日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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26. 世界を照らす知性

理想という名の現実

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1943年7月1日
東京・帝国中央官庁舎 ― 政策戦略本部会議室

窓の外では、蝉の鳴き声が鳴り響き、夏の訪れを告げていた。だが、室内の空気は冷え切っていた。そこには、蒼月レイを中心に、参謀本部、外務省、商工省、軍政庁の面々が揃っていたからだ。

「今、ドイツは西部戦線において連合軍の反攻を受け、東部ではソ連の猛攻により後退を余儀なくされています。ベルリン陥落は時間の問題です」

レイは地図の前に立ち、冷静な口調で語った。その指先がベルリンへと向かって滑る。

「だが、戦争というのは勝利の瞬間だけで終わるものではない。“終わらせ方”を誤れば、その後に待つ秩序と信頼を失う。ドイツを、どのように“終わらせるか”が重要です」

「アメリカには、既に提案を?」

「ええ。軍事ではなく、外交と情報戦によって戦局を圧縮する案です。特に中立国や親独諸国に対して、『今ドイツとの関係を断ち、戦後秩序側に立てば、正統性を保持した形で戦後体制に加われる』と通知しています」

「つまり、彼らに選択肢を与え、“ドイツとの決別”を促しているわけか」

「はい。戦後世界の構成員としての立場を条件とした、心理的圧力です。ナチス体制を“支えきれないもの”と認識させ、崩壊を加速させます」



同日午後
東京・政庁前庭

桜は庭の木陰に腰かけ、膝の上の資料に視線を落としていた。夏風が髪を揺らし、蝉の声が遠くから響いてくる。

「ここにいたのか」

レイが歩み寄り、そう声をかけた。

「うん。……こんなに静かな場所が都心にもあるんだね」

桜は微笑んで、膝の上の資料を差し出した。それは、帝国大学改革案の草稿だった。

「“世界の知を東京に集める”って、あんまりにも……理想的じゃない?」

「戦時だからこそ、理想を現実にする覚悟が必要だよ。帝国大学は“思想の解放区”にする。検閲も制限もない――真の自由を守る場所だ」

「……でも、それって危うくない? 反対する人も、きっといる」

「理想という名の現実。それを僕たちが証明するしかないんだ」

レイは木の葉の揺れる空を見上げながら、静かに言った。

「桜。君は、どんな未来を信じてる?」

「うーん……争いがなくて、誰かの指示じゃなく、自分で進む道を選べる国」

「それが、僕が創りたい“帝国”だよ」



数日後
アメリカ・ワシントンD.C. ― 極秘通信室

“日本政府特命全権代表・蒼月レイより、要請”

【ベルリン包囲に向けた外交的圧力強化案】
・中立国(スペイン、スイス、スウェーデン)に対し「ドイツとの決別が未来への参加条件」と非公式通達
・反ナチス知識人を用いた情報戦による内部崩壊の誘発
・ソ連への限定的情報提供(相互監視と協調を条件とする)

ホワイトハウス内では、レイの戦略に対し評価が分かれた。  
だが「終戦を早められるならば、応じる価値はある」と判断され、限定的な協力が表明された。  



7月中旬
満州・新京

一方で、帝国のもう一つの中心――新京では、工業団地の拡張が急ピッチで進められていた。

「今年中に、5万人規模の労働人口を確保します」

現地の責任者が語るその言葉に、商工省の視察団が頷く。

「日満経済圏は、戦後の世界市場の一角を担う。準備を怠るな」

情報網、通信網、そして資源供給体制――帝国はすでに“戦後”のために動き始めていた。



7月末
東京・帝国議会

議場では、教育法改正案と工業投資拡大法案が審議されていた。どちらもレイの提案によるものである。

「この法案は、将来の人材投資と、産業基盤の構築を目指すものです」

レイの簡潔な答弁に、与野党を問わず多くの議員が賛成に回った。

だがその裏で、旧来の政治勢力や一部軍部の中には、レイの“国家構造の設計”に警戒感を募らせる者もいた。



レイの部屋――夜

桜がカップに紅茶を注ぎ、レイの隣に座る。

「ねぇ。……あなたは、どこまで先を見てるの?」

レイは地球儀に手をかけた。

「20年後。1963年。……その頃には、帝国は世界の中心にいる」

「……それ、叶うと思う?」

「叶えるんだよ。理想という名の現実で」

レイは地球儀を回し、ヨーロッパ大陸を指先で止めた。そこに刻まれる未来――それは、世界の再構築と、人間の希望に他ならなかった。
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