263 / 302
最終章 狂酔編
第262話 カケララ戦‐護神中立国③
しおりを挟む
どうやら紅い狂気が人を狂気に染めるやり方は二通りあるようだ。
一つは精神に干渉し、その人に内在する狂気を無理矢理に呼び起こす方法。
そしてもう一つは、肉体的および精神的に過剰なストレスを加えて心を破壊し、思考回路を狂わせる方法。
前者は紅い狂気の特殊技能を行使することでしかありえない狂人の作り方だが、後者は紅い狂気が存在しなかった場合にも人が狂乱し得る、いわば自然発生的な狂人の作り方だ。
そして、狂人となるまでにより辛い思いをするのは、当然ながら後者だ。
過度な肉体への痛み、残酷な魂の汚染、それらを経て廃人となり、さらにいたぶられ弄ばれつづけた先に狂人が待っている。
「もう……」
レイジー・デントはずっと首を絞められつづけていた。
ほとんど息ができずに苦しみつづけて数時間。涙はとうに枯れていた。
「あらら、さっきまでは『まだ……』だったのに、言葉が変わったわね。どうにか搾り出した声で何を言いたいの? 言ってごらんなさいよ」
レイジーの首がいっそう絞めつけられる。
言葉を発することもできない。
レイジーは後悔していた。
いろんなことを後悔していた。
まず、エアが世界に攻撃をした動機を知ったとき、彼女に賛同するべきだった。
あのときはこんな地獄が待っているとは想像できなかった。
サンディアをアンジュとエンジュの応援に向かわせるべきではなかった。
目の前にいるカケララは身が一つであり、能力も一つだけ。
カケララ自身からはレイジーが攻撃を受け、念動力からはセクレが攻撃を受け、蹂躙されている。もしサンディアを残していたら、カケララを妨害する人員になっていたかもしれない。カケララと戦うには三人目の人員が必須だった。
レイジー・デントは判断を間違えた。この二つの過ちはとてつもなく大きい。そしてこの二つの選択ミスにつながる判断すべてを呪った。
これまでの人生では常に最善を選択してきたはずなのに、なぜこうなったのか。
自分が悪いのか?
ゲス・エストのせいか?
それとも最初から運命として決まっていたのか?
「……死にたい。もう、許して……」
苦しい。とにかく苦しい。ひたすら苦しい。
楽になりたい。もうそれしか考えられない。
そんなレイジーの心は、言葉として聞くまでもなくカケララには分かっていることだった。
「死にたいの? なんで?」
カケララが意地悪に笑う。まともに息ができずに苦しいのに、もっと喋らせようとする。どうせそれを聞いたところで望みを聞き入れないくせに。
レイジーがカケララに直接首を絞められている一方で、セクレは体を操られ、苦痛を与えられつづけていた。
四肢、胴、首、その他あらゆる間接を、捻られ、捻じられ、圧迫され、押し曲げられていた。
痛い。とにかく痛い。
全身の何箇所もの骨が折れ、それが肉に刺さる。
しかし死にはしない。死なせてはもらえない。
しかし、もし死なせてもらえるとしても、どんなに死にたかろうと死ぬわけにはいかない。なぜなら、セクレが魔法を止めるとレイジーがもっと苦しむことになるからだ。
実はセクレはインクをレイジーの喉、それも気管のほうに忍ばせていた。
それはレイジーがカケララに首を絞められはじめてから、カケララに気づかれないように少しずつ送り込んだものだ。レイジーの苦しみを少しでも和らげるため、セクレはレイジーの気管を内側から広げようと液体を操作していた。
自分の体の痛みで何度も意識が飛びそうになるが、意識を失わないよう絶妙かつ正確に加減しているのはカケララなので、セクレは自分が痛みに耐えかねて魔法を止めるようなことがないよう集中するだけだった。
セクレにとってレイジーは恩人だった。
かつてのセクレは魔法のセンスがない落ちこぼれとして同級生にいじめられていた。それを救ったのが生徒会長のレイジーだったのだ。
レイジーは直接介入するのではなく、セクレに魔法を使いこなす方法を教え、自力で相手を見返せるように育てた。
