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鍛冶屋
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しばらくすると、ようやく店の奥は静かになった。
それからすぐに、イルシアと体格のよい男性が揃ってカウンターの中に姿を見せる。
「待たせたな。このおっさんがこの店の主のマディスだよ」
イルシアが不機嫌そうにしているマディスの背中を強く叩きながら言った。イルシアの顔は怒りで真っ赤に染まっている。
現れた店主のマディスは、そんなイルシアを横にしても何一つ悪いと思っていない様子で堂々としていた。
「はいはい、すみませんね。作業に集中しちしまうとつい声が聞こえなくてよ」
マディスはカウンターの中にある椅子にどっかりと腰かけた。彼はカウンターに肘をついて、口を引き結んだままのライラをじっと見つめてくる。
すると、ライラと共に一連の流れを見ていただけのファルが、手にしていた杖で突然マディスの頭を勢いよく叩きつけた。
「――っもう! お父さんってば、お待たせしてしまったのだからもう少し愛想よくしてよ」
「え、お父さんなの?」
鈍い音と同時に、ファルの言葉が耳に届いたライラは驚きで思わず声が出た。
「――おいこら! お前こそ父親の頭を杖で叩くんじゃねえ」
「叩かれたくなかったらちゃんとしてってば! お父さんっていつもそう‼」
頭を叩かれたマディスは即座に杖を頭の上から払い落としてファルを怒鳴る。すると、負けずにファルも怒鳴り返した。
そこからマディスとファルが客であるライラを放置して親子喧嘩を始めてしまう。
「……えーと、どうしたらいいの?」
どんどん二人の言い争いは白熱していく。
何やら普段からの互いの鬱憤を言い合っているらしいが、ライラは展開についていけない。そんなライラとは違い、イルシアは二人の喧嘩など慣れたものなのか何食わぬ顔をしていた。
「おい! 客の前でいつまでも親子喧嘩なんかしてんじゃねえぞ。みっともねえ!」
イルシアが大きく息を吸ってから声を張り上げた。その声でマディスとファルは揃ってピタリと口を閉じた。
マディスは罰が悪そうにカウンターに肘をついてそっぽを向いてしまう。しかし、ファルの方はすぐにライラに向かって頭を下げてきた。
「……ごめんなさい、ライラさん」
「い、いいのよー。あなた方が親子ってことには少し驚いたけれど……。ほら、喧嘩するほど仲が良いって言うじゃない?」
ファルがあまりにも申し訳なさそうにしているので、ライラはできる限り優しい声色を出して微笑んだ。
「だから、ね? 仲が良いのはいいことだもの。顔を上げてちょうだいな」
ライラは膝に手を置いて屈みながらファルの顔を覗き込む。ファルはすぐに顔をあげたのだが、ライラと視線が合うと頬を赤くしてまた俯いてしまう。
「んんー? どうしてまた俯いちゃうのかな。本当に気にしていないからね」
ファルがライラに対していつまでも頭を下げ続けているので、イルシアの表情がどんどん険しくなっていく。
面倒だからこれ以上誰かが怒鳴りだす前にさっさと本題に入りたいな、とライラが考えていると、ファルがようやく頭をあげた。
しかし、ファルはなぜかもぞもぞと身体を動かして照れ臭そうにしている。
「あの、えっと……。と、ところでライラさんは、どういったご用件でうちにいらしたのですか?」
どうもこうも、鍛冶屋に来たらすることなど限られているだろうし、さっきイルシアから同様の質問をされて答えを返したばかりなのだが、とライラはつい言い返したくなってしまう。
そんな胸の内を隠して、ライラは微笑みを浮かべ続けた。
鍛冶屋の娘なら冒険者組合で会った時に紹介してくれたらよかったのに、とも思ったがそんなことは今さら言っても仕方がない。
「武具が一式欲しいのだけど、見繕って頂けないかしら?」
それからすぐに、イルシアと体格のよい男性が揃ってカウンターの中に姿を見せる。
「待たせたな。このおっさんがこの店の主のマディスだよ」
イルシアが不機嫌そうにしているマディスの背中を強く叩きながら言った。イルシアの顔は怒りで真っ赤に染まっている。
現れた店主のマディスは、そんなイルシアを横にしても何一つ悪いと思っていない様子で堂々としていた。
「はいはい、すみませんね。作業に集中しちしまうとつい声が聞こえなくてよ」
マディスはカウンターの中にある椅子にどっかりと腰かけた。彼はカウンターに肘をついて、口を引き結んだままのライラをじっと見つめてくる。
すると、ライラと共に一連の流れを見ていただけのファルが、手にしていた杖で突然マディスの頭を勢いよく叩きつけた。
「――っもう! お父さんってば、お待たせしてしまったのだからもう少し愛想よくしてよ」
「え、お父さんなの?」
鈍い音と同時に、ファルの言葉が耳に届いたライラは驚きで思わず声が出た。
「――おいこら! お前こそ父親の頭を杖で叩くんじゃねえ」
「叩かれたくなかったらちゃんとしてってば! お父さんっていつもそう‼」
頭を叩かれたマディスは即座に杖を頭の上から払い落としてファルを怒鳴る。すると、負けずにファルも怒鳴り返した。
そこからマディスとファルが客であるライラを放置して親子喧嘩を始めてしまう。
「……えーと、どうしたらいいの?」
どんどん二人の言い争いは白熱していく。
何やら普段からの互いの鬱憤を言い合っているらしいが、ライラは展開についていけない。そんなライラとは違い、イルシアは二人の喧嘩など慣れたものなのか何食わぬ顔をしていた。
「おい! 客の前でいつまでも親子喧嘩なんかしてんじゃねえぞ。みっともねえ!」
イルシアが大きく息を吸ってから声を張り上げた。その声でマディスとファルは揃ってピタリと口を閉じた。
マディスは罰が悪そうにカウンターに肘をついてそっぽを向いてしまう。しかし、ファルの方はすぐにライラに向かって頭を下げてきた。
「……ごめんなさい、ライラさん」
「い、いいのよー。あなた方が親子ってことには少し驚いたけれど……。ほら、喧嘩するほど仲が良いって言うじゃない?」
ファルがあまりにも申し訳なさそうにしているので、ライラはできる限り優しい声色を出して微笑んだ。
「だから、ね? 仲が良いのはいいことだもの。顔を上げてちょうだいな」
ライラは膝に手を置いて屈みながらファルの顔を覗き込む。ファルはすぐに顔をあげたのだが、ライラと視線が合うと頬を赤くしてまた俯いてしまう。
「んんー? どうしてまた俯いちゃうのかな。本当に気にしていないからね」
ファルがライラに対していつまでも頭を下げ続けているので、イルシアの表情がどんどん険しくなっていく。
面倒だからこれ以上誰かが怒鳴りだす前にさっさと本題に入りたいな、とライラが考えていると、ファルがようやく頭をあげた。
しかし、ファルはなぜかもぞもぞと身体を動かして照れ臭そうにしている。
「あの、えっと……。と、ところでライラさんは、どういったご用件でうちにいらしたのですか?」
どうもこうも、鍛冶屋に来たらすることなど限られているだろうし、さっきイルシアから同様の質問をされて答えを返したばかりなのだが、とライラはつい言い返したくなってしまう。
そんな胸の内を隠して、ライラは微笑みを浮かべ続けた。
鍛冶屋の娘なら冒険者組合で会った時に紹介してくれたらよかったのに、とも思ったがそんなことは今さら言っても仕方がない。
「武具が一式欲しいのだけど、見繕って頂けないかしら?」
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