日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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12.静かなる覇道

信頼の帝国

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1942年(昭和17年)8月25日
アメリカ・ワシントンD.C.
OSS(戦略情報局)極東部局・作戦分析室

「……この資料は本当か?」

若き分析官、リチャード・アームストロングは、驚愕の表情でタイプされた報告書に目を通していた。ハーバード・ロースクールを経てOSSに採用されたばかりの彼は、極東情勢に関する第一次資料を初めて扱う任務に就いたばかりだった。

報告書の題は――
《満州“蒼月構想”の全容》

そこには、関東軍の一部が新設された民政評議会に“限定的協力”を始めたこと、さらに“日満中朝の共栄圏構想”に向けた骨子案が動いていることが詳細に記されていた。

「まるで、10年後の国際秩序を前提に書かれているようだな……」

アームストロングは、戦略理論を得意としていた。彼の目から見ても、「蒼月レイ」という存在は単なる偶像ではなく、“設計者”としての本質を持っていた。

隣席の同僚が呟いた。

「……君は、敵だった日本人を信じるのか?」

アームストロングは黙ったまま窓の外を見た。夕陽に染まるホワイトハウスの輪郭が、ゆっくりと暮れなずんでいた。

「信じるかどうかじゃない。分析官として言えるのは――この少年の構想を無視する国は、必ず取り残される」



その夜、アメリカ海軍省の地下会議室。
ルーズベルト大統領に近い情報顧問たちが、密かに蒼月レイの“動き”を共有していた。

「彼の行動は、日本の民意すら動かしている。だが一方で、陸軍上層部との摩擦も明らかだ」

「……いずれ、内から崩れるのでは?」

そのとき、OSS長官代理が静かに言った。

「彼のような人間が“崩れる国”なら、戦争するまでもなく崩れるさ」

ルーズベルトは黙って頷いた。



同日、東京・帝国大学 医療研究棟

「観察されている……というより、“測られている”気がする」

レイは、書簡で届いたルーズベルトからの返信を読みながら、静かに呟いた。

そこには短く、しかし力強い英文でこう記されていた。

“What you offer is not peace. It is something stronger — order. (あなたが提供するのは平和ではない。それはもっと強いもの――秩序だ)”

「秩序(order)か……それがアメリカの望むものなら、きっと世界も変えられる」

彼はペンをとり、ふたたび書簡をしたためる。



同日深夜、ドイツ・ベルリン 総統官邸地下室

「蒼月レイ。日本の“指導者ごっこ”か」

ヒトラーは地図上の極東地域にピンを刺し、将校たちに怒鳴りつけた。

「いいか、あの少年は我らの大義を損なう。日本が裏切れば、ユーラシア大陸は二分される。アメリカとの対峙に備えよ」

「総統、では三国同盟は――」

「“言葉の紙切れ”に過ぎん。現実を操る者が、世界を支配する」

ヒトラーの目が、ふたたび赤く光った。



同日、日本・内閣情報局

「イギリスもアメリカも、レイを『新たな構造』として見ている」

内閣情報局長・正力松太郎は、報道管制とともに、世界各国の報道分析を並べた。

「国内メディアには、“改革者”というイメージで通せ。だが国外は“調停者”だ。――どちらも“敵”を作らぬように」



8月30日、東京駅前の広場

「……敵を作らないように? それは幻想だよ」

レイはつぶやいた。

「君が生きてる限り、“敵”は現れるさ」

と、背後から声がした。

振り返ると、そこに立っていたのは――

岸信介だった。
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