セクレは自力でイジメに対抗し、苦境を脱することができた。
セクレはレイジーの恩に報いたいという気持ちと、学校を道徳観や倫理感を重んじる校風に変えたいという気持ちから生徒会に入り、そして実際に学校の環境改善に尽力してきた。
その結果として、魔導学院は特に風紀の遵守に力を入れるようになり、風紀委員には強き者がそろっていった。
ただ、今度は風紀委員が力を持ちすぎてしまうという事態に陥った。一部の風紀委員が肩書きを盾に幅を利かせるようになったのだ。
そんな中でセクレがスカウトしたのがサンディアだった。
サンディアは真面目で誠実で、そして何より優しい。彼女を引き入れたことによって、それを慕う同類の後輩が風紀委員に入り、学院の雰囲気はいくらか柔和になった。
(サンディアがいてくれたら、状況は変わっていたのかな……)
セクレもまた、サンディアをアンジュとエンジュの助っ人に出したことは間違いだったと後悔した。
だがサンディアがいたとして、現状がどう変わっていたかは分からない。サンディアの魔法自体は砂の操作型という非常に強力なものなのだが、サンディア自身の魔法を使う能力はそんなに高くはない。
サンディアがいたとして、両手両脚を折られて目を潰されて放置されるだけだったかもしれない。カケララの言うとおり、状況は何も変わらなかったかもしれない。
でも、どうしてもサンディアがいてくれたらと考えてしまう。それほどに、全身の内部が破壊される痛みが辛い。
レイジーを守らなければという想いと、楽になりたいという想いが激しく葛藤している。
いっそのこと、操作している液体をレイジーの喉に詰まらせて楽にしてあげて、その後に自分のことも窒息させて自殺したい。
しかしそれはすべての仲間への裏切りだ。本当は勝てたかもしれない戦いが自分のせいで負けるかもしれない。そんなことはできない。
(でも、苦しいよぉ……)
枯れたはずなのに、また涙が出てきた。ネットリしていて、レイジーを見つめる視界が赤く滲む。
これは、血の涙だろうか。自分も狂気に呑まれてしまうのだろうか。
そんなのに負けてたまるか。
でも、呑まれてしまったほうが楽なのだろうか……。
…………。
「セクレ、いま楽にしてあげるね」
セクレの体にかけられていた見えない力がフッと消えた。
全身を砂が這いまわる感覚がする。そして、砂が自分の体を動かす。捻じれを解き、歪みを正し、元のあるべき姿勢を取り戻していく。
そして顔を覗き込んで優しく微笑んだのは、白いオーラをまとったサンディア・グレインだった。
「サンディア……」
セクレの目に涙が浮かぶ。今度はネットリしていないし、目も痛くない。
全身にはいまだ激痛が残るが、さっきまでに比べたらだいぶ楽になった。
「さあ、会長を助けるよ!」
「もちろんです! でも、肩を貸すです」
レイジーのほうには、アンジュとエンジュが駆けつけていた。
カケララの左手にはアンジュが、右手にはエンジュがしがみつき、レイジーから剥がそうと懸命にひっぱっている。
非力な二人の力ではカケララの腕はビクともしない……かに思えたが、それは違った。
アンジュとエンジュからあふれ出る白いオーラが、カケララの表情を曇らせている。水を吸った紙みたいに、しなしなっと力が抜けて、カケララはレイジーの首から手を離した。
「サンディア、いまの見たですか?」
「ええ、アンジュとエンジュが会長を助けたわ。二人の成長が頼もしい」
「いや、そうじゃなくて」
白いオーラは魔法を強める効果があるが、肉体を強化する効果はない。つまり、アンジュとエンジュの腕力が増したのではなく、カケララが弱体化したのだ。セクレはそれに気づいた。
カケララは白いオーラが弱点なのだ。
ただし、白いオーラはいかなる干渉も受けつけないため、白いオーラをカケララに触れさせるには白いオーラを発する者がカケララに密着しなければならない。
