86 / 151
ランクアップ
11
しおりを挟む
ライラは冒険者組合を出てすぐに、ファルにエリクと何を話していたのかと聞いてみた。
しかし、ファルは適当にはぐらかすだけで何も教えてはくれなかった。
ライラはもやもやした気持ちを抱えたまま、ランクアップ祝いをしてくれるという店に到着してしまった。
会場は温めておくとハチが言っていた通り、店の中はすでにかなりの盛り上がりをみせていた。
遅れてやって来たというのに、ライラはあっさりと輪の中に溶けこむことができた。
しっかりと他の冒険者たちと会話を交わし、もやもやしていた気持ちを忘れてしまうほど場を楽しんだ。
日付が変わる頃になると、盛り上がっていた者たちが酔いつぶれて寝はじめてしまった。
徐々に店内の喧騒が静まりかえっていく。
ライラが酔いつぶれてしまった者を店の個室に運んで寝かせているところに、ハチが近付いてきた。
「姉さん姉さん。落ち着いてきたから、ちょっとお話よろしいですか?」
「……あら、何かしら。すっごく真面目な顔をしちゃって。その顔からするとあまり良い話じゃなさそうね」
「あはははは、そうなんですよー」
ハチは真剣な顔つきをしている。
彼は周囲の視線を気にしながら、個室の扉を閉めた。
「……姉さんなら心配ないとは思うのですけど。やっぱりどうしてもお耳に入れておきたいと……」
「あら嫌だ。今日はお耳に入れておきたいお話がたくさんあるわね」
ライラがそう言って嫌な顔をすると、ハチは目を丸くして首を傾げる。マスターから聞いた話をハチは知らないのだから当然だ。
「ごめんなさい、こっちの話よ。――それで、何かしら?」
「いつもの馬鹿な連中がよからぬことを企んでいるみたいです」
ハチがため息まじりにそう言った。
いつもの馬鹿な連中と聞いて、ライラはこの店に来る前に組合ロビーで絡まれたことを思い出した。
「あの口だけが達者な連中のことね。それがどうしたのかしら?」
「姉さんに一泡吹かせるって、ここ最近いろんなところで言いまわっているんです。具体的なことはわかりませんけどね」
「あら素敵。とっても面白いことを企んでいそうね」
ハチは肩をすくめて呆れた顔をしているが、ライラは口の端をあげてにやりと笑った。
「……どうしますか? そりゃ心配ないとは思いますけど、何をするつもりかくらいは調べましょうか」
「必要ないでしょう。あんな連中がやれることなんて大したことじゃないわ」
ライラはハチの申し出をすぐに断る。
すると、ハチは戸惑った顔をして腕を組んだ。
「あら嫌だ。またそんな顔をして、どうしたのよ?」
「それがですね、姉さん。あいつらがいつも気に入らない相手にやる手口って、ちょっと面倒なんですよー」
「あらまあ、面倒ってどういうこと?」
「標的を直接狙わずに、その周辺にいる人にちょっかいかけてくるんです」
ハチが大きく息を吐いた。
しかし、ファルは適当にはぐらかすだけで何も教えてはくれなかった。
ライラはもやもやした気持ちを抱えたまま、ランクアップ祝いをしてくれるという店に到着してしまった。
会場は温めておくとハチが言っていた通り、店の中はすでにかなりの盛り上がりをみせていた。
遅れてやって来たというのに、ライラはあっさりと輪の中に溶けこむことができた。
しっかりと他の冒険者たちと会話を交わし、もやもやしていた気持ちを忘れてしまうほど場を楽しんだ。
日付が変わる頃になると、盛り上がっていた者たちが酔いつぶれて寝はじめてしまった。
徐々に店内の喧騒が静まりかえっていく。
ライラが酔いつぶれてしまった者を店の個室に運んで寝かせているところに、ハチが近付いてきた。
「姉さん姉さん。落ち着いてきたから、ちょっとお話よろしいですか?」
「……あら、何かしら。すっごく真面目な顔をしちゃって。その顔からするとあまり良い話じゃなさそうね」
「あはははは、そうなんですよー」
ハチは真剣な顔つきをしている。
彼は周囲の視線を気にしながら、個室の扉を閉めた。
「……姉さんなら心配ないとは思うのですけど。やっぱりどうしてもお耳に入れておきたいと……」
「あら嫌だ。今日はお耳に入れておきたいお話がたくさんあるわね」
ライラがそう言って嫌な顔をすると、ハチは目を丸くして首を傾げる。マスターから聞いた話をハチは知らないのだから当然だ。
「ごめんなさい、こっちの話よ。――それで、何かしら?」
「いつもの馬鹿な連中がよからぬことを企んでいるみたいです」
ハチがため息まじりにそう言った。
いつもの馬鹿な連中と聞いて、ライラはこの店に来る前に組合ロビーで絡まれたことを思い出した。
「あの口だけが達者な連中のことね。それがどうしたのかしら?」
「姉さんに一泡吹かせるって、ここ最近いろんなところで言いまわっているんです。具体的なことはわかりませんけどね」
「あら素敵。とっても面白いことを企んでいそうね」
ハチは肩をすくめて呆れた顔をしているが、ライラは口の端をあげてにやりと笑った。
「……どうしますか? そりゃ心配ないとは思いますけど、何をするつもりかくらいは調べましょうか」
「必要ないでしょう。あんな連中がやれることなんて大したことじゃないわ」
ライラはハチの申し出をすぐに断る。
すると、ハチは戸惑った顔をして腕を組んだ。
「あら嫌だ。またそんな顔をして、どうしたのよ?」
「それがですね、姉さん。あいつらがいつも気に入らない相手にやる手口って、ちょっと面倒なんですよー」
「あらまあ、面倒ってどういうこと?」
「標的を直接狙わずに、その周辺にいる人にちょっかいかけてくるんです」
ハチが大きく息を吐いた。
41
あなたにおすすめの小説
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる