日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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8.東方の約束

美しき檄文

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1942年(昭和17年)4月15日
東京・帝国大学 医療研究棟・特別病室



新聞各紙の見出しは、ひとつの言葉で統一されていた。

「満州、変革へ」

“蒼月レイの提唱した『共栄憲章』が、ついに公式に採択された”――
その報せは、日本国内だけでなく、アジア諸国にも衝撃を与えた。

病室のラジオが、小さく流れている。

「……本日未明、満州国政府は関東軍との合意を経て、民政移行の第一段階を正式に発表しました」

レイは静かに窓辺に立ち、朝日を浴びながら、手に握った原稿を見つめていた。

「……ここからが、本当の戦いだ」



その日午後、レイは起草したばかりの原稿を、新聞社に送った。
それは“政府声明”でも“戦況報告”でもなかった。

一篇の檄文(げきぶん)――

**『未来への共栄』**と題されたその文章は、次のように始まっていた。



「我らは、刀を下ろすことで勝つ。
銃を捨て、言葉と秩序によって、戦争を超える。

我らは、皇国の民であると同時に、“未来の民”である。
ならば、未来にふさわしき道を、我らが自ら選ばなければならない。」



その文体は、若さと知性が同居したものでありながら、軍や政党では決して書けない“新しい日本語”だった。



夕刻、政府内。

内務省の一室で、近衛文麿が檄文を読み終え、深く息をついた。

「この少年は……国家を“創り直して”いる」

その場にいた東條英機も、一言だけ呟いた。

「……だが、“余白”が怖い。こいつはまだ全てを語っていない」



その夜。

満州の新聞「満州日報」にも、その檄文は全文掲載された。
さらに数日後、朝鮮・南京・バンコクでも翻訳され、各地に転載されていった。

「“新しい帝国”の設計図が出回っているぞ」
と、イギリス領マラヤの民政官が記した日誌には、こう続いていた。

「武力ではなく、思想で広がる“侵略”こそ、最も恐るべき支配形態である」



レイは、もはや“国内の若き英雄”ではなかった。

彼の名は、**「精神的帝国の建築家」**として、アジア中で囁かれ始めていた。

しかしその背後で、ひとつの“影”もまた動き出していた。

――ナチス・ドイツ。
そして、**「三国同盟を結んだもうひとつの巨影」**が。
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