31 / 151
鍛冶屋
10
しおりを挟む
「すまない!」
ライラの感じている不安を吹き飛ばしてしまう勢いで、イルシアが頭を下げて謝罪をしてきた。
ライラは突然のイルシアの行動に拍子抜けしてしまう。
「…………しかたないわ。冒険者とは思えない格好をしていたのは私だもの。イルシア君が謝ることはないわ」
イルシアが心底申し訳なさそうにしているので、ライラはいつものような愛想笑いはせずに、真面目な顔をする。深呼吸をしてから姿勢を正すと、イルシアに向かって手を差し出した。
「あらためまして、ライラと申します。この度、冒険者登録試験を受験させて頂きますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いしますね。……先輩?」
「いや、ご指導って言われても……。おっさんが実力を認めるような奴に俺が教えられることなんて何もねえと思うけど」
イルシアはライラに握手を求められているのだと気が付くと、恥ずかしそうに視線を泳がせてうろたえだした。
ライラはそんなイルシアのもう一つの少年らしさに自然と微笑みながら、彼の手を無理やり取ってかたく握る。
そこへ、ファルがぱたぱたと足音を立てて駆け寄ってきた。次は私だと、彼女はライラへ向かって手を突き出してくる。
「イルってば遠慮することないのにー。ライラさん聞いてください! イルはとっても強いのですよ」
ライラはファルともしっかりと握手を交わす。ファルは握った手をぶんぶんと上下に激しく振りながら、力を込めて話しだした。
「イルは冒険者登録試験が受験可能になる十五歳になってすぐ試験に合格にしたんです。しかも、一年も経たずにAランクに上がった実力派なのですよ!」
ファルは胸を張って得意げな顔をした。誇らしげにイルシアについて語るファルに、ライラは温かい気持ちになる。
だが、ファルの口から出た聞きなれない単語に、ライラは彼女の手を握ったまま首を傾げて問いかけた。
「……あのね、Aランクって何かな? それは冒険者ランクのことなの?」
「え⁉ ……それってどういうことですか?」
問いかけられたファルは口を大きく開いてぽかんとした顔をする。ライラとファルは、互いに困惑したたまま見つめ合ってしまった。
すると、そばにいたマディスが何かに気が付いたような顔をしてから、呆れたように声を上げる。
「まさかとは思うが、ランク制度が変更されたことを知らないとかないよな?」
ライラはマディスの言葉を聞いて、心の中でまたかと溜息をつく。
「……もしかして冒険者組合のシステム変更の一環なのかしら?」
ライラがうんざりとしながらマディスに問うと、彼は腰に手を当てて呆れ顔で頷いた。
「まったく知らなかったわ。これはどうしたものかしら」
「おいおい、そんなことで大丈夫か? せっかく特急で調整したってのに、それで試験に受かってくれなけりゃこっちはがっかりするぜ」
マディスはちらりと娘のファルに視線を向ける。ファルは父親の視線に力強く頷いてから、ライラに向かって現在のランク制度についての説明をはじめた。
「現在の冒険者組合でのランクは全部で五段階あります。下からC、B、A、S、SS」
ファルは片手を大きく上げて、指を一本ずつ立てながら得意げに話す。
「組合での依頼をこなしてポイントを貯めていくと、昇級試験を受けることができるようになります。それに合格すればランクアップします。つまり、イルは十五歳で半分までいったんです。凄いことなのです。本当に凄いですよね⁉」
ファルが無邪気な笑顔でイルシアのことを褒めちぎる。
イルシアは恥ずかしいらしく、どんどん頬を赤く染めていく。彼は真っ赤になってしまった顔を隠すようにそっぽを向いてから口を開いた。
「……た、たしか、前はランクの名前が金とか銀とかアダマンタイトとか……、鉱石の名前だったんだろ? それが分かりにくいとかっていうので変えたらしいぞ!」
ライラはイルシアとファルの様子を微笑ましく見つめながら、昔のことを思い出そうとする。
ライラの感じている不安を吹き飛ばしてしまう勢いで、イルシアが頭を下げて謝罪をしてきた。
ライラは突然のイルシアの行動に拍子抜けしてしまう。
「…………しかたないわ。冒険者とは思えない格好をしていたのは私だもの。イルシア君が謝ることはないわ」
イルシアが心底申し訳なさそうにしているので、ライラはいつものような愛想笑いはせずに、真面目な顔をする。深呼吸をしてから姿勢を正すと、イルシアに向かって手を差し出した。
「あらためまして、ライラと申します。この度、冒険者登録試験を受験させて頂きますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いしますね。……先輩?」
「いや、ご指導って言われても……。おっさんが実力を認めるような奴に俺が教えられることなんて何もねえと思うけど」
イルシアはライラに握手を求められているのだと気が付くと、恥ずかしそうに視線を泳がせてうろたえだした。
ライラはそんなイルシアのもう一つの少年らしさに自然と微笑みながら、彼の手を無理やり取ってかたく握る。
そこへ、ファルがぱたぱたと足音を立てて駆け寄ってきた。次は私だと、彼女はライラへ向かって手を突き出してくる。
「イルってば遠慮することないのにー。ライラさん聞いてください! イルはとっても強いのですよ」
ライラはファルともしっかりと握手を交わす。ファルは握った手をぶんぶんと上下に激しく振りながら、力を込めて話しだした。
