召喚失敗から始まる異世界生活

思惟岳

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第12話

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 教会を出たオレたちは、ケンイチさんたちに連れられて、冒険者ギルドに来ていた。

 「会ってほしい奴が、何人か居るんでな」

 誰かを紹介したいらしい。

 そのとき、ふと。
 ケンイチさんに寄り添っていた美女が、オレを睨んでいることに気づいた。
 何だろう。激しい憎悪すら感じる。

 さっき、異世界に降りてきたばかりなのだ。
 とうぜん、オレには、睨まれる覚えなどない。
 

 ケンイチさんも、気づいたらしい。
 そっと彼女の肩に手を置いた。

 「今は、まず、会わせてみることだ。そうすれば、何かわかるかもしれねえ…」
 「…そ、そうね。…わかったわ」

 我に返ったのか。彼女は、大きく息をついた。
 
 __でも

 憎悪の視線も気になるけど、姿勢をかえるたびに、たゆんたゆんする胸も、何とかしてもらえないだろうか。
 もしかして、この世界では、まだ、ブラが普及していない?

 正直言って、オレは、人妻とか他人の恋人には、まったく興味がない。
 だが、動く物体には、どうしても視線が向かってしまう。

 そう。これは、けっして、やましい気持ちなどではない。
 至近距離においてうごめく物体への、本能的な警戒なのだ。


 目のやり場に困りながらギルドに入ると、何故か、注目を浴びてしまった。


 「…おい、見ろよ」
 「へえ、黒目黒髪じゃねえか…」

 やはり、黒目黒髪は、目立つらしい。

 「こっちじゃ、珍しいですからニャー」

 頭上で、ライムが解説してくれた。

 「ケンイチさんと一緒ってことは…よ」
 「あの小僧が、次の勇者なのか…?」

 「いや。その勇者なら、第二皇女といるはずだろう」
 「…じゃあ、何モンだ…?」


 幸いなことに、『勇者』と、勘違いされてはいないようだ。
 オレは、すこし、ほっとした。
 もし、勘違いされてしまったら、あとで、『勇者』じゃないとわかった時に、不愉快なことになりそうだから。

 __それしても
 
 思えば、不思議な話だ。
 もし、召喚に成功していたら、オレは、紛れもなく『勇者』にされていただろう。

 だとすれば、召喚に成功するか否かが、『勇者』の条件ということになる。
 召喚に成功した時、つまり、召喚魔法陣とやらを通過した時、『勇者特典』でも付与されるんだろうか。
 ただの日本人が、そのまま『勇者』になれるはずがないのだから。 

 また、見方を変えれば、『勇者』とは、ステータスの職業欄に表示される名称のことだろう。
 でも、オレのステータスは、文字化けしたまま、永久に不明らしい。
 だからこそ、ライムが同行しているわけだ。

 __じっさい

 オレの職業って、何なのだろう?

 文字化けをしているのだから、記載自体はあるはず。
 何も書き込まれていなければ、意味不明の文字に化けることもないのだ。

 __でも

 わからないからこそ、面白いのか。

 神が定めた職業など気にせずに、好きなように生きていけるんだから。
 それは、ある意味、運命を無視して生きるようなものだろう。

 自分の人生は、自分で決める。
 それは、なかなか痛快な生き方じゃないのだろうか。
 とくに、この『ステータス』ということわりが存在する世界にあっては…。


 「紹介したかったのは、まず、このふたりだ」

 考え事にふけっていたら、ケンイチさんが、美形の男女を紹介してくれた。
 ギルドで、待ち合わせることになっていたらしい。  

 
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