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25.新世界の鼓動
旗を掲げる者
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ロンドン、1943年4月30日――
ヴィクトリア駅から続く喧騒のなか、英国政府の迎賓館では密やかに、しかし歴史を動かす対話が始まろうとしていた。
蒼月レイ――15歳の特命全権代表は、静かに一枚の文書を差し出す。それは、日本が先んじて提示した「欧州復興支援構想・正式提案書」だった。略して“ERSP”。すでに仮案は各国に出回っていたが、今回は条項と条件を伴う本格的な交渉の始まりだ。
その文書には、こう記されていた。
「我が国は、欧州の復興において率先して“種を蒔く”責務を感じております。我々は、“どこよりも早く”、そして“重点的に”支援します」
イギリスの経済担当相は眉をひそめながら、その文書を読み進める。
「これは……基幹産業の再編案か?」
「将来、ヨーロッパが再び世界の工業地帯になるには、土台からやり直す必要があります。日本はその支援と、長期契約に基づいた協業の提案をします」
レイは続けた。
「代わりに、支援先の企業群と技術協力契約を締結します。日本は輸入だけでなく、現地生産拠点を持つことで、雇用と投資を提供します。そして条件の一部には“技術的ノウハウの共有”が含まれます」
沈黙が流れた。支援という名の“投資”――その本質を理解する者たちは、徐々にその意図を掴み始めていた。
「……つまり、日本は“早く支援する”代わりに、“支援先と共に未来を作る”という方針か」
「はい。これは施しではありません。日本が自らの未来を切り開くための、共闘の提案です」
⸻
一方、アメリカ。
ERSP構想がヨーロッパ諸国で歓迎されつつあるという報告に、ホワイトハウス内では緊張感が走っていた。
「……ミスター・ヘンダーソン、君はロンドンの動きをどう見ている?」
ルーズベルト大統領の問いに、特別経済顧問のヘンダーソンは苦々しい表情を浮かべる。
「日本は、時間と戦略で勝負している。
米国がまだ議会の承認を得ていない間に、あの少年はもう“契約”に向かって動いている」
「だが、我々には“資金”がある。いざとなれば、世界最大の財布が――」
「資金だけで勝てる時代は、終わりつつあります。彼は、“信頼される将来像”を売っているんです」
⸻
日本、帝国議会――
桜は、議事堂の外のテラスでレイと並んで立っていた。
「……本当に、すごいね。あれだけの国々を、味方につけていくなんて」
「まだ“味方”とは言えないよ。私たちは“約束”を売っているだけだ。信頼を築くには、これから何年もかかる」
「でもレイ……“信頼される国”って、どういう国なの?」
その言葉に、レイは一瞬だけ沈黙した。遠くに東京湾が見える。そこには、再建中の新しい輸送港が拡がり、重機が鳴り響いていた。
「……嘘をつかない国。裏切らない国。そして、“約束を守る国”だ」
桜は頷いた。
「だったら、あなたはきっとその“国のかたち”を作る人だね」
レイは微笑を浮かべ、彼女の手をそっと取った。
「まだ途中だ。でも……これが僕たちの“設計図”なんだ」
⸻
欧州復興支援構想は、いま静かに世界の“秩序の座標”を塗り替えようとしていた。
それは“信頼”と“速度”で構築された、新たな帝国の鼓動だった。
ヴィクトリア駅から続く喧騒のなか、英国政府の迎賓館では密やかに、しかし歴史を動かす対話が始まろうとしていた。
蒼月レイ――15歳の特命全権代表は、静かに一枚の文書を差し出す。それは、日本が先んじて提示した「欧州復興支援構想・正式提案書」だった。略して“ERSP”。すでに仮案は各国に出回っていたが、今回は条項と条件を伴う本格的な交渉の始まりだ。
その文書には、こう記されていた。
「我が国は、欧州の復興において率先して“種を蒔く”責務を感じております。我々は、“どこよりも早く”、そして“重点的に”支援します」
イギリスの経済担当相は眉をひそめながら、その文書を読み進める。
「これは……基幹産業の再編案か?」
「将来、ヨーロッパが再び世界の工業地帯になるには、土台からやり直す必要があります。日本はその支援と、長期契約に基づいた協業の提案をします」
レイは続けた。
「代わりに、支援先の企業群と技術協力契約を締結します。日本は輸入だけでなく、現地生産拠点を持つことで、雇用と投資を提供します。そして条件の一部には“技術的ノウハウの共有”が含まれます」
沈黙が流れた。支援という名の“投資”――その本質を理解する者たちは、徐々にその意図を掴み始めていた。
「……つまり、日本は“早く支援する”代わりに、“支援先と共に未来を作る”という方針か」
「はい。これは施しではありません。日本が自らの未来を切り開くための、共闘の提案です」
⸻
一方、アメリカ。
ERSP構想がヨーロッパ諸国で歓迎されつつあるという報告に、ホワイトハウス内では緊張感が走っていた。
「……ミスター・ヘンダーソン、君はロンドンの動きをどう見ている?」
ルーズベルト大統領の問いに、特別経済顧問のヘンダーソンは苦々しい表情を浮かべる。
「日本は、時間と戦略で勝負している。
米国がまだ議会の承認を得ていない間に、あの少年はもう“契約”に向かって動いている」
「だが、我々には“資金”がある。いざとなれば、世界最大の財布が――」
「資金だけで勝てる時代は、終わりつつあります。彼は、“信頼される将来像”を売っているんです」
⸻
日本、帝国議会――
桜は、議事堂の外のテラスでレイと並んで立っていた。
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レイは微笑を浮かべ、彼女の手をそっと取った。
「まだ途中だ。でも……これが僕たちの“設計図”なんだ」
⸻
欧州復興支援構想は、いま静かに世界の“秩序の座標”を塗り替えようとしていた。
それは“信頼”と“速度”で構築された、新たな帝国の鼓動だった。
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