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最終章 狂酔編
第294話 激戦
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「たしかに私の特殊能力はすべて封殺されたわね。でも基礎能力だけで十分だわ」
カケラが俺の顔を指差した。
直感的に嫌な予感がして彼女の指の延長線上から顔を逸らすと、その直後に強烈な光線が通りすぎていった。
「あっぶな! ていうか、マジか!」
特殊能力は全部封じたと思ったのに、まだこんな隠し球があったとは。
「これは特殊能力ではないわ。基本能力として魔法を使えるのよ。神の世界の人間は誰でも魔法が使えるの。私が空に浮いたままの時点で気づくべきでしょう?」
そんなの反則だ。魔法が基本能力? 空に浮いていて光線も放てるってことは、エアみたいに何でも魔法が使えるってことか?
「ああ、エアとは違うわよ。エアは見たことある記憶の魔法しか使えないけれど、私は自分が思い描いた魔法を好きなように使えるの」
「おいおい、反則すぎるだろ。それに、さっきから心を読んでない? その能力は使えないはずだが」
「たしかに心は読んではいるわね。能力が封じられて心が視えなくなったから、仕方なく頭を働かせて心を読んでいるのよ。ふふふ。ゲス・エスト、あなた、案外顔に出て分かりやすいわよ。エアに視線を向けたりね」
つまり洞察力で心を読んでいるということか。
それならば俺が普段やっていることと大差はないが、その精度が高すぎる。
つまり頭脳も俺より上ということ。
「強すぎる……」
改めて勝てる気がしない。
だが、負けるつもりはない。
また飛ばしてくるであろう光線に備えて光を屈折させるバリアを張る。
しかしカケラの次の攻撃は魔法ではなかった。超スピードで直進してきて拳で突いてきた。
とっさに絶対化した空気のバリアで防いだが、その瞬間にすさまじい衝撃波と轟音が一帯に響いた。
カケラはバリアの隙間を探すように上下左右前後と四方八方から強烈な攻撃を仕掛けてくる。
俺は空気のバリアを変形させてハリネズミのように鋭い針を無数に生やした。それは単なる防御ではなく、明確にカケラを串刺しにしようと意図した高速攻撃。
「――ッ!」
空気の針は間違いなくカケラに命中した。絶対化しているので強度で負けることはない。
しかし、カケラの体を貫通することはなく、代わりにカケラの体が吹っ飛ばされた。
カケラは空中でブレーキをかけたようだが、そのまま岩に激突して体一つ分ほど減り込んだ。
「あの鋭さでも貫けないのか。硬すぎだろ」
「いまのはちょっとイラッとしたわ」
カケラが少し力むと、彼女の体を包み込んでいた岩山が派手に吹き飛び、ちょっとした地震を引き起こした。
カケラのパンチが一発でも生身に命中すれば俺は即死すると思われるが、俺に空気の絶対化がある以上は肉弾戦が得策ではないと判断したのか、カケラは再び魔法による攻撃に切り替えた。
カケラが突き出す手のひらに緑色の炎が出現した。
橙でもなく蒼でもない独特な緑色の炎。炎色反応じゃあるまいし、間違いなく普通の炎ではない。
俺は即座に真空の膜でそれを包み込み、そのまま押し潰すが、緑色の炎は消えなかった。酸素を奪われても燃焼しつづけるとは、いったいどういう魔法だ。
カケラは緑色の炎を俺に向けて飛ばしてきた。
速度的にはそんなに速くはないのだが、俺が逃げると追いかけてくる。
神器・ムニキスが欲しいところだが、いまはリーンに貸している。あちらは少人数でドクター・シータの相手をしているので、彼女の戦力を落とすわけにはいかない。
「くそっ!」
緑色の炎が五つになった。これに四方八方から迫られたら、俺もいよいよ追い詰められ、ついには逃げ場をなくしてしまう。
真空の壁も絶対化した空気すらもすり抜けてくる。おそらく光に近い性質の何かだろうが、もはや分析する猶予もない。
「うおおおおおおっ!」
