日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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6.向かうべき未来

共存の設計図

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1942年(昭和17年)3月5日。
東京帝国大学・医療研究棟・東棟会議室。

会議室の壁には、東アジア全域の地図が貼られていた。
その上には、赤鉛筆で引かれた新たな線――“国境”ではなく、“交わり”のしるしが記されている。

「この新京(いまの長春)を中心に、“アジア再建評議会”を設置します」
蒼月レイが地図を指差しながら言った。

「満州・中国・朝鮮・モンゴル、そして日本。
この五つの代表が常設で集まり、経済、治安、教育、医療を話し合う枠組みです」

官僚たちは顔を見合わせる。
その提案は、明らかにこれまでの“日本主導による占領統治”とは異なるものであった。

近衛文麿首相が、ゆっくりと口を開く。

「つまり――“支配”ではなく、“共存”を示す場だな」

レイは頷いた。

「はい。
“満州は日本の生命線”という言葉がありますが、
これからの日本にとって、生命線とは、資源や領土ではありません。
“信頼と連携の象徴”こそが、真の生命線です」

「日本が、共存と調和を旗印にしたとき、
初めて世界は、日本を“導く国”として認めるでしょう」



その夜、レイは再び、ラジオ放送にて声明を読み上げた。

「国民の皆さん、そしてアジアの友人たちへ」
「私は今日、“満州に希望の種を蒔く”計画を発表します」

「この場所に、新たな秩序の芽がある。
争いではなく、話し合いで解決する“東洋の理想”を形にする場です」

「ただ、ひとつ誤解してほしくない。
日本は、もう戦争を始める国ではありません。
ですが、戦争をしかけられたなら――」

レイは一瞬、言葉を切った。

「必要なときは、最小限の力で、必ず守り抜きます」
「平和とは、ただ祈るだけで成り立つものではありません。
他者の信頼と、自らの覚悟によって築かれる“強さ”なのです」

「日本はその強さを、軍事力ではなく、教育、技術、文化、経済によって世界に示します」
「そして、満州から始まるこの協議体制は、戦争ではなく、信頼によって国際秩序を築く第一歩です」

「この国は、変わります」
「“戦わずして勝つ”国として、世界に立ちます」

「それが、次の時代の“日本のかたち”なのです」



満州国・新京。
蒋介石の諜報部は、録音された放送を夜を徹して解析していた。

「……これは、武器のない宣戦布告だ」
一人の幕僚が呟いた。

「いや、逆だ」
別の者が言う。

「これは、理想という名の“新秩序”を掲げた布告だ。
このままでは、中国の民心まで奪われるぞ」



同じころ、アメリカ・ワシントン。

ルーズベルト大統領の執務室で、録音された声明を聴き終えた国務長官コーデル・ハルは、沈黙ののち言った。

「これまでの日本とは、まるで別の国のようだな……」

ルーズベルトは静かに頷く。

「少年に教えられるとはな。
アメリカの未来も、我々“年寄り”だけでは作れまい」

「彼が描く“平和の秩序”を、我々は無視できない。
この提案、真剣に検討しよう」



東京帝大・病室。

久坂耕一が静かに言った。

「お前の声がまた、世界を動かしたな」

レイは笑みを浮かべ、紙の束を差し出した。

「これは、次の原稿だ」
「“満州自治計画案”――ここからが本番だよ、久坂」

その瞳は、既に“戦後”の未来を見据えていた。
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