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最終章 狂酔編
第281話 悪夢‐その⑤
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※注意※
グロ表現、鬱展開に耐性のない方は第286話から続きを読むことを推奨します。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ひどい……。ひどすぎる……」
ベッドの上で目が覚めた俺は上体を起こすも、すぐにうずくまって泣いた。
涙が止まらない。
精神攻撃にシフトしているのか。
いや、もともと苦痛による精神ダメージはすさまじいものだったが、ベクトルが変わっている。
俺に仲間を殺させるという方法は、明らかに狙って俺の精神を壊しにきている。
「エストさん、大丈夫ですの?」
リーズの声。彼女の柔らかい手が俺の肩に置かれる。
だが俺は泣き顔を見られたくなくて、顔を膝にうつむけたまま反応しなかった。
それでもリーズは離れていくのではなく、横から寄り添って俺の肩を引き寄せるように優しく抱きしめてくれた。
「リーズ……」
リーズの優しさに余計に涙が止まらなくなる。
心の中には氷のように冷たい水と、ほんのり温かいお湯が混ざり合っていて、しかしその二つは熱移動せず水と油のように分離したままマーブル状に俺の心の中を漂いつづけた。
心が冷たくて、もっと温もりが欲しくて、俺は思わず頭をリーズの方へと傾け、そして押しつけた。
そしてリーズの背中に両手を回した。
ピンク色のネグリジェ越しに温かな体温を感じ、溶けるアイスのようにそのまましがみつく。
はたから見れば、大きい赤ちゃんが同年代のママに泣きついている、実に情けない姿だろう。
しかし俺の脳にはもはや体裁を気にする思考が入る隙間なんてなかった。
「エス……ト……」
俺の名を呼ぶリーズの声。どこか苦しそうなその声が気になって、ふと顔を上げる。
「――ッ!」
目にした光景に思わず息を呑んだ。
俺は慌ててリーズから離れようとするも、体がいうことを聞かない。
「やめて……」
「ああ、分かってる!」
俺の両手がリーズの首を絞めていた。
すぐに手を離そうとするのだが、俺の両手は脳が発している信号をいっこうに受信しない。両手に込める力が増すのが感覚的に分かる。
「…………」
リーズの顔がどんどん苦しそうに歪んでいく。
両目から涙を流しながら、少しずつ鬱血していく。
「エスト、さん……。わたくし、あなたのこと、好き……でしたの……」
リーズはそこまで言ったところで、もう呻き声しか出せなくなった。
開いた口から舌が飛び出し、両目は飛び出してこぼれおちそうなほどに隆起し、顔全体が赤黒く変色している。
「おい、やめろ! カケラ、貴様だろうが! 俺の体を返せぇええええ!」
一瞬だけ手の力が弱まった。
まさかカケラがそんな甘いことをするとは思ってもみなかったので面食らっていると、辛うじて声が出せるようになったリーズが、どうにか声を振り絞って俺に言う。
「エスト、さん、やめ……て……」
再び俺の手に力が入る。
「ちがっ、ちがうっ! 俺じゃない! 俺じゃないんだ!」
リーズの両手が、自身の首と俺の手の隙間に入り込もうと暴れが、入れなくて今度は俺の手をかきむしるように爪を立ててひっかく。
「いっ、いたいっ! ああっ、違うんだ! すまない、離せないんだ!」
さらに俺の手に力が入る。
リーズの両手両足がバタバタと暴れ、そしてほどなくダランと垂れ下がった。まるで線香花火の最後の煌きのように。
リーズは完全に動かなくなった。
もうリーズは俺を見ていない。どこも見ていない。
酸素を求めて口は大きく開かれ、舌がはみ出したまま、もう引っ込まない。
相手の意思ではなく自分のおこないの結果がそこにある。それがいちばんこたえる。
「うわああああああああああああっ!」
今回は俺自身が命を落とすことなく、ただ能動的に大切な仲間を殺させられただけだった。
「これは単なる精神攻撃だ。現実じゃない。さっきまでの痛みや苦しみに比べれば、こんなのぜんぜん耐えられる」
だが、涙が止まらない。
俺はしばらく体を支配されていて、リーズのひどい死に顔を見つめさせられつづけた。
涙がぜんぜん止まらない。
さっきの俺の言葉はカケラに向けて言ったものなのか、自分自身に言い聞かせるためのものだったのか、もはや自分でも分からない。
さっきまでの肉体への苦痛ですでに精神的にも疲弊しきっている。これ以上精神を責める必要があるか?
