異世界グランハイルド・アレンと召喚獣-守護魔獣グランハイルド大陸物語ー

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第四章

第五十二話・フォートランドへの帰郷③                       それぞれの挑戦『口は災いの元』

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 バルトが皆に散開を告げて、ルナリアの話はそこまでとなった。ルナリアはまだ言い足りなさそうだったが、結局バルトの言葉に従った。あのノーデルでさえ黙って立ち上がり帰りの用意をはじめている。アレンは改めて、バルトは凄いなと思った。


 アレンとレオンは夕食前に居間に行くと、今日はもう皆が顔を揃えていた。アレンを見たダンドリュウス伯が頷いたので、二人は伯爵とバルトの直ぐ近くに座る。
 すると、皆を見回したルナリアは立ち上がってアレンの方へとやって来ると、彼の腕を取り伯爵に断わりを入れた。
 「ダンドリュウスの小父様、アレンをお借りしてよろしいでしょうか。」
 「ああ、構わないが・・・」伯爵は困惑してアレンの方を見たが、彼にも心当たりがなく緩く首を振って見せた。
 「ちょっと一緒に来て欲しいの。」ルナリアはアレンの困惑を余所に掴んでいた腕を引っ張り立たせ、手を繋ぐと居間を横切って歩いて行き、サージェント伯爵夫妻の前に出た。
 バルトはそれを見て、万事休すとばかりに天井を見上げる。

 「父上、私に召喚の儀式を試させて欲しいの。」ルナリアはいきなり切り出した。
 「何を言ってる。そんな事が許せる訳がない。第一、お前は女の子だぞ、危険すぎる。」
 「そうよ、ルナリア。止めて頂戴。絶対に、許しませんからね。」横のフランソル婦人も即座に反対する。
 実は前から、折に触れ儀式を受けたいと話をした事はあったが、それは遠まわしな言い方で両親も又、当たり障りのないようにやんわりと反対の意を示していたが、今回のように正面切って宣言されたのは初めてのことだった。

 「どうして、女だったら危険なの?男だって危険な筈よ。同じだわ。」ルナリアは叫ぶように言った。
 アレンはルナリアの隣で彼女の話を聞きながら、確かにそうだと思った。危険は誰にでも同じだと。
 「駄目だ。話し合う余地はない。お客様の前だぞ、場をわきまえなさい。」温厚なサージェント伯が怒りも露わに断固として反対し、話し合う機会すら彼女に与えなかった。 

 彼女の手に力が入りアレンの手をぎゅっと握りしめると、爆弾を投下した。
 
 「父上、アレンも私が儀式を受けるのに賛成してくれたわ。」 

 その場に居る皆が一斉にアレンを見た。
 サージェント伯とフランソル婦人は困惑して、
 ダンドリュウス伯は驚愕して、

 そして、一番驚いたのは、アレンだった。思わず、彼女の顔を見上げる。

 
 「それは、どう言う事かね、アレン。私の娘を焚き付けたのかね。」サージェント伯は困惑から立ち直り怖い顔で言った。

 「・・・・・。」 
 アレンはそうだ、とも、違う、とも返事できなかった。横ではルナリアが助けを求めるように手をぎゅっと握りしめ、その必死さがヒシヒシと伝わって来る。
 そして、目の前の二人からは娘を思う親心が無言の圧力と共にビシビシと伝わって来ていた。

 アレンが返事をしないので、焦れた伯爵は怒りの矛先を彼に向けた。
 「いくら何でも無責任が過ぎるのでは無いかね。一体何を考えているんだ。君は平気で娘を危険に晒すつもりかね。」

 アレンは意を決して話す事にした。
 「僕はさっきのルナリアの話を聞いて尤もだと思いました。危険は誰でも同じだと。」
 「なにをっ!」サージェント伯が顔色を変えて立ち上がった。
 「待ってください、父上。僕から詳しい経緯をお話します。」フィランスが立ち上がって叫んだ。
 「お前達もぐるなのか!」
 「違いますから、話しをまず聞いてください。アレンは只、ルナリアを庇っただけで、儀式を受けることを賛成した訳でも、煽った訳でもありません。」フィランスは両親の所まで急いでやって来ると説得し始めた。
 
