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21.未来への誓約
崩れる影
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「……逮捕状は確認済みか?」
「はい。東京地検特捜部、内務省警保局、それと民間調査機関が連携しています。すでに十数名が拘束されました」
帝国大学構内の一室、重厚な木製デスクの上に、分厚い封筒が無造作に置かれていた。
封の上にはただ一言、「膿を断つ」と赤い字で記されている。
それは、レイがハワイへ発った直後から――
密かに始動していた“浄化作戦”の中核資料だった。
「……“彼”がいない間に終わらせる。それが、我々の仕事だ」
口にしたのは、レイの側近の一人、坂本誠一。
元は外務省の若手官僚だったが、今ではレイの政治的片腕とも言える存在だ。
彼の背後には、もう一人、無言で立つ青年がいる。
眼鏡をかけた理知的な表情――特高から転身した元諜報官・中原重人。情報と裏の処理を担う“影の主導者”だ。
「標的の大半は、帝国議会内の旧派閥と、特高警察の残党。軍内部にも依然として“あの男”に忠誠を誓う者がいます」
坂本は唇を引き結び、つぶやいた。
「あの男……東條か」
中原は頷いた。
「東條英機。今や形式上は軍政指導部から退いたとはいえ、依然として忠実な“兵”を持っています。
だが、我々は手の内を読んでいます。各所にすでに監視網を張り、証拠も十分。あとは、時を見て一斉に叩く」
──
一方、日本の市民社会にも変化が現れていた。
新聞は連日、一面トップでこう報じた。
「政財界を蝕んだ闇に光が差す」
「特高残党摘発、元帝大教授も関与」
「レイ暗殺未遂事件、首謀者は旧体制内に存在」
街角の人々も、驚きとともに一定の納得を口にするようになっていた。
「あの少年が来てから、本当に国が変わっていく気がするな」
「前までは誰が悪いかも分からなかったけど、今はちゃんと明るみに出る」
「天皇陛下も信じているんだ、俺たちも信じるさ」
──
その夜、帝国大学の一室。
坂本と中原が最後の報告書をまとめていた。
「……明日の午前、全国の主要都市で一斉拘束を行います。
その人数、合計62名。中には現職の官僚、新聞社の重役、財閥幹部も含まれています」
「レイ様が戻るまでに、国内の“影”は一掃しておく。それが最低限の務めだ」
そして――
作戦は、翌日未明に発動された。
午前4時、東京・霞が関。
黒塗りの車列が次々と各官公庁舎前に停車し、無言のまま特命係員たちが降り立つ。
銃器は使わず、すべては静かに、速やかに。
大阪、名古屋、広島、仙台――
主要都市でも同様の動きが同時に展開され、あらゆる権力者が“眠りの中”で拘束されていった。
その中には、レイの暗殺計画に署名したとされる、元内務省官僚・田代清一の名もあった。
「彼のいない世界を望んだか。だが、民意は君らではなく、彼を選んだんだ」
中原の冷ややかな声が、薄暗い廊下に響いた。
──
同じ頃、ハワイ・オアフ島。
朝の海風が、レイの髪を優しくなでる。
すでに彼の体調は回復しており、朝の散歩を日課にしていた。
「もう少しで……帰れるね」
隣に立つ桜がつぶやく。
「……うん。でも、まだやることがある。あと少しだけ、ここで仕上げたいものがある」
レイは、手にしたノートの最後のページを見つめる。
そこには、こう書かれていた。
『1962年、日本はアメリカを超え、世界一の経済大国になる。』
未来は、すでに書かれはじめていた。
「はい。東京地検特捜部、内務省警保局、それと民間調査機関が連携しています。すでに十数名が拘束されました」
帝国大学構内の一室、重厚な木製デスクの上に、分厚い封筒が無造作に置かれていた。
封の上にはただ一言、「膿を断つ」と赤い字で記されている。
それは、レイがハワイへ発った直後から――
密かに始動していた“浄化作戦”の中核資料だった。
「……“彼”がいない間に終わらせる。それが、我々の仕事だ」
口にしたのは、レイの側近の一人、坂本誠一。
元は外務省の若手官僚だったが、今ではレイの政治的片腕とも言える存在だ。
彼の背後には、もう一人、無言で立つ青年がいる。
眼鏡をかけた理知的な表情――特高から転身した元諜報官・中原重人。情報と裏の処理を担う“影の主導者”だ。
「標的の大半は、帝国議会内の旧派閥と、特高警察の残党。軍内部にも依然として“あの男”に忠誠を誓う者がいます」
坂本は唇を引き結び、つぶやいた。
「あの男……東條か」
中原は頷いた。
「東條英機。今や形式上は軍政指導部から退いたとはいえ、依然として忠実な“兵”を持っています。
だが、我々は手の内を読んでいます。各所にすでに監視網を張り、証拠も十分。あとは、時を見て一斉に叩く」
──
一方、日本の市民社会にも変化が現れていた。
新聞は連日、一面トップでこう報じた。
「政財界を蝕んだ闇に光が差す」
「特高残党摘発、元帝大教授も関与」
「レイ暗殺未遂事件、首謀者は旧体制内に存在」
街角の人々も、驚きとともに一定の納得を口にするようになっていた。
「あの少年が来てから、本当に国が変わっていく気がするな」
「前までは誰が悪いかも分からなかったけど、今はちゃんと明るみに出る」
「天皇陛下も信じているんだ、俺たちも信じるさ」
──
その夜、帝国大学の一室。
坂本と中原が最後の報告書をまとめていた。
「……明日の午前、全国の主要都市で一斉拘束を行います。
その人数、合計62名。中には現職の官僚、新聞社の重役、財閥幹部も含まれています」
「レイ様が戻るまでに、国内の“影”は一掃しておく。それが最低限の務めだ」
そして――
作戦は、翌日未明に発動された。
午前4時、東京・霞が関。
黒塗りの車列が次々と各官公庁舎前に停車し、無言のまま特命係員たちが降り立つ。
銃器は使わず、すべては静かに、速やかに。
大阪、名古屋、広島、仙台――
主要都市でも同様の動きが同時に展開され、あらゆる権力者が“眠りの中”で拘束されていった。
その中には、レイの暗殺計画に署名したとされる、元内務省官僚・田代清一の名もあった。
「彼のいない世界を望んだか。だが、民意は君らではなく、彼を選んだんだ」
中原の冷ややかな声が、薄暗い廊下に響いた。
──
同じ頃、ハワイ・オアフ島。
朝の海風が、レイの髪を優しくなでる。
すでに彼の体調は回復しており、朝の散歩を日課にしていた。
「もう少しで……帰れるね」
隣に立つ桜がつぶやく。
「……うん。でも、まだやることがある。あと少しだけ、ここで仕上げたいものがある」
レイは、手にしたノートの最後のページを見つめる。
そこには、こう書かれていた。
『1962年、日本はアメリカを超え、世界一の経済大国になる。』
未来は、すでに書かれはじめていた。
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