俺は全身から黒いオーラを噴き出させ、五つの緑色の炎を受けとめた。
「へぇ! 白いオーラと黒いオーラを同時に出せるなんて、なかなかの芸当を見せてくれるじゃない」
白は天然、黒は自己暗示。深層心理と表面意識の精神状態を同時に認識することで実現できた荒業だ。長くはもたない。
俺をサポートしようと、カケラに向けてキーラが電撃を放ったり、シャイルが炎を放ったりしているが、カケラは彼女たちの魔法には見向きもせず俺の方だけを見たまま、それらの魔法を手刀で切り裂いてたやすく消し去った。
手にムニキスの力を与えているようだ。闇道具としてのムニキスを作ったカケラには、その力を自身の体に宿すことは造作もないのだ。
俺はカケラを真空で包み込み、さらには真空を彼女の口の中へと押し込んだ。
しかしカケラはまったくの無反応。彼女は呼吸すら必要としないのか。
ならばと今度は操作リンクを張った空気をカケラの口から侵入させ、体内へと潜り込ませる。そして絶対化の力をもって四方八方へと空気を爆散させた。
「おっ」
カケラは赤い霧と化して空気とともに方々へ散った。
その瞬間、緑色の炎が少し弱まったので黒いオーラで飲み込み、五つとも完全に消滅させる。
しかし、カケラはあっというまに復活した。四散した赤い霧がすぐに元の場所に集合して再びカケラの姿を作り上げたのだ。
やはり弱点である白いオーラそのもので攻撃するしかない。
「その霧化は基礎能力のほうだったか」
「魔法よ。発生型だとか操作型だとか、制約の多いあなたたちの魔法とは違うの」
空を飛んでいるのも、俺たちみたいに何かを操作してそれに乗るとかじゃなくて、空を飛ぶ魔法そのものなのだろう。
肉体強度も鋼級だし、まったく何においても俺たちの上位互換、いや、互換という言葉を使うことすらおこがましい最強の存在だ。
カケラを倒すには、やはり俺たち全員が力を合わせる必要がある。
もちろん、いま操られているドクター・シータの力も主戦力として不可欠。どうにかして彼への支配を解かなければならない。
「みんな、援護してくれ。いまからカケラに突っ込む!」
カケラが俺の顔を指差した。
直感的に嫌な予感がして彼女の指の延長線上から顔を逸らすと、その直後に強烈な光線が通りすぎていった。
「あっぶな! ていうか、マジか!」
特殊能力は全部封じたと思ったのに、まだこんな隠し球があったとは。
「これは特殊能力ではないわ。基本能力として魔法を使えるのよ。神の世界の人間は誰でも魔法が使えるの。私が空に浮いたままの時点で気づくべきでしょう?」
そんなの反則だ。魔法が基本能力? 空に浮いていて光線も放てるってことは、エアみたいに何でも魔法が使えるってことか?
「ああ、エアとは違うわよ。エアは見たことある記憶の魔法しか使えないけれど、私は自分が思い描いた魔法を好きなように使えるの」
「おいおい、反則すぎるだろ。それに、さっきから心を読んでない? その能力は使えないはずだが」
「たしかに心は読んではいるわね。能力が封じられて心が視えなくなったから、仕方なく頭を働かせて心を読んでいるのよ。ふふふ。ゲス・エスト、あなた、案外顔に出て分かりやすいわよ。エアに視線を向けたりね」
つまり洞察力で心を読んでいるということか。
それならば俺が普段やっていることと大差はないが、その精度が高すぎる。
つまり頭脳も俺より上ということ。
「強すぎる……」
改めて勝てる気がしない。
だが、負けるつもりはない。
また飛ばしてくるであろう光線に備えて光を屈折させるバリアを張る。
しかしカケラの次の攻撃は魔法ではなかった。超スピードで直進してきて拳で突いてきた。
とっさに絶対化した空気のバリアで防いだが、その瞬間にすさまじい衝撃波と轟音が一帯に響いた。
カケラはバリアの隙間を探すように上下左右前後と四方八方から強烈な攻撃を仕掛けてくる。
俺は空気のバリアを変形させてハリネズミのように鋭い針を無数に生やした。それは単なる防御ではなく、明確にカケラを串刺しにしようと意図した高速攻撃。
