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問題発生
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――瘴気は浄化された。
黒い霧の中から現れたのは、立派な蹄の足を持つ馬のような見た目のモンスターだった。
するどく尖った一本の角を額に生やし、長い鬣が風に揺れている。
美しいまだら模様の毛並みを持つその姿は、そこらのモンスターとはくらべものにならないほど雄々しい姿をしていた。
そのモンスターの身体が、瘴気の消失と共にゆっくりと地面に倒れ込んだ。
どすんと鈍い音が周囲に響く。
「……イルシア君、とどめを刺してあげてくれるかな?」
「――っえ、なんで俺が?」
モンスターは地面に倒れると、呻き声をあげながら周囲を這いずりまわっている。
瘴気は精神だけではなく、生き物の細胞そのものを破壊してしまう。
たとえ瘴気が消失したとしても、激しい痛みが身体を襲う。
たいていの瘴気に侵された生き物は、瘴気が浄化されてしまうと姿そのものが保てなくなる。
瘴気の消失と同時に、身体が砂のように崩れ落ちて消えてしまうのだ。
しかし、このモンスターは痛みに苦しんでいるとはいえ元の姿を保っている。
あれだけの瘴気に侵されながら、身体を維持し続ける力と強い意思を持っている証だ。
このモンスターは瘴気の力がなくても強い個体だということがわかる。
初めて瘴気の浄化に立ち会った個体がこのモンスターというのは、イルシアは強運の持ち主だ。
こんな経験はなかなかできるものではない。
「このモンスターの姿をしっかりと胸に刻んでおいたほうがいいと思うの」
「……わかったよ。俺がやればいいんだろ!」
イルシアの持つ槍がさっと炎に包まれる。彼はその槍で地面を這っていたモンスターの首を切り落とした。
首が弾け飛び、地面に落ちて転がっていく。
頭と切り離された胴体は、すぐにひび割れて砂のように崩れ落ちて消えてしまった。
「こ、これで終わった、のか?」
「はい、よくできました」
ライラは手を叩いて笑顔を浮かべた。乾いた音と同時に憑依を解除する。
髪と目が元の色にすっと戻った。力を貸してくれた精霊はすぐにこの場から立ち去ってしまう。
「まじか、本当に倒しちまうなんて」
「あんなモンスター相手に怯まないなんてすっげえな!」
結界の中に避難していた者たちが歓声を上げる。
結界からすぐに数人が飛び出してきてイルシアに近付いた。彼らは一斉にイルシアを褒め称えはじめる。
「べ、別にたいしたことじゃねえし。つか、瘴気の浄化をしたのはあっちだし……」
「それでも、ほとんどモンスターの相手をしていたのはお前だろう?」
「そうだぜ。お前ってすげえ強いのな」
イルシアは皆の反応に最初こそ戸惑っていたが、次第にまんざらでもなさそうに笑い出した。
ライラは肩に腕を回したりしながら楽しそうにはしゃいでいる若者たちの様子を黙って眺めていた。
無事に事態をおさめられたと安心して大きく深呼吸した。
すっかり油断していた。
地面に転げ落ちていたモンスターの首が動き出していたことに気が付くのが遅れた。
「――っみんな危ない‼」
首が大きく飛び跳ねてイルシアの周囲に集まっていた者たちの元へ向かっていく。
ライラは叫んだが、皆すっかり油断していてすぐに反応できなかった。
ライラはとっさにモンスターの首の前に飛び込んだ。
呼び出していた精霊はすでにいない。
慌ててもう一度呼びだそうとする。
その瞬間、ライラの視界がぐにゃりと歪んだ。
目の前が暗くなって身体のバランスを崩す。地面に膝をついたライラの目の前に、大きく口をあけたモンスターが迫る。
黒い霧の中から現れたのは、立派な蹄の足を持つ馬のような見た目のモンスターだった。
するどく尖った一本の角を額に生やし、長い鬣が風に揺れている。
美しいまだら模様の毛並みを持つその姿は、そこらのモンスターとはくらべものにならないほど雄々しい姿をしていた。
そのモンスターの身体が、瘴気の消失と共にゆっくりと地面に倒れ込んだ。
どすんと鈍い音が周囲に響く。
「……イルシア君、とどめを刺してあげてくれるかな?」
「――っえ、なんで俺が?」
モンスターは地面に倒れると、呻き声をあげながら周囲を這いずりまわっている。
瘴気は精神だけではなく、生き物の細胞そのものを破壊してしまう。
たとえ瘴気が消失したとしても、激しい痛みが身体を襲う。
たいていの瘴気に侵された生き物は、瘴気が浄化されてしまうと姿そのものが保てなくなる。
瘴気の消失と同時に、身体が砂のように崩れ落ちて消えてしまうのだ。
しかし、このモンスターは痛みに苦しんでいるとはいえ元の姿を保っている。
あれだけの瘴気に侵されながら、身体を維持し続ける力と強い意思を持っている証だ。
このモンスターは瘴気の力がなくても強い個体だということがわかる。
初めて瘴気の浄化に立ち会った個体がこのモンスターというのは、イルシアは強運の持ち主だ。
こんな経験はなかなかできるものではない。
「このモンスターの姿をしっかりと胸に刻んでおいたほうがいいと思うの」
「……わかったよ。俺がやればいいんだろ!」
イルシアの持つ槍がさっと炎に包まれる。彼はその槍で地面を這っていたモンスターの首を切り落とした。
首が弾け飛び、地面に落ちて転がっていく。
頭と切り離された胴体は、すぐにひび割れて砂のように崩れ落ちて消えてしまった。
「こ、これで終わった、のか?」
「はい、よくできました」
ライラは手を叩いて笑顔を浮かべた。乾いた音と同時に憑依を解除する。
髪と目が元の色にすっと戻った。力を貸してくれた精霊はすぐにこの場から立ち去ってしまう。
「まじか、本当に倒しちまうなんて」
「あんなモンスター相手に怯まないなんてすっげえな!」
結界の中に避難していた者たちが歓声を上げる。
結界からすぐに数人が飛び出してきてイルシアに近付いた。彼らは一斉にイルシアを褒め称えはじめる。
「べ、別にたいしたことじゃねえし。つか、瘴気の浄化をしたのはあっちだし……」
「それでも、ほとんどモンスターの相手をしていたのはお前だろう?」
「そうだぜ。お前ってすげえ強いのな」
イルシアは皆の反応に最初こそ戸惑っていたが、次第にまんざらでもなさそうに笑い出した。
ライラは肩に腕を回したりしながら楽しそうにはしゃいでいる若者たちの様子を黙って眺めていた。
無事に事態をおさめられたと安心して大きく深呼吸した。
すっかり油断していた。
地面に転げ落ちていたモンスターの首が動き出していたことに気が付くのが遅れた。
「――っみんな危ない‼」
首が大きく飛び跳ねてイルシアの周囲に集まっていた者たちの元へ向かっていく。
ライラは叫んだが、皆すっかり油断していてすぐに反応できなかった。
ライラはとっさにモンスターの首の前に飛び込んだ。
呼び出していた精霊はすでにいない。
慌ててもう一度呼びだそうとする。
その瞬間、ライラの視界がぐにゃりと歪んだ。
目の前が暗くなって身体のバランスを崩す。地面に膝をついたライラの目の前に、大きく口をあけたモンスターが迫る。
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