182 / 302
第五章 王国編
第181話 王都徘徊
しおりを挟む
異世界転移ものの主人公が異世界に飛ばされたときに最初に考えることは何だろうか。何を目的として行動するだろうか。
だいたい相場は決まっている。
まず自分の転移した世界がどのような世界なのかを知ること。そして、元の世界に帰る方法を探すこと。
僕はというと、この世界のことはだいたい知っている。ここが僕の好きなラノベの中の世界だからだ。
一方、元の世界に帰る方法は分からない。
ラノベの中で、主人公のダース・ホークは元の世界に帰らなかった。元の世界なんてなかったからだ。
異世界転移の主人公のはずが、実は神によってそういう記憶を与えられただけの、この世界の人間だったのだ。
だが僕は違う。明らかに元の世界の新鮮な記憶がある。
では元の世界に帰る方法が分からなくて僕が途方に暮れているかというと、実のところそうでもない。
僕は元の世界に帰れなくてもいいとさえ思っている。なにしろ、ここは憧れの世界なのだ。
そして憧れの魔導師にもなった。ダース・ホークと同じく、最強種である概念種だ。
では僕は何を目的に冒険すればいい?
いや、そもそも冒険が義務というわけでもないのだが、いまは僕がラノベの主人公みたいなものだから、やっぱり冒険したいじゃないか。
僕は連続瞬間移動で王都の上空までやってきた。あまり魔法をひけらかさないほうがいいだろうから、テキトーな所に降りて、王城見物でもすることにしよう。
僕は王城の外壁に沿って歩いた。立派な王城を眺めながらひたすら歩く。
そのうちに正門へと辿り着いた。鉄格子の大きな門があり、その両サイドには王国騎士が門番として立っている。
シミアン王国における王国騎士と王国魔導騎士は別物だ。
王国魔導騎士は魔法が使える精鋭の騎士だが、王国騎士は数が取り柄で魔法は使えない。そこには貴族と平民くらいの格差がある。
シミアン王城。
僕は入ろうと思えばいつでも中に入れる。だが用もないのに侵入して賊とみなされるのはバカバカしいので、いまは眺めるだけにしておく。
「おい小僧。さっさと立ち去れ。正門から王城をじっと眺めていると怪しい者と判断して捕らえるぞ」
捕らえられるものなら捕らえてみろ、と言いたいところだが、ここは大人な対応をするとしよう。
「おっと、これは失礼したね」
「おいガキ、口の利き方!」
無用な争いは避けるべきだ。僕は早々に立ち去ることにした。
そもそも僕はシミアン王城の中の様子や王家の内部事情にだって詳しい。ラノベで読んで知っているから。
シミアン王家はシミアン王とその王妃の間に四人の子がいる。
年齢順に、二十五歳の第一王子、二十四歳の第一王女、十九歳の第二王女、十七歳の第三王女の四人だ。
シミアン王家は王位継承権でギクシャクしていた。
特に第一王子と第一王女の間が犬猿の仲で、相手を貶めようと互いに隙をうかがっている。
第二王女は第一王子・王女の熾烈な王位継承争いから弾き出されてしまっているが、野心は強く、誰よりも策謀を巡らせる性質だった。第一王子に取り入り、第一王子が王位継承したあかつきには第一王女よりも優遇される特権を得られるよう画策している。
第三王女は野心もなく王位継承争いからは完全に外れている。彼女は草花が好きで、将来は植物に関する研究をしたいと考えている。
そんなシミアン王家に対して、主人公のダース・ホークはやはり深い関わりを持った。
公務で外出していた第一王女がレジスタンスに襲われていたところを彼が助けた。それでシミアン王家に気に入られ、頻繁にシミアン王城に出入りするようになった。
そんな折、横暴な王国騎士とヒロインのサンディアとの間でトラブルが発生する。
市場で走りまわって遊んでいた幼い少年が王国騎士の足を踏んでしまったのがきっかけだ。
その王国騎士は短気な上に子供嫌いというのも相まって、足を踏まれた際に激情に駆られてしまった。
少年の首根っこを掴み、左腕を掴み、徐々に締め上げたのだ。
少年が泣き叫ぶが、それをうるさいと感じて王国騎士はさらに激昂した。
そこへ現われたのがサンディア・グレインだった。
一刻の猶予もないと判断し、サンディアは魔法を使った。砂の操作で王国騎士の体を羽交い絞めにし、少年から引き剥がしたのだ。
それが原因でサンディアは国家反逆罪にされてしまう。王国騎士に対して敵意を持って魔法を使ったら、その時点で国家反逆罪と見なされる。
応援に来た王国魔導騎士に捕らえられそうになるが、それを助けたのがダース・ホークだった。
ダースはサンディアを助けるため、王国と決別して戦った。最後には王国首席魔導騎士との一騎打ちにもつれ込み、そして勝利した。
そうしてダースはシミアン王と取引した。
ダースはシミアン王家を壊滅させることができる状況にあったが、それをしない代わりにシミアン王家は今後二人には関わらないと誓約をかわした。
「あーあ」
僕も同じように王女様を助けて王家に気に入られてみたい。おいしいご馳走を振舞われたりしてみたい。
でも、さすがにそんな都合のいい展開は降ってこないか。
いくら僕がこの世界のことをラノベで読んで知っていたとしても、そういった偶然に意図して遭遇することなどできない。
「お腹すいたなぁ……」
どこかのお店で……、いや、そういえば僕はこの世界のお金を持っていない。まずはお金を手に入れなければ。
よし、ギルドを探そう。依頼をこなしてお金を稼ぐのだ。
だいたい相場は決まっている。
まず自分の転移した世界がどのような世界なのかを知ること。そして、元の世界に帰る方法を探すこと。
僕はというと、この世界のことはだいたい知っている。ここが僕の好きなラノベの中の世界だからだ。
一方、元の世界に帰る方法は分からない。
ラノベの中で、主人公のダース・ホークは元の世界に帰らなかった。元の世界なんてなかったからだ。
異世界転移の主人公のはずが、実は神によってそういう記憶を与えられただけの、この世界の人間だったのだ。
だが僕は違う。明らかに元の世界の新鮮な記憶がある。
では元の世界に帰る方法が分からなくて僕が途方に暮れているかというと、実のところそうでもない。
僕は元の世界に帰れなくてもいいとさえ思っている。なにしろ、ここは憧れの世界なのだ。
そして憧れの魔導師にもなった。ダース・ホークと同じく、最強種である概念種だ。
では僕は何を目的に冒険すればいい?
