日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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18.帝国を磨く刃

鉄と金の檻

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1942年12月15日、午後6時。
東京・日比谷、帝国ホテル最上階。

表向きは「民間経済界交流会」とされたその会合には、名だたる財界人と旧軍部の関係者、政界の保守派重鎮たちが密かに集まっていた。

会場の空気は重く、互いに腹の内を探る沈黙が支配している。

そこに、ただ一人、年端もいかない少年が現れた。

「……ようこそ、蒼月レイ様」

三井財閥の総代が、形式的な挨拶で出迎えた。
会場内には三菱、住友、安田、旧南満州鉄道系の重役たちがずらりと並んでいる。

その全員の視線が、レイの一挙手一投足に注がれていた。



「この場は、経済と国家の調和を目指す非公式な意見交換の場です。
お互いの立場を尊重しつつ、今後の方向性を探ることができれば」

開会の挨拶は、婉曲な言葉で始まった。
だが、誰もが分かっていた。この会合は、**レイの“改革演説”に対する“返答”**なのだと。

やがて一人の財閥代表が切り込んだ。

「我々も“変革の必要性”は感じております。
しかし、急進的な制度変更は、市場の不安を招き、結果として国民の生活を危うくする可能性があります」

レイは、あえて水も口にせずに答えた。

「その“不安”とは、あなた方が“既得の秩序”を守りたいという意味ではありませんか?」

場内にざわめきが走る。
だがレイは動じなかった。

「私は、“利益を否定”しているのではありません。
問題は、その利益が“閉じられた箱”の中だけで回っていることです。
労働の果実が、誰の机にも届かない仕組みが“経済”を名乗っていることこそ、最大の不正です」

三菱系の幹部が語気を強める。

「我々は戦時中、物資と資本を前線に送り、日本を支えてきた。
今、急激な再配分や監査制度を導入すれば、信用と物流が崩れます」

レイは静かに反論した。

「だからこそ、私は“崩す”のではなく、“解く”のです。
あなた方が築いた基盤は否定しません。しかし、それを“帝国という名の檻”にしてはならない」

「……それは、財閥解体を意味しますか?」

誰かが尋ねた。

レイは迷いなく、うなずいた。

「部分的には、そうなります。
しかし“解体”とは、“否定”ではありません。
不要な結節点を除き、健全な企業活動を“国民に対して開かれたもの”に再構築する」



そのとき、一人の老人が立ち上がった。旧陸軍省の元高官、現在はある軍需系企業の会長を務めている。

「若者よ。国家とは、理想で成り立つものではない。
この国は、血で守られてきた。君の語る“倫理”だけでは、他国の牙からは守れぬぞ」

レイの声は、どこまでも静かだった。

「戦争は終わったのです。
そして、血でしか守れない国家は、遅かれ早かれ“血で滅びる”」

その瞬間、会場の空気が変わった。
誰もが気づいていた。
この少年は、ただの“夢想家”ではない。

——宣戦布告だった。



会合後、レイはひとり歩いて帝国議会前の広場に向かった。
冬の風が強く、制服の裾が大きくなびいた。

補佐官が追いかけてくる。

「……交渉、というより、“対決の場”でしたね」

「最初から、“味方にするつもり”などありません」

レイは歩みを止めずに言った。

「私は、“鉄と金の檻”を壊す。
民の声が、権力と対等に並ぶ制度を作る。
それが、“新しい民主主義”の骨組みになる」

補佐官が言った。

「それには、相応の制度設計と法改正が必要になります。
既存政党は、どこも今の制度を守る気でいます」

レイは、ふと立ち止まって空を見上げた。

「ならば、“政党”そのものを変えましょう」



その夜、レイは官邸で一人、政党改革案の草案に取りかかっていた。

《新党構想:理念に基づく“公共代表制”》
・業界団体や資本グループではなく、公共政策分野ごとに代表を選出
・教育、医療、労働、経済、福祉、外交、防衛……各分野の専門性を持つ議員団体
・選挙ではなく“公開推薦+熟議”により代表候補を選出するシステムの試行導入

彼が目指しているのは、“数の民主主義”ではなく、“熟度の民主主義”だった。

政治が、見えない金と力ではなく、知と信の上に築かれる社会。
それは、過去にも未来にも存在しなかった“新しい統治”の形だった。
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