……いや、肉体への責め苦も嫌だ。
精神攻撃ももう嫌だ。
どちらも嫌だ。
「もう……もうやめてくれ……」
そうつぶやいたからか、俺の手から力が抜けた。
リーズの体が重力にひっぱられてベッド横の床に落ちた。勢いよく落ちて、強く頭を打った。
しかしもう死んでいるから、なんの反応もない。
「くっそぉおおおおおおおおおおおお!!」
叫んだせいかは分からないが、そこでプツンと俺の意識は途絶えた。
グロ表現、鬱展開に耐性のない方は第286話から続きを読むことを推奨します。
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「ひどい……。ひどすぎる……」
ベッドの上で目が覚めた俺は上体を起こすも、すぐにうずくまって泣いた。
涙が止まらない。
精神攻撃にシフトしているのか。
いや、もともと苦痛による精神ダメージはすさまじいものだったが、ベクトルが変わっている。
俺に仲間を殺させるという方法は、明らかに狙って俺の精神を壊しにきている。
「エストさん、大丈夫ですの?」
リーズの声。彼女の柔らかい手が俺の肩に置かれる。
だが俺は泣き顔を見られたくなくて、顔を膝にうつむけたまま反応しなかった。
それでもリーズは離れていくのではなく、横から寄り添って俺の肩を引き寄せるように優しく抱きしめてくれた。
「リーズ……」
リーズの優しさに余計に涙が止まらなくなる。
心の中には氷のように冷たい水と、ほんのり温かいお湯が混ざり合っていて、しかしその二つは熱移動せず水と油のように分離したままマーブル状に俺の心の中を漂いつづけた。
心が冷たくて、もっと温もりが欲しくて、俺は思わず頭をリーズの方へと傾け、そして押しつけた。
そしてリーズの背中に両手を回した。
ピンク色のネグリジェ越しに温かな体温を感じ、溶けるアイスのようにそのまましがみつく。
はたから見れば、大きい赤ちゃんが同年代のママに泣きついている、実に情けない姿だろう。
しかし俺の脳にはもはや体裁を気にする思考が入る隙間なんてなかった。
「エス……ト……」
俺の名を呼ぶリーズの声。どこか苦しそうなその声が気になって、ふと顔を上げる。
「――ッ!」
目にした光景に思わず息を呑んだ。
俺は慌ててリーズから離れようとするも、体がいうことを聞かない。
「やめて……」
「ああ、分かってる!」
俺の両手がリーズの首を絞めていた。
すぐに手を離そうとするのだが、俺の両手は脳が発している信号をいっこうに受信しない。両手に込める力が増すのが感覚的に分かる。
「…………」
リーズの顔がどんどん苦しそうに歪んでいく。
両目から涙を流しながら、少しずつ鬱血していく。
「エスト、さん……。わたくし、あなたのこと、好き……でしたの……」
リーズはそこまで言ったところで、もう呻き声しか出せなくなった。
開いた口から舌が飛び出し、両目は飛び出してこぼれおちそうなほどに隆起し、顔全体が赤黒く変色している。
「おい、やめろ! カケラ、貴様だろうが! 俺の体を返せぇええええ!」
一瞬だけ手の力が弱まった。
まさかカケラがそんな甘いことをするとは思ってもみなかったので面食らっていると、辛うじて声が出せるようになったリーズが、どうにか声を振り絞って俺に言う。
「エスト、さん、やめ……て……」
再び俺の手に力が入る。
「ちがっ、ちがうっ! 俺じゃない! 俺じゃないんだ!」
リーズの両手が、自身の首と俺の手の隙間に入り込もうと暴れが、入れなくて今度は俺の手をかきむしるように爪を立ててひっかく。
「いっ、いたいっ! ああっ、違うんだ! すまない、離せないんだ!」
さらに俺の手に力が入る。
リーズの両手両足がバタバタと暴れ、そしてほどなくダランと垂れ下がった。まるで線香花火の最後の煌きのように。
リーズは完全に動かなくなった。
もうリーズは俺を見ていない。どこも見ていない。
酸素を求めて口は大きく開かれ、舌がはみ出したまま、もう引っ込まない。
相手の意思ではなく自分のおこないの結果がそこにある。それがいちばんこたえる。
「うわああああああああああああっ!」
今回は俺自身が命を落とすことなく、ただ能動的に大切な仲間を殺させられただけだった。
「これは単なる精神攻撃だ。現実じゃない。さっきまでの痛みや苦しみに比べれば、こんなのぜんぜん耐えられる」
だが、涙が止まらない。
俺はしばらく体を支配されていて、リーズのひどい死に顔を見つめさせられつづけた。
涙がぜんぜん止まらない。
さっきの俺の言葉はカケラに向けて言ったものなのか、自分自身に言い聞かせるためのものだったのか、もはや自分でも分からない。
さっきまでの肉体への苦痛ですでに精神的にも疲弊しきっている。これ以上精神を責める必要があるか?
……いや、肉体への責め苦も嫌だ。
精神攻撃ももう嫌だ。
どちらも嫌だ。
「もう……もうやめてくれ……」
そうつぶやいたからか、俺の手から力が抜けた。
リーズの体が重力にひっぱられてベッド横の床に落ちた。勢いよく落ちて、強く頭を打った。
しかしもう死んでいるから、なんの反応もない。
「くっそぉおおおおおおおおおおおお!!」
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