、大丈夫?」
とりあえず僕を支えてくれてるアオちゃんが心配。
「ゆ。火の粉は飛んできてるけどかわしてるゆ。おと~しゃまはじっくり全体を見渡して欲しいゆ」
「ありがと、無理しないでね」
「ゆ~」
たしかにアオちゃんは椅子の脚を器用に上げ下げして飛んでくる火の粉を器用にかわしてる。
ごめんね、アオちゃん。
すぐになにかどうにか考え出すからね~!
う~ん、でもどうしたら……。
頭をひねると、アオちゃんの言ってた言葉がピコンと浮かぶ。
「全体を見渡して欲しいゆ」
全体を見渡す、か……。
うん、そうだな。
そういえばこのマグマ……流れがあるけど、どこからどう流れてきてるんだろう。
首を伸ばしてマグマの流れの元を確認。
すると──。
「ふぇ!?」
なんか、いた。
ステータス欄の一番上。
『名前』の欄の上に空いた穴からマグマを流し込んでる悪魔が。
しかも熱いのかめっちゃ汗かいてる。
手に持ったシャベルで必死にマグマをかき入れてて僕に気づく様子はまったくない。
それに……どことなくビンフに似てるような気もするな、あの悪魔……。
「アオちゃん、下ろして」
「ゆ」
しゅるるとアオちゃん椅子の脚が縮んでいく。
「アオちゃん、お願いがあるんだけど」
「ゆ?」
幼女姿に戻ったアオちゃんが純真無垢な瞳で僕を見つめる。
「一番向こうまで渡っていきたいんだけど、なにかいい方法ないかな? 火の粉が心配だけど、例えばハシゴになるとかロープになるとか……」
「ゆ! それなら……」
嬉しそうに両手をバンザイさせたアオちゃんは素早く僕の背中にしがみつくと。
「ちょ、アオちゃん? 遊んでる場合じゃ……って……」
僕の足が、立っていた数字の上からふわりと離れた。
「うわああああああああああ!?」
「飛んでいくゆ!」
僕の背中から生えた大きな二つの翼。
「ええええええええ!?」
マグマから吹き荒れる上昇気流を翼で受け止め、「僕 with アオちゃんウイング」はビンフのステータス欄の中を悠然と飛び始めた。
「ギュギョッ!?」
さすがのマグマかき入れ悪魔も僕たちの姿に気づく。
誰も入ってこれないはずのステータス欄。
その中に入ってきた空飛ぶ闖入者。
そんな僕たちを排除すべく、悪魔はマグマをさておいて翼を羽ばたかせる。
「アオちゃん、下ろして!」
「ゆ!」
僕たちは「名前 ビンフ・ベリアル」と書かれた「フ」の角っこの部分に降り立つと、すかさず変身したアオちゃんダガーによって迫りくる悪魔を一刀のもとに斬り伏せる。
「ギュッ……!」
どこかビンフに似た悪魔は苦悶の表情を浮かべながらマグマの中へと落下していった。
その後、かき入れ役を失ったステータス欄の中からはマグマは失せ、黒く固い地面だけが残された。
「うわぁ、デコボコだけどこれでどうにか数字を動かせそうだ」
「ゆ! アオも手伝うゆ!」
「うん、ありがとうアオちゃん。それにしても飛べるなんて驚いたよ! アオちゃんの『大きくなったら軽くなる性質』がバッチリハマってたね!」
「ゆ~、なにかおと~しゃまの力になりたいと思ったら自然と頭に思い浮かんだゆ。おと~しゃまのためならアオ、なんでも出来る気がすりゅ!」
「ほんとにありがと。アオちゃんのおかげで僕たちほんと助かってるよ。感謝をいくら伝えても伝えきれないくらい」
「ゆ! それならギュッてしてほしいゆ!」
「ギュ? ハグのことかな?」
「ゆ!」
ぎゅぅ~。
「ゆゆゆ! アオ、おと~しゃまにギュッしてもらってとっても幸せゆ~」
それから僕たちはビンフの数字を。
STR「32」から「23」に。
DEX「252」から「225」に。
AGI「153」から「135」に。
MND「91」から「19」に。
CHA「84」から「48」に。
それぞれ動かして現実世界へと帰還した。
チリっ──と音を立てて火の粉が顔をかすめる。
「ええ~……なにこれぇ……」
シンプルに熱い。息苦しい。
これまでも嫌な感じや気持ちの悪いステータス欄はあった。
けど、これはいくらなんでも変わりすぎでしょ……。
マグマ……マグマだよね、これ?
ドロドロの炎が数字のはるか下で波打ってる。
「これってさぁ……落ちたら死ぬ、感じだよね?」
おっかなびっくり顔を出してそっと下を覗き込む。
ぶおっ──!
「ひぇ~……!」
前髪がチリチリと焦げる。
「えぇ~……これどうやって数字を動かしたら……」
一瞬トホーにくれた後、ふと思った。
「いや、べつに無理して動かす必要はない……のかな?」
このまま帰っても別にプラスマイナス0では?
「いや、でも僕バッファーだし……。ここのまま帰ったんじゃ僕の存在意義が……。っていうかこんなヤバいステータス欄なんだから絶対に弱体化させとかないとヤバいって……」
とはいうものの。
グツグツ火の精霊が夏合宿してるみたいなマグマの前になすすべなく固まっていると。
「ゆ!」
「アオちゃん!」
地獄に仏。
マグマにアオちゃん。
僕のネックレスの中からアオちゃんがにゅるんと出てきた。
「アオ、おと~しゃまを持ち上げるゆ?」
「お願いできる? 下から火の粉が飛んできてるから気をつけてね?」
「ゆ? わかったゆ!」
と、いつものように姿を変えたアオちゃんは僕のお尻を包み込むと、ニュニュっと脚のなが~い椅子へと変化した。
さて。
謎の売人、ビンフのステータスは……っと。
名前 ビンフ・ベリアル
称号 狂信者
種族 半魔
性別 女
年齢 46
LV 68
HP 126
SP 115
STR 32
DEX 252
VIT 46
AGI 153
MND 91
LUK 1
CRI 1
CHA 84
ビンフ・ベリアル。
称号『狂信者』
種族『半魔』
すでに人じゃない?
狂信者ってなに?
狂信者だから半魔になった?
麻薬中毒とは違うの?
っていうか悪魔と半魔の違いって?
なんにしろ、だ。
麻薬を売りさばくこの女は人類の敵! とみなしていいだろう。
そして僕のやるべきことは「ビンフの数字を動かして弱体化させること」だ。
その後は、救援が来るまで彼女を引き止めておく。
さらに彼女の持っている魔薬の在庫を破棄させ、これ以上の麻薬の被害者を出さないようにできれば御の字。
そんなとこ。
そのためにも、まずはこのマグマをどうにかしなきゃいけないんだけど……。
「アオちゃん、大丈夫?」
とりあえず僕を支えてくれてるアオちゃんが心配。
「ゆ。火の粉は飛んできてるけどかわしてるゆ。おと~しゃまはじっくり全体を見渡して欲しいゆ」
「ありがと、無理しないでね」
「ゆ~」
たしかにアオちゃんは椅子の脚を器用に上げ下げして飛んでくる火の粉を器用にかわしてる。
ごめんね、アオちゃん。
すぐになにかどうにか考え出すからね~!
う~ん、でもどうしたら……。
頭をひねると、アオちゃんの言ってた言葉がピコンと浮かぶ。
「全体を見渡して欲しいゆ」
全体を見渡す、か……。
うん、そうだな。
そういえばこのマグマ……流れがあるけど、どこからどう流れてきてるんだろう。
首を伸ばしてマグマの流れの元を確認。
すると──。
「ふぇ!?」
なんか、いた。
ステータス欄の一番上。
『名前』の欄の上に空いた穴からマグマを流し込んでる悪魔が。
しかも熱いのかめっちゃ汗かいてる。
手に持ったシャベルで必死にマグマをかき入れてて僕に気づく様子はまったくない。
それに……どことなくビンフに似てるような気もするな、あの悪魔……。
「アオちゃん、下ろして」
「ゆ」
しゅるるとアオちゃん椅子の脚が縮んでいく。
「アオちゃん、お願いがあるんだけど」
「ゆ?」
幼女姿に戻ったアオちゃんが純真無垢な瞳で僕を見つめる。
「一番向こうまで渡っていきたいんだけど、なにかいい方法ないかな? 火の粉が心配だけど、例えばハシゴになるとかロープになるとか……」
「ゆ! それなら……」
嬉しそうに両手をバンザイさせたアオちゃんは素早く僕の背中にしがみつくと。
「ちょ、アオちゃん? 遊んでる場合じゃ……って……」
僕の足が、立っていた数字の上からふわりと離れた。
「うわああああああああああ!?」
「飛んでいくゆ!」
僕の背中から生えた大きな二つの翼。
「ええええええええ!?」
マグマから吹き荒れる上昇気流を翼で受け止め、「僕 with アオちゃんウイング」はビンフのステータス欄の中を悠然と飛び始めた。
「ギュギョッ!?」
さすがのマグマかき入れ悪魔も僕たちの姿に気づく。
誰も入ってこれないはずのステータス欄。
その中に入ってきた空飛ぶ闖入者。
そんな僕たちを排除すべく、悪魔はマグマをさておいて翼を羽ばたかせる。
「アオちゃん、下ろして!」
「ゆ!」
僕たちは「名前 ビンフ・ベリアル」と書かれた「フ」の角っこの部分に降り立つと、すかさず変身したアオちゃんダガーによって迫りくる悪魔を一刀のもとに斬り伏せる。
「ギュッ……!」
どこかビンフに似た悪魔は苦悶の表情を浮かべながらマグマの中へと落下していった。
その後、かき入れ役を失ったステータス欄の中からはマグマは失せ、黒く固い地面だけが残された。
「うわぁ、デコボコだけどこれでどうにか数字を動かせそうだ」
「ゆ! アオも手伝うゆ!」
「うん、ありがとうアオちゃん。それにしても飛べるなんて驚いたよ! アオちゃんの『大きくなったら軽くなる性質』がバッチリハマってたね!」
「ゆ~、なにかおと~しゃまの力になりたいと思ったら自然と頭に思い浮かんだゆ。おと~しゃまのためならアオ、なんでも出来る気がすりゅ!」
「ほんとにありがと。アオちゃんのおかげで僕たちほんと助かってるよ。感謝をいくら伝えても伝えきれないくらい」
「ゆ! それならギュッてしてほしいゆ!」
「ギュ? ハグのことかな?」
「ゆ!」
ぎゅぅ~。
「ゆゆゆ! アオ、おと~しゃまにギュッしてもらってとっても幸せゆ~」
それから僕たちはビンフの数字を。
STR「32」から「23」に。
DEX「252」から「225」に。
AGI「153」から「135」に。
MND「91」から「19」に。
CHA「84」から「48」に。
それぞれ動かして現実世界へと帰還した。
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