「――ッ!」
空気の針は間違いなくカケラに命中した。絶対化しているので強度で負けることはない。
しかし、カケラの体を貫通することはなく、代わりにカケラの体が吹っ飛ばされた。
カケラは空中でブレーキをかけたようだが、そのまま岩に激突して体一つ分ほど減り込んだ。
「あの鋭さでも貫けないのか。硬すぎだろ」
「いまのはちょっとイラッとしたわ」
カケラが少し力むと、彼女の体を包み込んでいた岩山が派手に吹き飛び、ちょっとした地震を引き起こした。
カケラのパンチが一発でも生身に命中すれば俺は即死すると思われるが、俺に空気の絶対化がある以上は肉弾戦が得策ではないと判断したのか、カケラは再び魔法による攻撃に切り替えた。
カケラが突き出す手のひらに緑色の炎が出現した。
橙でもなく蒼でもない独特な緑色の炎。炎色反応じゃあるまいし、間違いなく普通の炎ではない。
俺は即座に真空の膜でそれを包み込み、そのまま押し潰すが、緑色の炎は消えなかった。酸素を奪われても燃焼しつづけるとは、いったいどういう魔法だ。
カケラは緑色の炎を俺に向けて飛ばしてきた。
速度的にはそんなに速くはないのだが、俺が逃げると追いかけてくる。
神器・ムニキスが欲しいところだが、いまはリーンに貸している。あちらは少人数でドクター・シータの相手をしているので、彼女の戦力を落とすわけにはいかない。
「くそっ!」
緑色の炎が五つになった。これに四方八方から迫られたら、俺もいよいよ追い詰められ、ついには逃げ場をなくしてしまう。
真空の壁も絶対化した空気すらもすり抜けてくる。おそらく光に近い性質の何かだろうが、もはや分析する猶予もない。
「うおおおおおおっ!」
俺は全身から黒いオーラを噴き出させ、五つの緑色の炎を受けとめた。
「へぇ! 白いオーラと黒いオーラを同時に出せるなんて、なかなかの芸当を見せてくれるじゃない」
白は天然、黒は自己暗示。深層心理と表面意識の精神状態を同時に認識することで実現できた荒業だ。長くはもたない。
俺をサポートしようと、カケラに向けてキーラが電撃を放ったり、シャイルが炎を放ったりしているが、カケラは彼女たちの魔法には見向きもせず俺の方だけを見たまま、それらの魔法を手刀で切り裂いてたやすく消し去った。
手にムニキスの力を与えているようだ。闇道具としてのムニキスを作ったカケラには、その力を自身の体に宿すことは造作もないのだ。
俺はカケラを真空で包み込み、さらには真空を彼女の口の中へと押し込んだ。
しかしカケラはまったくの無反応。彼女は呼吸すら必要としないのか。
ならばと今度は操作リンクを張った空気をカケラの口から侵入させ、体内へと潜り込ませる。そして絶対化の力をもって四方八方へと空気を爆散させた。
「おっ」
カケラは赤い霧と化して空気とともに方々へ散った。
その瞬間、緑色の炎が少し弱まったので黒いオーラで飲み込み、五つとも完全に消滅させる。
しかし、カケラはあっというまに復活した。四散した赤い霧がすぐに元の場所に集合して再びカケラの姿を作り上げたのだ。
やはり弱点である白いオーラそのもので攻撃するしかない。
「その霧化は基礎能力のほうだったか」
「魔法よ。発生型だとか操作型だとか、制約の多いあなたたちの魔法とは違うの」
空を飛んでいるのも、俺たちみたいに何かを操作してそれに乗るとかじゃなくて、空を飛ぶ魔法そのものなのだろう。
肉体強度も鋼級だし、まったく何においても俺たちの上位互換、いや、互換という言葉を使うことすらおこがましい最強の存在だ。
カケラを倒すには、やはり俺たち全員が力を合わせる必要がある。
もちろん、いま操られているドクター・シータの力も主戦力として不可欠。どうにかして彼への支配を解かなければならない。
「みんな、援護してくれ。いまからカケラに突っ込む!」
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