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最終章. 未来への道
幻の日
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1945年8月15日——
この日を、歴史に残る特別な一日とする者はいなかった。
快晴。空は澄み渡り、蝉の声が東京の町に響く。
新聞の一面には、前日に発表された新型航空機の成功記事と、帝国主催の国際科学シンポジウムの開催告知が載っている。
終戦もなければ、玉音放送もない。焼け野原もない。
ただ、夏の眩しい光が、穏やかな帝都に降り注いでいた。
日本は、平和だった。
—
午後三時。東京郊外の住宅地。
白塀の屋敷の庭で、青年が麦わら帽子をかぶって植物の観察をしている。
彼の名は、蒼月レイ。十七歳。かつて、帝国の中心に立ち、世界を導いた“天才少年”。
だが今、彼は庭の隅で光合成の実験データを記録していた。
隣に座るのは桜。彼の恋人であり、長年の理解者。
「……レイ、日差し、強すぎない?」
「大丈夫。この葉の表面温度を測るには、この光量がちょうどいいんだ」
笑う桜の手には、冷えた麦茶と、レイの好物である桃のゼリー。
政治の世界を離れてから、レイは研究者としての人生を歩んでいた。
物理学、工学、遺伝子工学、気候工学——ありとあらゆる分野に通じ、そのすべてに国家と企業が投資を惜しまなかった。
だが、レイの目的は一貫していた。
「全ての人間が、自分で未来を選べる社会を作る」
その理想は、政治から科学へと舞台を変え、今もなお彼の中で燃え続けていた。
—
帝国は、もはや“列強”という言葉の外にいた。
それは世界を照らす灯台であり、調和の中心地であり、戦争の終着点に立つ国家だった。
アジアはすでに深く結びつき、ヨーロッパですら帝国に憧れの眼差しを向けていた。
アフリカでも日本式の教育制度が導入され、中南米では帝国企業がインフラを支える。
軍隊はある。核兵器もある。
だが、それらを“振りかざした”ことは一度もない。
「力を持つ者が、持たない者を護る」
それが蒼月レイの思想であり、いまや国際社会の“規範”となっていた。
—
日が傾き始めたころ、レイと桜は研究所の離れから戻ってきた。
夕食はカレーライス。二人で一緒に作った、家庭の味。
「今日って、なんか特別な日だった気がするだけど…何かあったかな?」
「んー……何にもないよ。いつも通り、平和かな」
そう答えたレイの目は穏やかだった。
史実における“終戦日”は、この世界には存在しない。
なぜなら、日本は、戦争そのものを、「始まる前に終わらせた」からだ。
—
歴史に残るはずの“あの日”は、
この世界では、ただの“幸福な一日”だった。
何も起きなかった——
だからこそ、それは奇跡のような日だった。
——蒼月レイという少年が、世界の“運命”を変えた、そんな未来。
世界は今、彼が願った通り、静かに、そして確かに進んでいる。
そして明日もまた、
「普通の、平和な一日」が始まるのだ。
この日を、歴史に残る特別な一日とする者はいなかった。
快晴。空は澄み渡り、蝉の声が東京の町に響く。
新聞の一面には、前日に発表された新型航空機の成功記事と、帝国主催の国際科学シンポジウムの開催告知が載っている。
終戦もなければ、玉音放送もない。焼け野原もない。
ただ、夏の眩しい光が、穏やかな帝都に降り注いでいた。
日本は、平和だった。
—
午後三時。東京郊外の住宅地。
白塀の屋敷の庭で、青年が麦わら帽子をかぶって植物の観察をしている。
彼の名は、蒼月レイ。十七歳。かつて、帝国の中心に立ち、世界を導いた“天才少年”。
だが今、彼は庭の隅で光合成の実験データを記録していた。
隣に座るのは桜。彼の恋人であり、長年の理解者。
「……レイ、日差し、強すぎない?」
「大丈夫。この葉の表面温度を測るには、この光量がちょうどいいんだ」
笑う桜の手には、冷えた麦茶と、レイの好物である桃のゼリー。
政治の世界を離れてから、レイは研究者としての人生を歩んでいた。
物理学、工学、遺伝子工学、気候工学——ありとあらゆる分野に通じ、そのすべてに国家と企業が投資を惜しまなかった。
だが、レイの目的は一貫していた。
「全ての人間が、自分で未来を選べる社会を作る」
その理想は、政治から科学へと舞台を変え、今もなお彼の中で燃え続けていた。
—
帝国は、もはや“列強”という言葉の外にいた。
それは世界を照らす灯台であり、調和の中心地であり、戦争の終着点に立つ国家だった。
アジアはすでに深く結びつき、ヨーロッパですら帝国に憧れの眼差しを向けていた。
アフリカでも日本式の教育制度が導入され、中南米では帝国企業がインフラを支える。
軍隊はある。核兵器もある。
だが、それらを“振りかざした”ことは一度もない。
「力を持つ者が、持たない者を護る」
それが蒼月レイの思想であり、いまや国際社会の“規範”となっていた。
—
日が傾き始めたころ、レイと桜は研究所の離れから戻ってきた。
夕食はカレーライス。二人で一緒に作った、家庭の味。
「今日って、なんか特別な日だった気がするだけど…何かあったかな?」
「んー……何にもないよ。いつも通り、平和かな」
そう答えたレイの目は穏やかだった。
史実における“終戦日”は、この世界には存在しない。
なぜなら、日本は、戦争そのものを、「始まる前に終わらせた」からだ。
—
歴史に残るはずの“あの日”は、
この世界では、ただの“幸福な一日”だった。
何も起きなかった——
だからこそ、それは奇跡のような日だった。
——蒼月レイという少年が、世界の“運命”を変えた、そんな未来。
世界は今、彼が願った通り、静かに、そして確かに進んでいる。
そして明日もまた、
「普通の、平和な一日」が始まるのだ。
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