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5.終戦を拒む者たち
真夜中の銃弾
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1942年(昭和17年)2月20日、午後7時30分。
東京・日比谷公会堂――その大講堂に、大勢の聴衆が集まっていた。
講演の題は――
『戦わずして、勝つという道はあるか』
主催は和平戦略本部。
14歳の少年・蒼月レイが公式の国家機関の名を冠し、初めて公に国民へ語る場だった。
だが、その場には、もうひとつの“予定”があった。
⸻
午後6時15分。
会場の地下倉庫――そこには、特高警察直属の特殊工作員2名が潜入していた。
任務はひとつ。
講演中、2階席からの狙撃。
「騒ぎを起こすな。奴が“語っている最中”に沈黙させる。
思想は言葉の中にある。だから、言い切られる前に撃て」
そう命じたのは、特高幹部・水原和典だった。
⸻
午後7時40分。
壇上に現れたレイは、白いシャツにグレーの学生服。
その姿はまるで少年そのもの――だが、目に宿る光は、大人たち以上の“覚悟”に満ちていた。
「皆さん。
今日は、僕の言葉がどこまで届くか試すために、ここに立ちました」
彼の声がマイクを通して静かに広がっていく。
「戦争をやめることは、怖いことです。
でも、戦い続けて、何かが守られる保証はどこにもない」
「じゃあ、何を信じるのか?――
僕は、“生きてる”っていう事実を信じたい」
⸻
2階席――狙撃者がゆっくりと立ち上がった。
コートの内側に隠された拳銃。その銃口が、レイの胸元を正確に捉える。
銃声が響く――その直前、すぐ隣の男が飛びかかった。
銃弾はぶれ、天井を掠めて消えた。
男の腕をねじ伏せたのは、2階席に潜んでいた久坂恭介だった。
観客が悲鳴を上げ、逃げ惑う中、壇上のレイはマイクを手放さなかった。
やがて騒ぎが収まり始めた頃、彼の声が再びホールに響く。
「……これが、僕が“生きている”証拠です」
「これが、“話すことで戦える”という証明です」
「僕は、言葉でこの国を変えたかった。
それを“止めようとした銃”が、いまこの国にどれほどの恐怖を残しているか、
皆さんは感じているはずです」
⸻
その映像は即座に全国に流れた。
「14歳の少年が、銃口の前で話し続けた」
「戦争を終わらせようとした少年を、殺そうとしたのは誰か」
世論は一夜にして激変した。
⸻
その夜、レイは帝大のベッドに横たわっていた。
久坂が手を握る。
「……守れた。お前が、死ななくてよかった」
レイは微笑んで言った。
「僕が死んでたら、もっと変わったかもしれないよ」
「それでも、生きて話せ」
「うん。話すよ。
僕が生きてる限り――この国には、“話し合うという選択肢”があるって、証明する」
東京・日比谷公会堂――その大講堂に、大勢の聴衆が集まっていた。
講演の題は――
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