残念ながら主人公はゲスでした。~異世界転移したら空気を操る魔法を得て世界最強に。好き放題に無双する俺を誰も止められない!~

日和崎よしな

文字の大きさ
295 / 302
最終章 狂酔編

第294話 激戦

しおりを挟む
「たしかに私の特殊能力はすべて封殺されたわね。でも基礎能力だけで十分だわ」

 カケラが俺の顔を指差した。
 直感的に嫌な予感がして彼女の指の延長線上から顔を逸らすと、その直後に強烈な光線が通りすぎていった。

「あっぶな! ていうか、マジか!」

 特殊能力は全部封じたと思ったのに、まだこんな隠し球があったとは。

「これは特殊能力ではないわ。基本能力として魔法を使えるのよ。神の世界の人間は誰でも魔法が使えるの。私が空に浮いたままの時点で気づくべきでしょう?」

 そんなの反則だ。魔法が基本能力? 空に浮いていて光線も放てるってことは、エアみたいに何でも魔法が使えるってことか?

「ああ、エアとは違うわよ。エアは見たことある記憶の魔法しか使えないけれど、私は自分が思い描いた魔法を好きなように使えるの」

「おいおい、反則すぎるだろ。それに、さっきから心を読んでない? その能力は使えないはずだが」

「たしかに心は読んではいるわね。能力が封じられて心が視えなくなったから、仕方なく頭を働かせて心を読んでいるのよ。ふふふ。ゲス・エスト、あなた、案外顔に出て分かりやすいわよ。エアに視線を向けたりね」

 つまり洞察力で心を読んでいるということか。
 それならば俺が普段やっていることと大差はないが、その精度が高すぎる。
 つまり頭脳も俺より上ということ。

「強すぎる……」

 改めて勝てる気がしない。
 だが、負けるつもりはない。
 また飛ばしてくるであろう光線に備えて光を屈折させるバリアを張る。

 しかしカケラの次の攻撃は魔法ではなかった。超スピードで直進してきて拳で突いてきた。
 とっさに絶対化した空気のバリアで防いだが、その瞬間にすさまじい衝撃波と轟音が一帯に響いた。

 カケラはバリアの隙間を探すように上下左右前後と四方八方から強烈な攻撃を仕掛けてくる。
 俺は空気のバリアを変形させてハリネズミのように鋭い針を無数に生やした。それは単なる防御ではなく、明確にカケラを串刺しにしようと意図した高速攻撃。

「――ッ!」

 空気の針は間違いなくカケラに命中した。絶対化しているので強度で負けることはない。
 しかし、カケラの体を貫通することはなく、代わりにカケラの体が吹っ飛ばされた。
 カケラは空中でブレーキをかけたようだが、そのまま岩に激突して体一つ分ほど減り込んだ。

「あの鋭さでも貫けないのか。硬すぎだろ」

「いまのはちょっとイラッとしたわ」

 カケラが少し力むと、彼女の体を包み込んでいた岩山が派手に吹き飛び、ちょっとした地震を引き起こした。

 カケラのパンチが一発でも生身に命中すれば俺は即死すると思われるが、俺に空気の絶対化がある以上は肉弾戦が得策ではないと判断したのか、カケラは再び魔法による攻撃に切り替えた。

 カケラが突き出す手のひらに緑色の炎が出現した。
 だいだいでもなくあおでもない独特な緑色の炎。炎色反応じゃあるまいし、間違いなく普通の炎ではない。
 俺は即座に真空の膜でそれを包み込み、そのまま押し潰すが、緑色の炎は消えなかった。酸素を奪われても燃焼しつづけるとは、いったいどういう魔法だ。

 カケラは緑色の炎を俺に向けて飛ばしてきた。
 速度的にはそんなに速くはないのだが、俺が逃げると追いかけてくる。
 神器・ムニキスが欲しいところだが、いまはリーンに貸している。あちらは少人数でドクター・シータの相手をしているので、彼女の戦力を落とすわけにはいかない。

「くそっ!」

 緑色の炎が五つになった。これに四方八方から迫られたら、俺もいよいよ追い詰められ、ついには逃げ場をなくしてしまう。
 真空の壁も絶対化した空気すらもすり抜けてくる。おそらく光に近い性質の何かだろうが、もはや分析する猶予もない。

「うおおおおおおっ!」

 俺は全身から黒いオーラを噴き出させ、五つの緑色の炎を受けとめた。

「へぇ! 白いオーラと黒いオーラを同時に出せるなんて、なかなかの芸当を見せてくれるじゃない」

 白は天然、黒は自己暗示。深層心理と表面意識の精神状態を同時に認識することで実現できた荒業だ。長くはもたない。

 俺をサポートしようと、カケラに向けてキーラが電撃を放ったり、シャイルが炎を放ったりしているが、カケラは彼女たちの魔法には見向きもせず俺の方だけを見たまま、それらの魔法を手刀で切り裂いてたやすく消し去った。
 手にムニキスの力を与えているようだ。闇道具としてのムニキスを作ったカケラには、その力を自身の体に宿すことは造作もないのだ。

 俺はカケラを真空で包み込み、さらには真空を彼女の口の中へと押し込んだ。
 しかしカケラはまったくの無反応。彼女は呼吸すら必要としないのか。
 ならばと今度は操作リンクを張った空気をカケラの口から侵入させ、体内へと潜り込ませる。そして絶対化の力をもって四方八方へと空気を爆散させた。

「おっ」

 カケラは赤い霧と化して空気とともに方々へ散った。
 その瞬間、緑色の炎が少し弱まったので黒いオーラで飲み込み、五つとも完全に消滅させる。

 しかし、カケラはあっというまに復活した。四散した赤い霧がすぐに元の場所に集合して再びカケラの姿を作り上げたのだ。
 やはり弱点である白いオーラそのもので攻撃するしかない。

「その霧化は基礎能力のほうだったか」

「魔法よ。発生型だとか操作型だとか、制約の多いあなたたちの魔法とは違うの」

 空を飛んでいるのも、俺たちみたいに何かを操作してそれに乗るとかじゃなくて、空を飛ぶ魔法そのものなのだろう。
 肉体強度も鋼級だし、まったく何においても俺たちの上位互換、いや、互換という言葉を使うことすらおこがましい最強の存在だ。

 カケラを倒すには、やはり俺たち全員が力を合わせる必要がある。
 もちろん、いま操られているドクター・シータの力も主戦力として不可欠。どうにかして彼への支配を解かなければならない。

「みんな、援護してくれ。いまからカケラに突っ込む!」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

最強の異世界やりすぎ旅行記

萩場ぬし
ファンタジー
主人公こと小鳥遊 綾人(たかなし あやと)はある理由から毎日のように体を鍛えていた。 そんなある日、突然知らない真っ白な場所で目を覚ます。そこで綾人が目撃したものは幼い少年の容姿をした何か。そこで彼は告げられる。 「なんと! 君に異世界へ行く権利を与えようと思います!」 バトルあり!笑いあり!ハーレムもあり!? 最強が無双する異世界ファンタジー開幕!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

処理中です...