離婚したので冒険者に復帰しようと思います。

黒蜜きな粉

文字の大きさ
47 / 151
冒険者登録試験

11

しおりを挟む
「――っはい!」

 マスターに声をかけられたイルシアが、元気よく返事をして槍を構えた。
 イルシアは満面の笑みを浮かべている。今すぐにでも、こちらに飛びかかってきそうだ。

「ちょ、ちょっと待ってちょうだい!」

 ライラはイルシアを止めるために慌てて声を上げた。

「もう一度だけ確認をさせてね。戦わずにコインを渡してもらうっていうのは、ないのかな?」

「――っないな!」

 ライラの問いかけはイルシアに即座に否定されてしまう。

「まあまあ、そんなことは言わずにね。だってね、ここで私たちが戦ってもあまり意味がないじゃない?」

「ええー、んなことを俺に言われてもなあ。俺はお前がコインのことに気がついたら、戦えって言われているだけだしさー」

「んー、そっかあ。そうよねえ」

 ライラは何とかしてイルシアを言葉で丸め込もうとしてみる。
 しかし、イルシアは早く戦いたくてしょうがないのか、面倒くさそうに返事をするだけだった。
 ライラはイルシアの説得を諦めて、マスターへと視線を向ける。

「ねえ、マスター。この指示を撤回する気はないのかしら?」

「ないですねえ」

 笑顔であっさりと答えられて、ライラは顔を引きつらせる。

「まったく、さっきから何なの? 私を怒らせたいってことだけはわかるけれど、それで何をさせたいわけ?」

 ライラがそう尋ねると、マスターは鼻で笑って腕を組んだ。

「単純に今のあなたの実力が知りたかっただけです。怒らせたほうが力を発揮してくださると思いました」

「そう、それは残念ね。私は簡単に取り乱したりしませんわ」

 ライラが正面からマスターをぎっと睨みつけると、彼は両手を上げて降参の意思を示した。

「あなたのことが知りたいのは本当ですが、それよりもあなたには是非イルシア君の実力を見ていただきたいのです」

「…………イルシア君の実力を私が見るの? これって冒険者登録試験でしょう。逆じゃないかしら?」

 ライラは胡散臭そうにマスターを見る。
 すると、彼は今さら真面目な顔をして話だした。

「あなたには、イルシア君の指導をお任せしたいのです」

「……指導って、それはまたどうしてそんなことをおっしゃるのかしら。彼には彼の師匠がいるはずでしょう?」

 精霊の見える者は、そうとわかると精霊術師の元へ修行に行く。
 精霊術師の多くは幼いころから師匠の指導を受け、十代の中頃には独り立ちをするのだ。
 イルシアはファルから聞いた話だと16、7歳だろう。師匠からの指導を終えて独り立ちをしているはずだ。

「イルシア君の精霊術は独学なのです。今まで誰かの指導を受けたことはありません」

「――っえ、独学⁉」

 ライラはマスターに聞いたことが信じられず、おもわずイルシアを見た。

「なあ、いつまで二人で話しこんでんだよ! 早く戦おうぜえ」

 イルシアにはこちらの話が聞こえないらしい。
 待ちくたびれて不貞腐れた顔をしている。ライラと視線が合うと拗ねたように唇を尖らせた。
しおりを挟む
感想 248

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...