「アタイたちは弱いけれど、想いだけは誰にも負けないんだから」
アンジュとエンジュ、二人は弱いからこそ特大の勇気を振り絞った。二人から噴き出す白いオーラがカケララの動きを鈍らせている。
だが、それが限界だ。カケララは腕を封じられたが、ただそれだけのこと。少し気分が悪いくらいで、二人を蹴り殺すことは造作もない。
「じゃあいいわ。あなたたちのことは諦めて殺してあげる」
「させない!」
セクレとサンディアがカケララの脚にしがみついて完全に動きを封じた。
これでカケララは四肢を四人に封じられた。彼女たちの発する白いオーラがカケララをますます弱らせる。身動きが取れないだけでなく、念動力すら使えないほどに。
「膠着状態に持ち込めたのは上等ね。でも、ここまでだわ。たしかに私は白いオーラに弱いけれど、オーラに触れるだけではダメージにはならない。それに、白いオーラを出すほどの強い気持ちは長くは続かないものよ」
「いいや、十分だよ」
仰向けに倒れているレイジー・デントもまた、白いオーラをまとっていた。狂気が感染するように、勇気も伝播する。
永遠とも思える地獄を脱する唯一無二のこの機会を決して逃すわけにはいかない。レイジーは気力を振り絞り、カケララの胸の中央部に両手を重ねて押し当てた。
「発狂寸前の廃人が強がるな! 狂気に堕ちろ!」
カケララの紅いオーラがレイジーの腕にまとわりつくが、レイジーの内側から放出される白いオーラはそれを弾くように消し飛ばした。
「ここに結束した五つの想いは絶対に曲がらない。狂気がどんなに暴虐を尽くそうとも!」
レイジーの手から極太の光線が迸った。
もちろん、それは白いオーラによって強化された魔法だ。
白い光が上空へと走り去った後、カケララの胸にはどでかい風穴が開いていた。
「そんな馬鹿な……」
カケララの口と胸から真紅の血がドロッと流れ落ちた。
五人の白いオーラに全身を包まれていて、土に染み込む雪のように、カケララは白いオーラの中へ溶けて消えた。
一つは精神に干渉し、その人に内在する狂気を無理矢理に呼び起こす方法。
そしてもう一つは、肉体的および精神的に過剰なストレスを加えて心を破壊し、思考回路を狂わせる方法。
前者は紅い狂気の特殊技能を行使することでしかありえない狂人の作り方だが、後者は紅い狂気が存在しなかった場合にも人が狂乱し得る、いわば自然発生的な狂人の作り方だ。
そして、狂人となるまでにより辛い思いをするのは、当然ながら後者だ。
過度な肉体への痛み、残酷な魂の汚染、それらを経て廃人となり、さらにいたぶられ弄ばれつづけた先に狂人が待っている。
「もう……」
レイジー・デントはずっと首を絞められつづけていた。
ほとんど息ができずに苦しみつづけて数時間。涙はとうに枯れていた。
「あらら、さっきまでは『まだ……』だったのに、言葉が変わったわね。どうにか搾り出した声で何を言いたいの? 言ってごらんなさいよ」
レイジーの首がいっそう絞めつけられる。
言葉を発することもできない。
レイジーは後悔していた。
いろんなことを後悔していた。
まず、エアが世界に攻撃をした動機を知ったとき、彼女に賛同するべきだった。
あのときはこんな地獄が待っているとは想像できなかった。
サンディアをアンジュとエンジュの応援に向かわせるべきではなかった。
目の前にいるカケララは身が一つであり、能力も一つだけ。
カケララ自身からはレイジーが攻撃を受け、念動力からはセクレが攻撃を受け、蹂躙されている。もしサンディアを残していたら、カケララを妨害する人員になっていたかもしれない。カケララと戦うには三人目の人員が必須だった。
レイジー・デントは判断を間違えた。この二つの過ちはとてつもなく大きい。そしてこの二つの選択ミスにつながる判断すべてを呪った。
これまでの人生では常に最善を選択してきたはずなのに、なぜこうなったのか。
自分が悪いのか?
ゲス・エストのせいか?
それとも最初から運命として決まっていたのか?
「……死にたい。もう、許して……」
苦しい。とにかく苦しい。ひたすら苦しい。
楽になりたい。もうそれしか考えられない。
そんなレイジーの心は、言葉として聞くまでもなくカケララには分かっていることだった。
「死にたいの? なんで?」
カケララが意地悪に笑う。まともに息ができずに苦しいのに、もっと喋らせようとする。どうせそれを聞いたところで望みを聞き入れないくせに。
レイジーがカケララに直接首を絞められている一方で、セクレは体を操られ、苦痛を与えられつづけていた。
四肢、胴、首、その他あらゆる間接を、捻られ、捻じられ、圧迫され、押し曲げられていた。
痛い。とにかく痛い。
全身の何箇所もの骨が折れ、それが肉に刺さる。
しかし死にはしない。死なせてはもらえない。
しかし、もし死なせてもらえるとしても、どんなに死にたかろうと死ぬわけにはいかない。なぜなら、セクレが魔法を止めるとレイジーがもっと苦しむことになるからだ。
実はセクレはインクをレイジーの喉、それも気管のほうに忍ばせていた。
それはレイジーがカケララに首を絞められはじめてから、カケララに気づかれないように少しずつ送り込んだものだ。レイジーの苦しみを少しでも和らげるため、セクレはレイジーの気管を内側から広げようと液体を操作していた。
自分の体の痛みで何度も意識が飛びそうになるが、意識を失わないよう絶妙かつ正確に加減しているのはカケララなので、セクレは自分が痛みに耐えかねて魔法を止めるようなことがないよう集中するだけだった。
セクレにとってレイジーは恩人だった。
かつてのセクレは魔法のセンスがない落ちこぼれとして同級生にいじめられていた。それを救ったのが生徒会長のレイジーだったのだ。
レイジーは直接介入するのではなく、セクレに魔法を使いこなす方法を教え、自力で相手を見返せるように育てた。
セクレは自力でイジメに対抗し、苦境を脱することができた。
セクレはレイジーの恩に報いたいという気持ちと、学校を道徳観や倫理感を重んじる校風に変えたいという気持ちから生徒会に入り、そして実際に学校の環境改善に尽力してきた。
その結果として、魔導学院は特に風紀の遵守に力を入れるようになり、風紀委員には強き者がそろっていった。
ただ、今度は風紀委員が力を持ちすぎてしまうという事態に陥った。一部の風紀委員が肩書きを盾に幅を利かせるようになったのだ。
そんな中でセクレがスカウトしたのがサンディアだった。
サンディアは真面目で誠実で、そして何より優しい。彼女を引き入れたことによって、それを慕う同類の後輩が風紀委員に入り、学院の雰囲気はいくらか柔和になった。
(サンディアがいてくれたら、状況は変わっていたのかな……)
セクレもまた、サンディアをアンジュとエンジュの助っ人に出したことは間違いだったと後悔した。
だがサンディアがいたとして、現状がどう変わっていたかは分からない。サンディアの魔法自体は砂の操作型という非常に強力なものなのだが、サンディア自身の魔法を使う能力はそんなに高くはない。
サンディアがいたとして、両手両脚を折られて目を潰されて放置されるだけだったかもしれない。カケララの言うとおり、状況は何も変わらなかったかもしれない。
でも、どうしてもサンディアがいてくれたらと考えてしまう。それほどに、全身の内部が破壊される痛みが辛い。
レイジーを守らなければという想いと、楽になりたいという想いが激しく葛藤している。
いっそのこと、操作している液体をレイジーの喉に詰まらせて楽にしてあげて、その後に自分のことも窒息させて自殺したい。
しかしそれはすべての仲間への裏切りだ。本当は勝てたかもしれない戦いが自分のせいで負けるかもしれない。そんなことはできない。
(でも、苦しいよぉ……)
枯れたはずなのに、また涙が出てきた。ネットリしていて、レイジーを見つめる視界が赤く滲む。
これは、血の涙だろうか。自分も狂気に呑まれてしまうのだろうか。
そんなのに負けてたまるか。
でも、呑まれてしまったほうが楽なのだろうか……。
…………。
「セクレ、いま楽にしてあげるね」
セクレの体にかけられていた見えない力がフッと消えた。
全身を砂が這いまわる感覚がする。そして、砂が自分の体を動かす。捻じれを解き、歪みを正し、元のあるべき姿勢を取り戻していく。
そして顔を覗き込んで優しく微笑んだのは、白いオーラをまとったサンディア・グレインだった。
「サンディア……」
セクレの目に涙が浮かぶ。今度はネットリしていないし、目も痛くない。
