126 / 293
第七章 王都ヴァイゼ
第十四話 移動中の会話
しおりを挟むヤスは、ドーリスから冒険者ギルドに出された依頼書を見せられて、簡単に説明された。
「ヤスさん。もうしわけありません」
「別に、ドーリスが謝罪する必要はないだろう?」
「でも・・・」
「必要ない。それに、依頼を受けた奴は居ないのだろう?」
「リップル子爵領にあるギルドは不明だけど、他のギルド経由でも依頼を受けた者が居ないのは確認されています」
「それなら別にいいよ」
「え?」
「だって、襲ってきた連中は、俺を殺すつもりなのだろう?」
「そうですね」
「だったら、殺されても文句は言えないよな?」
「ヤスさん。相手は、格上ですよ?」
ヤスはドーリスを見てニヤリと笑う。
本人はニヒルに笑ったつもりだが、近くで見ているドーリスから見たら子供が”いいイタズラが思いついた”としか見えなかった。
「ドーリス。その格上の奴らは、最前線で戦っているような連中なのか?」
「違いますね。ランクが上なら自分で調べて行動すると思います。神殿が攻略されたと言われたら自分で調べてから受けるのは間違いありません」
「だろう?そうなると、受ける可能性があるのは、簡単に稼げると考える愚か者でランクもそれほど高くない奴らだろう?」
「そうですね。でも、それでもヤスさんよりは格上で経験もあります。状況を考えると危険ですよ」
「解っている。解っている。ドーリス。その俺よりも格上だけど、高ランクではない奴らは、魔の森の最奥部に行けるか?」
「え?無理だと思います。中層までが限界だと思います」
「なら、なんの問題もない」
「え?」
「セバスが連れてきた眷属を見ていなかったか?確か、サンドラに言われて、俺の従魔として登録したと思うぞ?」
「あぁぁぁぁ!!!上位種!」
「そうだ!セバスの報告で、彼らが更に進化した。護衛として連れて歩くには丁度良いだろう?」
「全部ですか?」
「いや、神殿に居る時は必要ないだろう。外に出るときにだけ、狼。猫。鷲を連れて行こうと思う。スキルで眷属召喚が使えるらしいから、神殿に帰ってから確認はするけど、戦力は十分だろう?」
「え・・・。そうですね。神殿で確認させてください。でも、ヤスさんの話が本当なら戦力は・・・。十分というよりも、過剰戦力です。多分、フェンリルでしたか?狼の魔物の上位種が進化した状態で、眷属召喚を領都で使われたら、領都が壊滅するかもしれません。それが、後二体?あっヤスさん。確か眷属にした魔物は・・・」
「6体とその眷属だな」
「もしかして・・・」
「あぁ、他の3体は進化まではしていない」
「そうですよね。いきなり全部が進化しないですよね!よかったです」
「あぁ・・・。眷属召喚はできるらしい」
「は?」
「だから、眷属召喚はできる。候補から外したのは、威圧感がないからであって戦力外って事ではない」
「威圧感?」
「考えてみろよ。いくら強いのが解っていても、羊や栗鼠や兎を見て危険だとは思わないだろう?鑑定を持っていなければ、強さもわからないだろう」
ドーリスは、紹介された魔物たちを思い浮かべる。
ヤスが行っている、羊や栗鼠や兎はしっかりとした魔物だ。強者の雰囲気という意味では足りないのはドーリスにも理解できる。上位種なのは解っているが、確かに中層を主戦場にする冒険者と戦って必ず勝てるとは言いにくい。
「さて、ドーリス。領都には寄る必要があるのか?」
「はい。物資があります。ギルドと領主様が集めてくれています」
「わかった。暗くなってからでも大丈夫だよな?」
「問題はありません」
「それなら、さっさと移動して、領都で物資を積んで神殿に帰るか」
「はい」
順調に、村や町に立ち寄って物資の補充を行っていた。
いくつかの村では、村で採れて過剰になっている作物と芋の交換をお願いされた。ヤスは何がどのくらい必要なのかわからないが、種類が沢山あったほうが良いだろうと判断して、物々交換を承諾した。
エルスドルフでも物資を積み込んだ。
すでに辺りは暗くなり始めていた。泊まっていけと勧めてくれる村長に”大丈夫”と告げてヤスはアーティファクトに火を入れる。
ライトを点灯させた所で村長は納得したようだ。
一度通った道でナビも表示できるのだが、ヤスも道は覚えている確かに暗くなってきているが、対向車が有るわけではない。速度を落としながら進めば問題ないと考えていた。実際、一箇所曲がればあとはほぼ一本道だ。幹線道路にはなっていないが、太い道を進めば領都に到着できる。
ゆっくりした速度で進んだが、門が完全に閉まる前には領都に到着出来た。
