異世界グランハイルド・アレンと召喚獣-守護魔獣グランハイルド大陸物語ー

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第三章

第二十九話・父イルビスの葬儀③(アレン再び行方不明に)

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昨日は六領主の方達と歓談できて良かった。父上のことを全く知らなかったので、いろんな逸話を聞けて嬉しかったけど、兄さまとは溝ができる一方だ。

今日の葬儀も僕がお爺様の横になって、前列に座る事になる。
後ろに兄さまとカトリーネス婦人だと、とても気を使う。

キュウキュウ、クッキーが鳴いて慰めてくれる、いつも僕の気持ちに敏感でこちらの話すこともわかっている。
クッキーのフカフカの尻尾に顔を埋める。 

「ありがとう。さて、覚悟を決めて行ってくるね。」

僕が部屋を出て、下に降りていると今まで見た事のないメイドさんがマリーさんが呼んでいると声を掛けて来た。
僕は何も考えずに彼女に付いて行くと、どんどん地下に降りて行く。

メイドさんが扉を開けて、「中でマリーさんが困っています。」と言われたので部屋に足を踏み入れた途端、扉の脇から黒い影が襲って来た。
目の前が真っ暗になった。







そろそろ、葬儀の馬車の出発の時間が迫って来ているのに、アレンが来ない。
扉番に尋ねるともう随分と前に部屋を出たと言い、部屋付きメイドや、ジョエル達、衛士が城の中を探して回っているが何処にも見当たらないようだ。

(おかしい。こんな大事な時に遅れるような子ではない。それに、いつもなら真っ先に文句を言うグラバルは何も言わない。まさか・・と思う。一方で、もしや・・とも、思ってしまう。) 

「いつまで待つおつもりですの?今日は大事な父親の葬儀だと言うのに!きっと、どこかに潜り込んで遊んでいるのですわ。」
「アレンはそんな子供では無い。きっと、何かあったのだ。」
「何かとは、なんです?お爺様。」グラバルが挑戦的に私を見て来た。
「・・・分からん。」そうとしか答えようがなかった。







城からジョエルが出て来てバルトに耳打ちし、バルトがこちらに遣って来た。
「やはり、どこにもいないそうです。もう、これ以上お客様方をお待たせするのは無理です。出発致しましょう。」
「しかし、・・。」
「大丈夫です、ジョエル達に引き続き探して貰います。アレンはきっと、まだ城内にいます。彼はこんな事ではへこたれませんよ、伯爵様。」
バルトは自信あり気に二ヤリと笑う。
「分かった、出してくれ。」

バルトは御者に合図を送り馬車の横に付いた。反対側にはケーヒルが付いて教会に向けて出発した。




先にイルビスの棺と共に出発していた、サージェント伯爵達と城の坂下門前で合流した。
(坂がきついので、万が一を考えて先にゆっくりと出発し、待ってくれていたのだ。)

彼らは領主であるにも関わらず、友人として棺と一緒に騎乗して見送ってくれると言う。
彼らの紋章入りの旗持ちや衛士達と共に、盛大に見送ってくれる真心に感激した。

私達の馬車が着くと、アレンが乗っていないのにフラン達は直ぐに気付き合図を送って来たが、軽く首を振るのに留める。

直ぐに隊列が整えられ、再び教会に向かって出発した。



城下街に近付くと、大通の両側は人々で一杯だった。多分、守護魔獣を手に入れたアレンを一目見ようと、近隣在郷から、いや、葬儀に招待されていない各領からの密偵達や領主本人が来ている事もあるだろう。
きっと、王都からも。
大変な人の数だ。

馬車が通るとざわめきが起こった。目的の人物が乗っていないのは一目了然だ。

ざわめきを余所に、伯爵は只、前をじっと見続ける。アレンの無事を願いながら。







ーーーーーーーーー


ジョエル達は城内から城外、厩舎と至る所を探したがアレンを見つける事が出来なかった。
何度も見回り疲れ果てアレンの部屋に戻って来た、何か手掛かりになる物がないかもう一度探す為に。

キュウキュウキュウ!足元を見ると普段は絶対近寄らないが、ジョエルのブーツを引っ掻いていた。

「えっ!もしかして、アレンに何かあったのを感じているの?」
キュウ!
返事をするように鳴くと、扉の方に跳び跳ねて行く、ジョエルもその後を追った。途中何度もジョエルを振り返りながら、ひたすら跳ねて行く。
(なんて、健気なんだろう。)

奥の方のジョエルも知らない廊下を渡り、階段をどんどん地下に降りて行った。
(ほんとうに、こんな所にアレンが行くかな?)
ジョエルは疑問に思ったが、クッキーは迷いなく進んで行く。

ある扉の前に着くと、クッキーがキュウキュウ鳴いて前足でガリガリ扉を引っ掻いた。
ジョエルが扉の取っ手を回すが、鍵が掛っているようだ。

「仕方ない、ちょっと退いてて、りす君。」
ジョエルは思いっきり、扉を蹴り付けた。
「痛った~。」扉はビクともしない。

キュッ、キュッ、クッキーが威嚇するように短く鳴いて、再びブーツを引っ掻く。
「なに?下がれってこと?」
(やっぱり、宣言撤回。生意気なめ!やれるもんなら、やってみろ!)

クッキーは頬袋を膨らますように大きく息を吸い、身体を大きく後ろに反らすと小さな前足を振り上げた。

ダアーーーン!振り下ろす瞬間に前足は大きくなり、鋭く長い爪が取っ手を粉砕している。

ジョエルは固まった。(なに、なに、なにーーー!!)

吃驚しているジョエルを余所に、クッキーは跳び上がって穴から部屋に入り込んだ。

キュウキュウ。慌ててジョエルも扉を開けると、中でアレンが倒れていた。

「アレン!」抱き起こすと、こめかみから血が流れ、青黒く腫れ上がっている。
「くそ、誘い込まれて殴られたんだ。なんて酷い事をするんだ、チクショウ!!」

ジョエルは上着を脱ぎ、ブラウスを割いてアレンの額に巻き付け血止めの応急処置をした。

















ーーーーーーーーー




棺と馬車はしゅくしゅくと、大通りから教会への参道に入った。抜け道や横道まで、道と言う道は人で一杯だった。



もう直ぐ、教会の前広場が見えて来る時に後ろの方から騒ぎが聞こえて来た。
良く聞くと、その人々の声はどんどん大きくなり、地鳴りのように熱狂している。

教会の手前でいぶかしく思い一旦、馬車を停めて後ろの確認をさせる事にした。
皆が後ろを振り返る。


よく見ると、人々は何事かを叫び、空に向かって指を指している。

何かが飛んで来ていた。

それはどんどん大きくなって近付き、伯爵達の目にも入る大きさになった。


思わず伯爵は馬車から立ち上がって叫んだ。

「アレリーーース!」


オレンジ色のその鳥は今や緋色に輝いて、時折、火の子を舞い散らしながら、馬車の上を通り過ぎ教会の上を緩く旋回しながら広場に降り立った。

後ろから民衆の熱狂的な歓呼が湧き上がった。


「ダンドリュウス家、バンザーイ!」「フォートランド、バンザーイ!」


「アレリス様、バンザーイ!」






(・・・主役は遅れてやって来る。なんとも派手な登場じゃないか、これ以上ないって程の。これで、伝説が一つ生まれたな。)
バルトは一人呟いた。








++++++

第三十話・アレン、六領主から招待を受ける①(サージェント家のお姫様)



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