全身にはいまだ激痛が残るが、さっきまでに比べたらだいぶ楽になった。
「さあ、会長を助けるよ!」
「もちろんです! でも、肩を貸すです」
レイジーのほうには、アンジュとエンジュが駆けつけていた。
カケララの左手にはアンジュが、右手にはエンジュがしがみつき、レイジーから剥がそうと懸命にひっぱっている。
非力な二人の力ではカケララの腕はビクともしない……かに思えたが、それは違った。
アンジュとエンジュからあふれ出る白いオーラが、カケララの表情を曇らせている。水を吸った紙みたいに、しなしなっと力が抜けて、カケララはレイジーの首から手を離した。
「サンディア、いまの見たですか?」
「ええ、アンジュとエンジュが会長を助けたわ。二人の成長が頼もしい」
「いや、そうじゃなくて」
白いオーラは魔法を強める効果があるが、肉体を強化する効果はない。つまり、アンジュとエンジュの腕力が増したのではなく、カケララが弱体化したのだ。セクレはそれに気づいた。
カケララは白いオーラが弱点なのだ。
ただし、白いオーラはいかなる干渉も受けつけないため、白いオーラをカケララに触れさせるには白いオーラを発する者がカケララに密着しなければならない。
「アタイたちは弱いけれど、想いだけは誰にも負けないんだから」
アンジュとエンジュ、二人は弱いからこそ特大の勇気を振り絞った。二人から噴き出す白いオーラがカケララの動きを鈍らせている。
だが、それが限界だ。カケララは腕を封じられたが、ただそれだけのこと。少し気分が悪いくらいで、二人を蹴り殺すことは造作もない。
「じゃあいいわ。あなたたちのことは諦めて殺してあげる」
「させない!」
セクレとサンディアがカケララの脚にしがみついて完全に動きを封じた。
これでカケララは四肢を四人に封じられた。彼女たちの発する白いオーラがカケララをますます弱らせる。身動きが取れないだけでなく、念動力すら使えないほどに。
「膠着状態に持ち込めたのは上等ね。でも、ここまでだわ。たしかに私は白いオーラに弱いけれど、オーラに触れるだけではダメージにはならない。それに、白いオーラを出すほどの強い気持ちは長くは続かないものよ」
「いいや、十分だよ」
仰向けに倒れているレイジー・デントもまた、白いオーラをまとっていた。狂気が感染するように、勇気も伝播する。
永遠とも思える地獄を脱する唯一無二のこの機会を決して逃すわけにはいかない。レイジーは気力を振り絞り、カケララの胸の中央部に両手を重ねて押し当てた。
「発狂寸前の廃人が強がるな! 狂気に堕ちろ!」
カケララの紅いオーラがレイジーの腕にまとわりつくが、レイジーの内側から放出される白いオーラはそれを弾くように消し飛ばした。
「ここに結束した五つの想いは絶対に曲がらない。狂気がどんなに暴虐を尽くそうとも!」
レイジーの手から極太の光線が迸った。
もちろん、それは白いオーラによって強化された魔法だ。
白い光が上空へと走り去った後、カケララの胸にはどでかい風穴が開いていた。
「そんな馬鹿な……」
カケララの口と胸から真紅の血がドロッと流れ落ちた。
五人の白いオーラに全身を包まれていて、土に染み込む雪のように、カケララは白いオーラの中へ溶けて消えた。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
最強の異世界やりすぎ旅行記
萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。
そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。
「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」
バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!?
最強が無双する異世界ファンタジー開幕!
魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~
トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。
それは、最強の魔道具だった。
魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく!
すべては、憧れのスローライフのために!
エブリスタにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる