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監視型⑨
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自室にて。課題を解いている中──スマホが小さく震え、ぴろんと高い音が部屋に落ちた。なんだろう、と画面を見てみると──
「……来た……」
手が震えそうになる。鼓動が早くなる。
やんぱらの最新話が配信されたのだ。
陸奥先輩からは今日配信があることなんか言われなかったが、きっと俺の楽しみを取っておいてくれたのだろう。
とうとう監視型の少女の話はクライマックスを迎えている。主人公が少女と対峙はしていたが、どう切り抜けるか緊迫する場面なのだ。タップしていくたびに、彼女の狂気はどんどんと輪をかけて増していく。
『貴方の隣は、全部全部知ってる私の方がふさわしい。あの幼馴染よりも、あの後輩よりも、誰よりも。ねえ──そう思いませんか?』
歪んだ笑みを浮かべて、少女は言う。主人公が彼女の目を見据えて、覚悟を決めた。
『俺の選択は──』
緊張とともに、画面をタップする。
『レンズ越しなんかよりも、実物の俺と関わった方がもっと知れるだろ? カメラの前じゃどうも緊張するタチなんだ』
なけなしの勇気を振り絞って、主人公がはったりをかける。
『恋人になるには、お互いのことを知ってからじゃないとだめだろ。俺は君のことをよく知らないから──まずは、君と友達から始めたいんだ』
少女は、その言葉を受け──相手は自分を認めてくれた、全てを晒してもいいと思ってくれた。そばにいていいのだ──そう、解釈し、恍惚の笑みを浮かべる。
主人公は毎度、言葉巧みに様々なタイプのヤンデレたちを宥めていく。しかし、いつか知らぬうちに彼女らに退路を断たれそうで不安だ。そこがまたわくわくするポイントなのだけれど。
確かに、陸奥先輩が気に入るというのもわかる。だから主人公にそういうタイプを当てはめたのだろうか。
やっぱり、やんぱらは最高だ。生きててよかった。充足感とともに、天を仰ぐ。
監視型のヤンデレの子の話は、ここで一区切りついたようだ。あとで陸奥先輩に感想を言おう。
そう心に決め──カバンに着けていた、先輩からもらったぬいぐるみを撫でた。
***
二回目だが、やはり良さは変わらない。放課後──図書室の中で。勉強で疲れ、息抜き程度にやんぱらを開き、昨日配信されたストーリーを読み返す。
「またやんぱらしてるんだ。なんか照れるなあ」
突然、後ろから声がした。声が出そうなのを寸でで抑えて振り向けば──そこにいたのは憧れの先生、陸奥先輩。
「よくここがわかりましたね」
「オレも勉強しようと思って」
周りに生徒が居なくてよかった。二階堂くんも今日は塾のようだし、利用者はいないのだろう。
「最新話、良かったでしょ? 二回も繰り返してやるなんて、よっぽど気にいったんだねえ」
「はは、いやあだってほんっとに良く、て……」
ふと、過ぎったのは──違和感。
……これが、二回目のプレイだと──何故、わかったんだ?
何回もプレイしている可能性だってあるのに。どうして明確に二回だと思ったのだろう。疑問を抱いた瞬間、今までのことが脳裏をよぎる。
『ああ。俺が聞いた話だと──物が落ちてきて大怪我したとか?』
俺が救急車で運ばれた件。──伍代先輩はそう言っていた。噂ではそこまでしか広まらなかったのかと思ったのを覚えている。
『お友達庇って倉庫で怪我したんでしょ。いい子だね』
なぜ、そこまで詳しく知っているのか。何故、最近どこかへ行くたびに彼と顔を合わせるのか。それは、彼が──"観ていた"からじゃないのか?
