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第9話
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「…すまなかったねぇ。まさか『使徒』さまとは思わなかったのさ」
さきほど、『やっちまいな』と叫んでいた高齢シスターが頭をさげた。
シスターたちの魔法は、美しい廊下と柱を、瓦礫の山に変えた。
だが、魔法障壁を張ったオレは、まったくの無傷。たしょう、ホコリを被った程度だ。
それを見た時、頭上のライムが『高位精霊』だと気づいたらしい。
『高位精霊』を従えているなら、『使徒』に違いないと思ったのだろう。
「すまないねぇ。あのとんでもない魔力に当てられちまったとしかいいようがない。それに、そのなりだからねぇ」
ばあさんシスターは、オレのお気に入りのコスチュームをじろりと見た。
「だから、全身黒ずくめは怪しまれると、言ったのニャ…」
ライムの言いたいことはわかる。
「だが、異世界デビューは、上下黒ずくめに、赤のコートって決まってるんだ」
赤のコートは我慢したが、黒の上下だけは譲れない。
例のクローゼットにも、ちゃんと用意してあったし。
「ふふふっ…。あたしゃ、どこぞの魔王かと、思っちまったよ」
見かけで判断しちゃいけないねぇ…と、ばあさんは笑った。
オレのコスチュームは、まあ、いいとして、もっと重要な問題点が浮かび上がった。
「魔力の隠蔽(いんぺい)が足りなかったのニャ。もういっぺん重ねがけをするニャ」
「そうだな。そうしてくれ」
魔力の隠蔽(いんぺい)を、更に重ねることにした。
魔王と勘違いされてはたまらない。
ていうか、魔王なんているんだろうか。そんな話は聞いていないが。
それから、訂正して置くべきこともある。
「オレは、『使徒』じゃないと思うぞ」
へんな期待をされては、たまらないので、いちおう言っておいた。
知らないうちに『使徒』にされてたとも思えないし。
「おや、違ったのかい?使命は授かってないのかい? なにより、自分が『使徒』かどうかは、ステータスを見れば一目瞭然じゃないのかい?」
__そうきたか
ステータス画面の文字化けのことは、秘密にしておいたほうがいい気がした。
そもそも、オレひとりにしか発生しない問題だ。
無駄に混乱を招くのは、馬鹿げている。
ライムも、同じことを考えたのだろう。
言い訳を始めた。
「ジ、ジュンしゃまは、たしかに、明確な使命を帯びているわけではニャイのですが、大神さまに『送還』されたのニャから、『使徒』と呼んでも間違いではないのですニャ…」
煮えきらない説明だった。
「…ふうん。なるほどねぇ…」
ばあさんは、しばらく考え込んだ後、素知らぬ顔で言った。
「ここから先は、まあ、アタシの独り言と思ってくれればいいんだが…。じつは、この国では、つい最近、二度も『勇者召還』が行われたのさ」
さきほど、『やっちまいな』と叫んでいた高齢シスターが頭をさげた。
シスターたちの魔法は、美しい廊下と柱を、瓦礫の山に変えた。
だが、魔法障壁を張ったオレは、まったくの無傷。たしょう、ホコリを被った程度だ。
それを見た時、頭上のライムが『高位精霊』だと気づいたらしい。
『高位精霊』を従えているなら、『使徒』に違いないと思ったのだろう。
「すまないねぇ。あのとんでもない魔力に当てられちまったとしかいいようがない。それに、そのなりだからねぇ」
ばあさんシスターは、オレのお気に入りのコスチュームをじろりと見た。
「だから、全身黒ずくめは怪しまれると、言ったのニャ…」
ライムの言いたいことはわかる。
「だが、異世界デビューは、上下黒ずくめに、赤のコートって決まってるんだ」
赤のコートは我慢したが、黒の上下だけは譲れない。
例のクローゼットにも、ちゃんと用意してあったし。
「ふふふっ…。あたしゃ、どこぞの魔王かと、思っちまったよ」
見かけで判断しちゃいけないねぇ…と、ばあさんは笑った。
オレのコスチュームは、まあ、いいとして、もっと重要な問題点が浮かび上がった。
「魔力の隠蔽(いんぺい)が足りなかったのニャ。もういっぺん重ねがけをするニャ」
「そうだな。そうしてくれ」
魔力の隠蔽(いんぺい)を、更に重ねることにした。
魔王と勘違いされてはたまらない。
ていうか、魔王なんているんだろうか。そんな話は聞いていないが。
それから、訂正して置くべきこともある。
「オレは、『使徒』じゃないと思うぞ」
へんな期待をされては、たまらないので、いちおう言っておいた。
知らないうちに『使徒』にされてたとも思えないし。
「おや、違ったのかい?使命は授かってないのかい? なにより、自分が『使徒』かどうかは、ステータスを見れば一目瞭然じゃないのかい?」
__そうきたか
ステータス画面の文字化けのことは、秘密にしておいたほうがいい気がした。
そもそも、オレひとりにしか発生しない問題だ。
無駄に混乱を招くのは、馬鹿げている。
ライムも、同じことを考えたのだろう。
言い訳を始めた。
「ジ、ジュンしゃまは、たしかに、明確な使命を帯びているわけではニャイのですが、大神さまに『送還』されたのニャから、『使徒』と呼んでも間違いではないのですニャ…」
煮えきらない説明だった。
「…ふうん。なるほどねぇ…」
ばあさんは、しばらく考え込んだ後、素知らぬ顔で言った。
「ここから先は、まあ、アタシの独り言と思ってくれればいいんだが…。じつは、この国では、つい最近、二度も『勇者召還』が行われたのさ」
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