離婚したので冒険者に復帰しようと思います。

黒蜜きな粉

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その後

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「そんなに落ち込まないでくださいよ。私が話をつけたからこそ、あいつはとりあえず引きさがることにしたのだと思いますよ」

「……ええ、そうでしょうとも。あなたの立場からお願いしたらそうなるでしょうけれどね」

 深くため息をついてライラは顔を上げた。
 視界に入ったマスターが、やってられないといった態度で頭を横に振っている。
 痴話げんかに巻き込まれたとでも言いたげで腹が立った。

「……ライラさん? だ、大丈夫ですか?」

「……驚かせちゃってごめんね。大丈夫だから心配しないで」

 床にへたりこんだライラを心配そうに見つめながら、ファルが声をかけてきた。
 ファルにこれ以上気を遣わせるのはまずいと思い、ライラはソファに座りなおして彼女に微笑みかけた。
 とはいえ、これからも元旦那に追いかけまわされるのかと思うと気が重い。

「そんなに元旦那のことを気にするのかよ。もう別れたんだから関係ねえじゃん。いちいち落ち込むなよな」

 イルシアが不機嫌そうな顔をしてそう言った。
 ライラはイルシアにこの街へやって来たいきさつを話していない。彼があっさりとライラの離婚について触れたので、おもわず彼の両肩に手を置いて詰め寄ってしまった。

「――ちょっと待ってイルシア君。どうして私が離婚したことを知っているのかしら?」

「っおい、いきなりなんだよ。どうしてって、おっさんとファルがいろいろ言っていたのを聞いていたからで……」

「ちょっとイル! いまそれは言わなくていいからあああ!」

 イルシアがきょとんとした顔で答えていると、ファルが慌てて立ち上がって彼の口を塞いだ。
 今の一連の流れで、イルシアだけではなく、マディスとファルにもライラの事情を知られていたのだとわかった。

「元ミスリルランクで女性の精霊術師とくれば、わかる方はすぐにピンときますよ。なにせ侯爵家の跡取りと平民の冒険者の結婚ですよ。当時は国中で話題になりましたからねえ」

 マスターがくすくすと笑いながら話しだす。その横で軍服の男が気まずそうな顔をしていた。

「それがこんなやつれた姿で辺境に現れれば色々と勘ぐりますよ。あいつの近年の放蕩ぶりは一部では有名でしたしね」

「……あの、あまりそういうデリケートなことをご本人の前でおっしゃるのはいかがなものかと……」

 軍服の男が苦笑いを浮かべながらマスターに声をかけている。
 皆の様子を見ていてライラは居た堪れなくなってきた。

「もういいわ! こんな話をするために呼んだわけじゃないでしょう?」

 ライラは顔を赤くしながら叫んだ。ソファから立ちあがって部屋の外に出て行こうとする。
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