 「・・・そうなのかね、アレン。」サージェント伯は躊躇いをみせる。
 しかし、アレンは黙り込んだ。話がどこへ向かうか見極めてから、口を開く事にした。もう、関わってしまったのだ、ルナリアの為にも後には引けないと思って、彼から彼女の手を反対にぎゅっと励ますように握り返した。

 ルナリアはアレンに無断で巻き込んで彼をのッぴきならない状態に追い込んだ事を申し訳ないと思いつつも、父親の怒りが怖くてその手を放せなかった。そこへ来て、フィランスが出て来てアレンの釈明を始めたので万事休すだと思ったのに、彼の方から励ますように手を握り締めてきたので涙が零れそうになった。
 何も知らないアレンを利用しようとしたのに、彼ならきっと庇ってくれるとその優しさに付け込んだのに、そう思うと、堪えていた涙が零れた。父親に正面から叱られた事もショックだった。
 
 人前では泣いた事のないルナリアが涙を零し始めたので、伯爵夫妻も兄妹達も吃驚する。フィランスも驚いてその場に棒立ちになった。
 「・・・ア・・レン・・は・・悪く・・ない・・何も・・知・ら・・ない・・」ルナリアは泣きながらも絞り出すように話し出した。

 「・・・ルナリア、泣かないで。・・・サージェント伯、彼女を座らせてあげてくれませんか。」アレンの言葉に、夫妻は慌てて二人の間を空け娘を座らせた。

 「声を荒げて済まなかった、巻き込んだ事を心からお詫びするよ。」サージェント伯が娘の背に腕を回しながら謝って来た。
 「いいえ、伯爵。謝らないでください、僕はさっきのルナリアの話を聞いて彼女に賛成しようと思いましたから。」
 「何だって・・アレン、話を蒸し返すつもりかね。この話は終わりだ。もう無しだ。」
 「でも、・・・」
 「止めなさい、アレン。もうそれ以上、口を挟んではならない。後は彼等に任せるんだ。」ダンドリュウス伯がいつの間にか側に来て、アレンの腕を掴んだ。
 「お爺さま。・・でも」
 「でも、も何もない。子供が口を挟むべき問題では無いのだ。済まない、フラン。よく言って聞かせるから。」
 ああ、分かったと言う風にサージェント伯は頷いた。

 「待ってください、話しだけでも聞いてください。」アレンは掴まれた腕を振り払って食い下がる。
 「お爺様は子供だからと言ったけど、僕は当事者なんですよ。お爺様だって、サージェント伯だって当事者です。」
 「どう言うことかね?」サージェント伯が聞いて来た。
 「だって、みんな子供の時に召喚の儀式を受けている筈でしょ、思い出して。それに、みんな自分の意志で受けると決めた筈です。」
 「「・・・・・」」
 「それは、そうだが・・・」
  「僕が儀式を受けたのはついこの間の九才の時です。馬にも乗れなかったし、剣には触れた事も無く、無腰で向こうに行きました。伯爵達も子供のころでしょう、皆一緒です。危ない目にも遭ってる筈です。でも、生きてる。」
アレンは手を伸ばすと今度はルナリアの腕を掴んだ。

 「ルナリア、立って僕の横に並んで。」
 「え、え、」困惑しながらも彼女はアレンの横に並んだ。
 
 「僕とルナリアを見て比べてください。身長は彼女の方がずっとです、腕もほら、長いしです。」
 「!!」ルナリアは、ちょっぴりショックを受けた。(せめて、高いと言ってあげて・・)エミリアは思った。
 「身体つきだって、ルナリアの方がしてる。手もでしょ。ほら。」
 「うう・・・。」(アレン~、女心が分かって無いよ~~)フィランスは思う。
 「剣だって、乗馬だって、彼女の方が僕よりずっと上手です。年も五才上です。」
 「・・・五才・・。」 (ぷ、くくく・・・)ノーデルは笑いを堪えた。
 「勿論、彼女は女の子です。でも、それだけです。危険に対する条件は僕よりずっと少ないです。僕は彼女なら、ちゃんと魔獣が手に入れられると思います。」アレンは一気に喋りきったが、思わぬ助けでが現れた。