いや、そもそも冒険が義務というわけでもないのだが、いまは僕がラノベの主人公みたいなものだから、やっぱり冒険したいじゃないか。
僕は連続瞬間移動で王都の上空までやってきた。あまり魔法をひけらかさないほうがいいだろうから、テキトーな所に降りて、王城見物でもすることにしよう。
僕は王城の外壁に沿って歩いた。立派な王城を眺めながらひたすら歩く。
そのうちに正門へと辿り着いた。鉄格子の大きな門があり、その両サイドには王国騎士が門番として立っている。
シミアン王国における王国騎士と王国魔導騎士は別物だ。
王国魔導騎士は魔法が使える精鋭の騎士だが、王国騎士は数が取り柄で魔法は使えない。そこには貴族と平民くらいの格差がある。
シミアン王城。
僕は入ろうと思えばいつでも中に入れる。だが用もないのに侵入して賊とみなされるのはバカバカしいので、いまは眺めるだけにしておく。
「おい小僧。さっさと立ち去れ。正門から王城をじっと眺めていると怪しい者と判断して捕らえるぞ」
捕らえられるものなら捕らえてみろ、と言いたいところだが、ここは大人な対応をするとしよう。
「おっと、これは失礼したね」
「おいガキ、口の利き方!」
無用な争いは避けるべきだ。僕は早々に立ち去ることにした。
そもそも僕はシミアン王城の中の様子や王家の内部事情にだって詳しい。ラノベで読んで知っているから。
シミアン王家はシミアン王とその王妃の間に四人の子がいる。
年齢順に、二十五歳の第一王子、二十四歳の第一王女、十九歳の第二王女、十七歳の第三王女の四人だ。
シミアン王家は王位継承権でギクシャクしていた。
特に第一王子と第一王女の間が犬猿の仲で、相手を貶めようと互いに隙をうかがっている。
第二王女は第一王子・王女の熾烈な王位継承争いから弾き出されてしまっているが、野心は強く、誰よりも策謀を巡らせる性質だった。第一王子に取り入り、第一王子が王位継承したあかつきには第一王女よりも優遇される特権を得られるよう画策している。
第三王女は野心もなく王位継承争いからは完全に外れている。彼女は草花が好きで、将来は植物に関する研究をしたいと考えている。
そんなシミアン王家に対して、主人公のダース・ホークはやはり深い関わりを持った。
公務で外出していた第一王女がレジスタンスに襲われていたところを彼が助けた。それでシミアン王家に気に入られ、頻繁にシミアン王城に出入りするようになった。
そんな折、横暴な王国騎士とヒロインのサンディアとの間でトラブルが発生する。
市場で走りまわって遊んでいた幼い少年が王国騎士の足を踏んでしまったのがきっかけだ。
その王国騎士は短気な上に子供嫌いというのも相まって、足を踏まれた際に激情に駆られてしまった。
少年の首根っこを掴み、左腕を掴み、徐々に締め上げたのだ。
少年が泣き叫ぶが、それをうるさいと感じて王国騎士はさらに激昂した。
そこへ現われたのがサンディア・グレインだった。
一刻の猶予もないと判断し、サンディアは魔法を使った。砂の操作で王国騎士の体を羽交い絞めにし、少年から引き剥がしたのだ。
それが原因でサンディアは国家反逆罪にされてしまう。王国騎士に対して敵意を持って魔法を使ったら、その時点で国家反逆罪と見なされる。
応援に来た王国魔導騎士に捕らえられそうになるが、それを助けたのがダース・ホークだった。
ダースはサンディアを助けるため、王国と決別して戦った。最後には王国首席魔導騎士との一騎打ちにもつれ込み、そして勝利した。
そうしてダースはシミアン王と取引した。
ダースはシミアン王家を壊滅させることができる状況にあったが、それをしない代わりにシミアン王家は今後二人には関わらないと誓約をかわした。
「あーあ」
僕も同じように王女様を助けて王家に気に入られてみたい。おいしいご馳走を振舞われたりしてみたい。
でも、さすがにそんな都合のいい展開は降ってこないか。
いくら僕がこの世界のことをラノベで読んで知っていたとしても、そういった偶然に意図して遭遇することなどできない。
「お腹すいたなぁ……」
どこかのお店で……、いや、そういえば僕はこの世界のお金を持っていない。まずはお金を手に入れなければ。
よし、ギルドを探そう。依頼をこなしてお金を稼ぐのだ。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる