残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな

文字の大きさ
140 / 302
第四章 最強編

第139話 立案(※挿絵あり)

しおりを挟む
 平日の昼間。

 俺は学院の授業をサボって屋上に寝転がっていた。
 快晴の空を眺めつつ、考え事をしていた。

 当面の俺のやるべきことは、元の世界に帰る方法を探すこと、エアに感情を食わせて人成させること、最強のイーターであろう海中イーターを狩ること、俺が負けると預言された最強の魔術師を倒すこと。

 これら四つの中で、おそらく達成できる時期が最も近いのはエアの人成ではなかろうか。
 正直なところ、アークドラゴンを倒した時点でエアが人成しなかったことに驚いている。存外あっさりと倒せたので、俺の感動が薄かったせいかもしれない。あるいは、そもそも精霊の人成にはまだ途方もない時間がかかるのかもしれない。

「エア、おまえはいつになったら人成するんだ?」

「それは私にも分からない」

 答えながら、俺の相棒は姿を現した。空気に溶け込んでいた色が三次元的ににじみ出てきて、白いワンピースの美少女を形作った。
 最初に出会ったときは、人の形を模してはいたが、明らかに空気の塊であった。風船で作った人形のように凹凸が少なくのっぺりとしていた。
 それがいまや本物の人間とまったく区別がつかない。

 彼女の変化は容姿だけではない。話し方もそうだ。
 最初はロボットのように、質問されたら淡白に最小限の回答しかしなかったが、いまでは人間と話していることを実感できるように滑らかな話し方をする。時には俺をいさめようとさえする。確実に彼女には感情が芽生えている。
 きっと、あともう少しだ。もう少し感情を食わせれば、エアは人成する。

「エア、何か楽しそうなことはないか?」

「エストはシミアン王国に行ったことがない。行ってみる?」

 シミアン王国はリオン帝国とジーヌ共和国に並ぶ大陸三大国の一つだ。
 シミアン王国を勧めてきたエアは無表情。彼女は感情を顔に出さないし、声の抑揚も小さいが、これだけ長い付き合いをすれば、なんとなく彼女の気持ちも汲み取れるというもの。
 いまの彼女の気持ちは、表情のとおり、無そのものだった。つまり聞かれたからテキトーに答えただけで、べつにオススメというわけではないのだ。

「うーん、あんまり興味が沸かないな。護神中立国で暴れるってのはどうだ?」

「それは絶対に駄目」

 珍しく強い口調。端整な顔立ちが吊り上げられると、強い威圧感がある。
 白いワンピースがはためいているが、部屋は俺が空気のバリアを張っているので外から風は入ってこない。つまり自分で風を起こしたのか、あるいは感情に呼応して勝手に空気が動いたのかだ。

「なんで駄目なんだ?」

「神様を冒涜ぼうとくする行為だから。それは冗談じゃ済まされない」

 その神様とやらがどういう存在なのか、それには興味がある。
 いや、まあ、神様なのだろうが、神ほどさまざまな意味で使われる言葉もなかなかないだろう。
 各宗教の崇拝対象であったり、数学や自然法則の存在のことを指したり、単に偉い人を指したり、単にすごい特技の持ち主を指したりと、探せばほかにもいろいろとあるだろう。

 しかし、この世界のようなファンタジーワールドにおいては、全知全能か、あるいはそれにじゅんずる驚異的な力を持つ者や、実際に世界を創造した者のことを指す可能性がある。
 そして、それは概念や偶像などではなく、実在していたりするのだ。

「冗談じゃ済まされない、か……」

 この世界のことわりを超越した存在なら、その神とやら以外にも知っている。そして俺は、そいつに関して神らしき存在から警告を受けたことがある。
 神とアレとはおそらく同じ次元の存在。神を怒らせるとどうなるかは、アレを怒らせたらどうなるかを考えたら……。

「未開の大陸にでも行くか」

 今度はエアに止められなかった。ダースやキーラ、リーズ、シャイルあたりに言ったら全力で止められるだろうが、エアは止めない。俺のよき理解者だ。

「エア、少し寝たら出発だ。あいつらはうるさいから内緒で行くぞ」

「分かった」

 相棒は空気に溶け込むように姿を消した。

 俺は一人、夜空を仰ぎながら目を閉じた。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

処理中です...