 「父上、どうかルナリアに儀式を受けるチャンスをあげてください。私も守護魔獣が欲しいけれど、怖くて無理だわ。でも、彼女なら大丈夫、馬だって剣の腕だってフィランス兄上より上手だわ。お願いします。」エミリアはルナリアの横に並ぶと嘆願した。
 「エミリア・・・。」ルナリアは胸が一杯になった、まさかエミリアが味方になってくれるとは考えもしなかった。
 「僕からもお願いします。ルナリアなら、大丈夫だと思います。」フィランスも味方の列に加わる。
 (・・・仕方ない。)ノーデルはゆっくり立ち上がると、アレンの横に無言で並んだ。
 「「「「ノーデル。」」」


 「う~む。・・・お前達の言いたい事は分かった。只、直ぐには返事はできない。考えさせてくれ。」最後にサージェント伯が折れて答え、ちょうど食事の時間になった。

 食事の時には、先程の召喚の儀式について誰も話題にしなかった。賽は投げられたのだから、後はどんな目がでるかどうか。今日の話題は、あのジェイコブス男爵が攻めて来た夜の話が中心になった。それと同時に、男爵がどうやってラベントリーを少しづつ侵略して来たかも話題に上り、サージェント家の男性陣は真剣に聞き入り、時折質問も挟んで行く。
 それは、どこにでも起こりうる事だから、自ずと真剣見が増した。そして、レオンから両親の死に男爵が関わったと聞き一緒になって憤慨した。
 
 今までは、サージェント家の面々は代々の当主の力に守られてきたが、身近にアレンのお家騒動と、べリング家の戦いを聞きく事により、今一度自分達の置かれている立場を考え始めたのだった。それは、食後の団欒でも続けられ、女性陣から顰蹙ひんしゅくを買って、早々のお開きを宣言された。


 ルナリアは自分の部屋に行く前にアレンの所に来てお礼を言った。
 「アレン、ほんとにありがとう。みんなあなたのお陰だわ。」
 「そんな事ないよ、ルナリアの勇気の賜物だよ。僕こそ勇気を貰った、ありがとう。」
 「・・・勇気って、どんな?」
 「当たって砕けろ・・みたいな?冗談抜きに、フォートランドに戻ったら勇気を出して謝りに行くよ。」
 
 「・・・そう、そうなら良かったわ。でも、一つ言ってもいいかしら?」
 「うん、どうぞ。」
 
 「私はないし、もしていないし、いないわ。只、アレンがて、て、なのよ。・・・分かった?ちゃんと訂正して置きたかったの。」
 「・・・・分かった。・・・ごめんなさい。」
 「謝らなくていいわ。分かって欲しかっただけよ。アレンも後少し経てば、私より筋肉が付いてがっしりするしれないし、背も私より高くなるね。」
 「・・・うん、そうだね。よく分かったよ。」
 
 レオンが隣から肘で突いて来たので睨みつけてやった。ノーデルやフィランスもクスクス笑ってる。
 やっぱり、口を出すと、とんでもないしっぺ返しが来ると思い知らされた。
 実は少し前にも、お爺様から少しお小言を貰ったのだ。
 
 (やれやれ、『口は災いの元』って、ほんとうだな。)

 クッキーがアレンを見上げてキュウ、キュウと鳴いた。どうやらアレンを慰めてくれているようだ。
 「僕の味方は、お前だけだね。」そう呟くと、クッキーのモフモフの尻尾に顔を埋めて大きな溜め息を押し殺した。














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