「イルは冒険者登録試験が受験可能になる十五歳になってすぐ試験に合格にしたんです。しかも、一年も経たずにAランクに上がった実力派なのですよ!」
ファルは胸を張って得意げな顔をした。誇らしげにイルシアについて語るファルに、ライラは温かい気持ちになる。
だが、ファルの口から出た聞きなれない単語に、ライラは彼女の手を握ったまま首を傾げて問いかけた。
「……あのね、Aランクって何かな? それは冒険者ランクのことなの?」
「え⁉ ……それってどういうことですか?」
問いかけられたファルは口を大きく開いてぽかんとした顔をする。ライラとファルは、互いに困惑したたまま見つめ合ってしまった。
すると、そばにいたマディスが何かに気が付いたような顔をしてから、呆れたように声を上げる。
「まさかとは思うが、ランク制度が変更されたことを知らないとかないよな?」
ライラはマディスの言葉を聞いて、心の中でまたかと溜息をつく。
「……もしかして冒険者組合のシステム変更の一環なのかしら?」
ライラがうんざりとしながらマディスに問うと、彼は腰に手を当てて呆れ顔で頷いた。
「まったく知らなかったわ。これはどうしたものかしら」
「おいおい、そんなことで大丈夫か? せっかく特急で調整したってのに、それで試験に受かってくれなけりゃこっちはがっかりするぜ」
マディスはちらりと娘のファルに視線を向ける。ファルは父親の視線に力強く頷いてから、ライラに向かって現在のランク制度についての説明をはじめた。
「現在の冒険者組合でのランクは全部で五段階あります。下からC、B、A、S、SS」
ファルは片手を大きく上げて、指を一本ずつ立てながら得意げに話す。
「組合での依頼をこなしてポイントを貯めていくと、昇級試験を受けることができるようになります。それに合格すればランクアップします。つまり、イルは十五歳で半分までいったんです。凄いことなのです。本当に凄いですよね⁉」
ファルが無邪気な笑顔でイルシアのことを褒めちぎる。
イルシアは恥ずかしいらしく、どんどん頬を赤く染めていく。彼は真っ赤になってしまった顔を隠すようにそっぽを向いてから口を開いた。
「……た、たしか、前はランクの名前が金とか銀とかアダマンタイトとか……、鉱石の名前だったんだろ? それが分かりにくいとかっていうので変えたらしいぞ!」
ライラはイルシアとファルの様子を微笑ましく見つめながら、昔のことを思い出そうとする。
65
あなたにおすすめの小説
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。
木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。
その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。
本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。
リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。
しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。
なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。
竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。
※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。
※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)
没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活
アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。
妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。
貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。
しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。
小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。
妹が聖女に選ばれました。姉が闇魔法使いだと周囲に知られない方が良いと思って家を出たのに、何故か王子様が追いかけて来ます。
向原 行人
ファンタジー
私、アルマには二つ下の可愛い妹がいます。
幼い頃から要領の良い妹は聖女に選ばれ、王子様と婚約したので……私は遠く離れた地で、大好きな魔法の研究に専念したいと思います。
最近は異空間へ自由に物を出し入れしたり、部分的に時間を戻したり出来るようになったんです!
勿論、この魔法の効果は街の皆さんにも活用を……いえ、無限に収納出来るので、安い時に小麦を買っていただけで、先見の明とかはありませんし、怪我をされた箇所の時間を戻しただけなので、治癒魔法とは違います。
だから私は聖女ではなくて、妹が……って、どうして王子様がこの地に来ているんですかっ!?
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる