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行方不明
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トゥールに決意を宣言した直後、ライラはアヤを助けに行くために一人で定食屋を飛びだした。
そんなライラのあとを、エリクが慌てて追いかけてくる。
ハンカチには一人で来いと書かれていた。ライラはエリクを撒こうと全速力で走る。しかし、彼は簡単にライラに追いつくと腕を掴んできた。
「――っお一人で行かせるわけにはまいりません!」
すぐに撒けると思っていたライラは衝撃を受けた。エリクの腕を振りほどこうとするがびくともしない。
「言う通りにしないと相手がどう出るかわからないじゃない。お願いだから一人で行かせて!」
「――以前にそうしてどうなりましたか?」
エリクは厳しい口調で言った。
ライラはその言葉に衝撃を受けて固まってしまう。
「夫にも誰にも相談せず、一人で突っ走った結果どうなりました?」
ライラは何も言い返せなかった。
ライラが黙ったまま突っ立っていると、定食屋にいた二人の兵士が息を切らしながらやってきた。
エリクは兵士に向かって今起きていることをマスターに伝えるように命じた。二人はすぐに冒険者組合の方角に向かって走り出す。
「これで応援がくるはずです。お辛いとは思いますが、落ち着いて対処をしましょう」
「………ごめんなさい。冷静になったつもりでいたけど、やっぱり駄目ね」
「あなたが冷静さを欠いたら相手の思う壺です。僭越ながら私がご一緒させていただきます」
そうして、ライラはエリクと共に、再び馬に乗って森の中を駆け抜けることになった。
落ち着きを取り戻したライラが呼びだした精霊が、アヤは森の中にある湖にいると教えてくれた。
ライラはエリクと共に、真っすぐに湖へ向かう。
「今さらだけど、あのエセリンドって女が連れていた少年と冒険者たちの様子について、あなた心当たりがあるのでしょう?」
「……どうしてそう思われたのですか?」
「あなたが彼らの状態について私に意見を聞いてこないからよ。見当がついているから聞く必要がないってことじゃないのかしら?」
今度はエリクが黙りこんでしまい、なかなかライラの質問に答えようとしない。
「何か言えないことでもあるのかしら。これからまたあいつらに会うと思うから、できることなら教えて欲しいのだけれど?」
「…………言えないわけではないのです。ですが、どう話せば信じていただけるのか迷っていました」
「時間がないのだからさっさと教えて!」
ライラにアヤの居場所を教えてくれた精霊がもうすぐ湖に着くと告げて姿を消してしまう。
「おそらく今回起きている様々な事件の背後には魔族がいます」
エリクのあまりに想定外の発言に、ライラは馬鹿にされた気がして彼を睨みつけた。
魔族は何百年も前に滅んだはずだ。かつてこの世に存在した勇者が魔王を倒して以来、人類史に魔族は登場しない。
「――ふざけないで! あなたそれを本気で言っているの?」
「本気で言っています。だからこそ、どう伝えればよいのか迷っていたのです」
エリクは睨みつけてくるライラを真面目な顔で見つめ返してくる。
彼にふざけている雰囲気は一切なかった。
そんなライラのあとを、エリクが慌てて追いかけてくる。
ハンカチには一人で来いと書かれていた。ライラはエリクを撒こうと全速力で走る。しかし、彼は簡単にライラに追いつくと腕を掴んできた。
「――っお一人で行かせるわけにはまいりません!」
すぐに撒けると思っていたライラは衝撃を受けた。エリクの腕を振りほどこうとするがびくともしない。
「言う通りにしないと相手がどう出るかわからないじゃない。お願いだから一人で行かせて!」
「――以前にそうしてどうなりましたか?」
エリクは厳しい口調で言った。
ライラはその言葉に衝撃を受けて固まってしまう。
「夫にも誰にも相談せず、一人で突っ走った結果どうなりました?」
ライラは何も言い返せなかった。
ライラが黙ったまま突っ立っていると、定食屋にいた二人の兵士が息を切らしながらやってきた。
エリクは兵士に向かって今起きていることをマスターに伝えるように命じた。二人はすぐに冒険者組合の方角に向かって走り出す。
「これで応援がくるはずです。お辛いとは思いますが、落ち着いて対処をしましょう」
「………ごめんなさい。冷静になったつもりでいたけど、やっぱり駄目ね」
「あなたが冷静さを欠いたら相手の思う壺です。僭越ながら私がご一緒させていただきます」
そうして、ライラはエリクと共に、再び馬に乗って森の中を駆け抜けることになった。
落ち着きを取り戻したライラが呼びだした精霊が、アヤは森の中にある湖にいると教えてくれた。
ライラはエリクと共に、真っすぐに湖へ向かう。
「今さらだけど、あのエセリンドって女が連れていた少年と冒険者たちの様子について、あなた心当たりがあるのでしょう?」
「……どうしてそう思われたのですか?」
「あなたが彼らの状態について私に意見を聞いてこないからよ。見当がついているから聞く必要がないってことじゃないのかしら?」
今度はエリクが黙りこんでしまい、なかなかライラの質問に答えようとしない。
「何か言えないことでもあるのかしら。これからまたあいつらに会うと思うから、できることなら教えて欲しいのだけれど?」
「…………言えないわけではないのです。ですが、どう話せば信じていただけるのか迷っていました」
「時間がないのだからさっさと教えて!」
ライラにアヤの居場所を教えてくれた精霊がもうすぐ湖に着くと告げて姿を消してしまう。
「おそらく今回起きている様々な事件の背後には魔族がいます」
エリクのあまりに想定外の発言に、ライラは馬鹿にされた気がして彼を睨みつけた。
魔族は何百年も前に滅んだはずだ。かつてこの世に存在した勇者が魔王を倒して以来、人類史に魔族は登場しない。
「――ふざけないで! あなたそれを本気で言っているの?」
「本気で言っています。だからこそ、どう伝えればよいのか迷っていたのです」
エリクは睨みつけてくるライラを真面目な顔で見つめ返してくる。
彼にふざけている雰囲気は一切なかった。
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