恐ろしい可能性。有り得ない。あってはいけないのだ。
だが、先輩は俺の一縷の望みを裏切るように。あ、と気づいたような声をあげて。
「……あ。ああー、そっか。……作者としての自我が出過ぎちゃったな」
作者であることが、知られてしまったときと同じように。しかし──そのときよりも酷く冷たい軽薄な笑みで、そう言った。
「……来た……」
手が震えそうになる。鼓動が早くなる。
やんぱらの最新話が配信されたのだ。
陸奥先輩からは今日配信があることなんか言われなかったが、きっと俺の楽しみを取っておいてくれたのだろう。
とうとう監視型の少女の話はクライマックスを迎えている。主人公が少女と対峙はしていたが、どう切り抜けるか緊迫する場面なのだ。タップしていくたびに、彼女の狂気はどんどんと輪をかけて増していく。
『貴方の隣は、全部全部知ってる私の方がふさわしい。あの幼馴染よりも、あの後輩よりも、誰よりも。ねえ──そう思いませんか?』
歪んだ笑みを浮かべて、少女は言う。主人公が彼女の目を見据えて、覚悟を決めた。
『俺の選択は──』
緊張とともに、画面をタップする。
『レンズ越しなんかよりも、実物の俺と関わった方がもっと知れるだろ? カメラの前じゃどうも緊張するタチなんだ』
なけなしの勇気を振り絞って、主人公がはったりをかける。
『恋人になるには、お互いのことを知ってからじゃないとだめだろ。俺は君のことをよく知らないから──まずは、君と友達から始めたいんだ』
少女は、その言葉を受け──相手は自分を認めてくれた、全てを晒してもいいと思ってくれた。そばにいていいのだ──そう、解釈し、恍惚の笑みを浮かべる。
主人公は毎度、言葉巧みに様々なタイプのヤンデレたちを宥めていく。しかし、いつか知らぬうちに彼女らに退路を断たれそうで不安だ。そこがまたわくわくするポイントなのだけれど。
確かに、陸奥先輩が気に入るというのもわかる。だから主人公にそういうタイプを当てはめたのだろうか。
やっぱり、やんぱらは最高だ。生きててよかった。充足感とともに、天を仰ぐ。
監視型のヤンデレの子の話は、ここで一区切りついたようだ。あとで陸奥先輩に感想を言おう。
そう心に決め──カバンに着けていた、先輩からもらったぬいぐるみを撫でた。
***
二回目だが、やはり良さは変わらない。放課後──図書室の中で。勉強で疲れ、息抜き程度にやんぱらを開き、昨日配信されたストーリーを読み返す。
「またやんぱらしてるんだ。なんか照れるなあ」
突然、後ろから声がした。声が出そうなのを寸でで抑えて振り向けば──そこにいたのは憧れの先生、陸奥先輩。
「よくここがわかりましたね」
「オレも勉強しようと思って」
周りに生徒が居なくてよかった。二階堂くんも今日は塾のようだし、利用者はいないのだろう。
「最新話、良かったでしょ? 二回も繰り返してやるなんて、よっぽど気にいったんだねえ」
「はは、いやあだってほんっとに良く、て……」
ふと、過ぎったのは──違和感。
……これが、二回目のプレイだと──何故、わかったんだ?
何回もプレイしている可能性だってあるのに。どうして明確に二回だと思ったのだろう。疑問を抱いた瞬間、今までのことが脳裏をよぎる。
『ああ。俺が聞いた話だと──物が落ちてきて大怪我したとか?』
俺が救急車で運ばれた件。──伍代先輩はそう言っていた。噂ではそこまでしか広まらなかったのかと思ったのを覚えている。
『お友達庇って倉庫で怪我したんでしょ。いい子だね』
なぜ、そこまで詳しく知っているのか。何故、最近どこかへ行くたびに彼と顔を合わせるのか。それは、彼が──"観ていた"からじゃないのか?
恐ろしい可能性。有り得ない。あってはいけないのだ。
だが、先輩は俺の一縷の望みを裏切るように。あ、と気づいたような声をあげて。
「……あ。ああー、そっか。……作者としての自我が出過ぎちゃったな」
作者であることが、知られてしまったときと同じように。しかし──そのときよりも酷く冷たい軽薄な笑みで、そう言った。
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