離婚したので冒険者に復帰しようと思います。

黒蜜きな粉

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その後

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「失礼いたします。ライラさんたちをお連れしました」

 受付嬢が扉を叩きながら、部屋の中にいる者に声をかける。
 中からは複数人の気配がするが、誰も声かけに反応しない。

「……失礼します。マスター?」

 受付嬢が扉を叩きながら、もういちど声をかける。
 すると、扉が勢いよくがちゃりと開いた。

「――おっと、これは失礼しました」

 中から冒険者とは思えない小奇麗な服装の若い男が飛びだしてきた。
 男は受付嬢に一言だけ詫びを伝えると、忙しそうにさっさとどこかへ行ってしまう。

「おや、ようやくお目覚めになったようですね。どうぞ中に入ってください」

「まあ、よろしいのかしら……。来客中のようですけれど?」

 開いたままの扉の向こうから、マスターが声をかけてくる。
 室内にはマスターの他に別の人物がもう一人いる。

「構わないのですよ。今日はあなたに彼を紹介したくて呼んだのですから」

 マスターにそう言われて、ライラは窓際に佇む男に視線を向けた。
 男はこの国の常備軍の軍服を身に着け、襟には佐官の階級章をつけている。
 元夫を思い出させるような男の服装に、ライラはほんの少し気分が悪くなった。

「……さっき部屋を出て行ったのは役人でしょう? 軍人と役人をこんなところに呼びつけるなんて、嫌な予感しかしないわ」

 ライラはマスターに呼びだされた理由が昨日のモンスターの件だと思っていた。
 どうやらそう単純な話でもなさそうだと気が付いてため息をつく。

「まあ、立ったままなのは疲れてしまいますから。どうぞ座ってください」

 部屋の入り口で立ったままのライラたちに向かって、マスターが部屋の中央にあるソファに座るように促してくる。
 ライラが動き出すより先に、イルシアがさっさとソファに向かった。それに続いてファルもソファに座る。

「君らも早く座ったらどうだい?」
 
 マスターは窓際にいる軍服の男にも着席するように促す。しかし、男は黙って首を横に振った。
 マスターは男の態度に肩をすくめると、まだ立ったままのライラに視線を送ってきた。
 ライラは扉を閉めて部屋の中に入ると、真っすぐにソファに向かった。

「この男はこの街に駐在している者で、以前は私の部下だったのですよ」

 ライラがソファに座ると、マスターが立ったままの軍服の男を横目で見ながらそう言った。
 この発言にライラはうんざりとした顔をする。

「……つまり、あなたも軍人だったわけね」

「おや、まだ私のことを思い出してはいないのですね。それは残念ですね」

「そういうのはいいから。要件だけさっさと言ってくれるかしら?」

 ライラはソファの背もたれに身体を預けて足を組む。
 ライラのマスターに対する態度に、隣に座っているファルがはらはらした様子でこちらをうかがってくる。
 ファルには悪いが、マスターに対する態度を今すぐに改める気はない。
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