召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳

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第8話

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 教会の大聖堂は、色とりどりの宝石をちりばめたような神々しい光に包まれていた。

 すたんっ!

 その極彩色のなかに、オレたちは、文字通り、ひらりと舞い降りた。


 「誰もいないのニャ。今のうちに移動するニャ」

 「そうだな」

 
 オレは、聖堂の出入り口に向かって、走り出した。
 ライムは、オレの頭の上だ。
 
 
 「閑散としてるな。流行ってないのか?この教会」

 「なんか、失礼なことを言ってるのニャ。教会だからって、一日中、人が出入りしてるわけじゃないのニャ」

 「それもそうか」

 
 聖堂から廊下に出た。
 白で統一された廊下には、柱が並び立ち、その向こうには、広い中庭が見える。
 
 その中庭を、こっちに向かって、駆け抜けてくる集団がいた。
 
 「いたよ!あの少年ガキだ!」

 白い僧衣に身を包んでいるから、シスターだろう。

 まず、シスターがひとり、廊下に飛び込んできた。
 オレの行く手を塞いで、杖を構えた。
 立ち止まると、すぐに、後ろも塞がれた。挟み撃ちだ。

 残りのシスターも、ぐるりとオレを囲むように、中庭で杖を構えている。
 シスターたちの後ろで、腕を組んでいる高齢者ばあさんが、叫んだ。

 「いいかい!訓練どおりにやればいいんだよ!建物なんぞぶっ壊してもいい、思い切り、やっちまいなっ!」
 
 「「「「「はいっ!」」」」」 

 問答無用とばかりに、六人いっせいに、火球を打ち込んできた。

 
 __なんで?

 
 ふつう、『何者だ!』から始まる一連のプロセスがあるだろうに。
 ぜんぶ、すっとばして、いきなり攻撃してくるなんて。
 頭のおかしいシスターなんだろうか。


 その瞬間。


 カッと目が熱くなった。
 今、オレの目は、おそらく、蒼く光っているだろう。
 凍るような、透きとおった蒼色に。

 感情が高ぶったり、精神を集中したりすると、目が蒼く光るのだ。
 理由はわからないが、小さい頃から、いろんな【薬】を飲まされてきた。たぶん、そのせいじゃないかと思う。

 ちなみに、この目のせいで、小学校の頃から『きょじゃくたいしつ』に並ぶもうひとつの称号を得ていた。
 それは、『カラコンちゅうにびょー』だ。
 小学生の頃から『ちゅうに』と呼ばれる理不尽さは、呼ばれた本人にしかわかるまい。

 カラーコンタクトは、まったくの冤罪だったので、養護教諭といっしょに眼科に行って証明してもらった。
 しかし、事実など、クソガキの前では何の価値もない。
 『あいつヤバイ病気らしいぞ!感染うつるぞ!』と、逆に、ひどい差別発言にさらされることになった。
 
 保健室に常駐していたオレが、ごく稀に、教室に顔を出せば、このザマだったのだ。

   __くっ!

 いまは、そんな回想にふけってる場合でもなければ、のんびりオレの目の解説をしている場合でもない。
 いっせい魔法攻撃を受けている最中なのだから。


 「魔法障壁を張るニャ!」
 
 頭の上から、ライムの声が聞こえてくる。
 
 「わかった」

 オレは、障壁をイメージした。
 イメージでもいいし、「障壁」と唱えてもいい。
 魔法発動は、意外と、アバウトなのだ。

 発動に関しては、天界でレクチャーを受けている。
 練習しておかないと、いろいろ心配だとか言われて。

 蒼い目の効果だろう。
 シスターたちが撃ち込んできた火球が、がくりと速度を落とした。
 もちろん、そう見えているだけだ。

 蒼い目には、そういう不思議な効果があった。

 もし、オレが健康で、草野球チームにでも所属していたら、きっと、ホームランバッターとして名を馳せたに違いない。
 かつてのホームラン王は、全盛期の頃、ピッチャーの投げた球が止まって見えたと言っている。
 きっと、オレの蒼い目にも、豪速球がスローボールに見えるはずだから。

 ビーチボールほどの火球が、目の前で爆ぜてゆく。
 六人だから、六発かと思ったが、めちゃくちゃ連発しているらしい。
 
 柱とか、壁とかひどいことになってるが、いいんだろうか?

 
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