緊張もあったのだろう・・・。疲れたのか、ドーリスがウトウトし始めていた。
「ドーリス。もう少し頑張ってくれ、領都に到着したぞ」
「あっ・・・。ごめんなさい」
「いいよ。それでどうする?」
「あっ話をしてきます。神殿にも連絡をいれておきます」
「頼む」
ドーリスは門番に話をして領都に入っていく、ヤスはやることもないので運転席に戻ってエミリアを起動した。
『マルス。神殿は変わりないか?』
『眷属である。個体名栗鼠が進化いたしました』
『他には?』
『バスの運行。地域名ユーラットとの交易。カート場。学校施設。魔の森関連施設。問題はありません』
『わかった。学校の寮にはまだ空きがあるよな?』
『あります』
『村々を巡って見たが思った以上に孤児が多かった。サンドラやディアスに相談して孤児を雇えないかと思っているのだけどな』
『100名程度なら許容範囲です。ただし、食料の問題が発生します』
『わかった。急激に増やさなければ大丈夫だな』
『はい』
ヤスはエミリアを操作しながらマルスに話を聞いた。
細かい要望は、セバスやツバキから上がってきているだろうから、帰ってから詳しく聞いたほうがいいと思っているが、運用上の問題がなければよいと考えていた。
『マスター。個体名セバス・セバスチャンからの伝言で、”帰りにユーラットに立ち寄って、アフネス殿を訪ねて欲しい”ということです』
『わかった。他に、なにか言っていたか?』
『渡したい物があるとだけ聞いています』
『了解。ドーリスに言って帰りに寄る』
『お願いします』
ヤスが状況を確認していると、辺境伯を連れてドーリスが戻ってきた。
出迎えたヤスは、辺境伯から礼と謝罪を受けた。
礼は、エルスドルフへの運搬と”うるち”や豆を大量に購入した件だ。ヤスも素直に礼を受け取った、依頼でやったことだから、もう必要ないと付け足して終わった。
謝罪は、ヤスに関する依頼が冒険者ギルドに出された件だ。
「ヤス殿には謝らなければならない」
「事情がわかりません」
「そうだな。依頼はたしかに子爵家の領地にある冒険者ギルドで出された」
「そうみたいですね」
「どうやって、奴らはヤス殿やアーティファクトの事を知ったかだが・・・」
辺境伯が言いにくそうにしている状況とドーリスの反応から、ヤスは一つの答えにたどり着いた。
「そうですか・・・。ランドルフ殿ですか?」
「・・・っつ。すまない。ヤス殿。ランドルフは呼び捨てで構わない。奴は、すでに貴族ではない」
「そうですか・・・。それで彼が何をしたのですか?」
立ったままだったが、辺境伯はヤスの質問に答える形で現在判明している状況を話してくれた。
「わかりました。でも、大丈夫です。対策を考えます」
「そうか・・・。本当に、すまない」
「いえ、いいですよ。遅かれ早かれ似たような状況になっていたでしょう。ランドルフがやっていなくても他の誰かがやったと思われます」
「そう言ってもらえると少しは・・・」
リップル子爵領で出された依頼の原案は、ランドルフが出そうとした物だ。もちろん、コンラートが受理しなかった。しかし、依頼としての体裁は整っていたのだ。第二分隊から解体される前に逃げ出した奴が、ランドルフの作成した依頼書をリップル子爵家に持ち込んで報酬を得ようとしたのだ。
依頼は、子爵領で内容に手が加えられて受理されたのだ。
判明したばかりで、証拠を集める作業だけではなく証言の調査も終わっていない。
ランドルフは辺境伯の屋敷で隔離しているので尋問は終わっている。しかし、逃げ出した奴の捕縛は出来ていない。実際に、リップル子爵家に逃げ込まれたら手出しが難しい。犯罪者なら身柄の要求が行えるのだが、明確な罪を犯しているわけではない。受理されなかった依頼を他の情報と一緒に他家に持ち込んで報酬を得ただけで問題にはならない、もちろん犯罪でもない。
状況は判明したが、ヤスができる事は限られている。
問題が発生する前に、神殿に戻って護衛や対策を考えるほうが堅実だと思えた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~
カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。
気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。
だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう――
――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる