離婚したので冒険者に復帰しようと思います。

黒蜜きな粉

文字の大きさ
99 / 151
行方不明

2

しおりを挟む
「――っえ⁉ アヤちゃんが、いないの?」

 ライラはルーディの訴えを聞いて、即座に気持ちを切り替えると真剣に問い返した。
 すると、すっかり興奮しきっているルーディの代わりに、ジークが冷静に答えてくれた。

「義兄さんがちょっと目を離した隙にいなくなったんだ。すぐに帰ってくるかと思っていたのだが、こんな時間になっても戻ってこない。もちろん皆で探してみたが見つからなくてな」

 ジークは壁にかけられている時計を見る。時刻はもうすぐ夕方の6時になるところだ。
 小さな子供が外で遊んでいるにしては遅い時間だろう。
 
「ですから、まだ日没には時間がありますし……。そろそろ腹が減って戻ってくるのではないですか?」

 ライラたちのやり取りを見ていた兵士が呆れた様子で言った。
 その言葉を聞いたルーディが怒りで震えながら声を張り上げる。

「あの子はまだ5歳だ! こんな時間まで何時間も姿が見えないなんて心配じゃないか!」

「5歳なら自分の意思で自由に遊びまわりますよ。それに、別居している母親が迎えにきたって可能性もあるのでしょう?」

 今のルーディと兵士の会話で、ライラには何が起きているのか理解できた。
 エリクも察しがついたようで、顎に手を当てて何か考え込みはじめてしまった。彼はもしかしたら行方不明事件との関連を気にしているのかもしれない。

 ――……まさか、あの冒険者連中にさらわれた?

 ライラの頭の中に先ほど森の中で見た冒険者たちのことがよぎる。
 彼らはどう考えても様子がおかしかった。しかも、行方不明事件の関係者と思われる女と一緒にいたのだ。

「ねえルーディ。お義姉ねえさんは別居のときアヤちゃんのことを引き取りたいとは言ってなかったの?」

「私は人生をやり直したいからアヤの親権はいらないって、はっきりと言っていたよ。それに義姉ねえさんのところには行ったけど、いないって追い返されてしまったさ。心配なんてしていなかったね」

「…………そうだったの。身勝手な人ね」

 ライラのそばでルーディの言い分を聞いていたエリクは、兵士に淡々と声をかけた。

「遊んでいるだけならさすがに街の外には行っていないだろう。お前たちも周辺を探してみたのか?」

「もちろん探しましたが見つかりませんでした。やはり母親と一緒にいるのではないでしょうか。取り返されたくなくて嘘をついているのでは?」

 兵士は事件と確定していなければ、軍として今はこれ以上のことをできないと言う。家族間のトラブルだと思っているのだ。
 兵士の言っていることは理解できる。しかし、ライラはどうにも気持ちが落ち着かなかった。

「私が精霊を呼びだしてアヤちゃんを探してみる。今日いなくなったばかりだから痕跡が残っているだろうし、探しやすいと思うわ」

 ライラはそう声をあげた。
 ルーディとジークが目を輝かせる。エリクは顎に当てていた手を下ろした。

「そうして頂けると助かります。私もできるだけご協力いたします」

「すぐに取りかかるわ。皆さまとお会いするのは後回しでもいいかしら?」

「もちろんです。皆さまご理解していただけるはずですから」

 ライラがエリクと話をしていると、店の奥から弱々しい声が聞こえてきた。

「……あ、そういえば……これ」

 声の方角に視線を向けるとそこにいたのはトゥールだった。彼は店内の一番奥の席でぽつんと座り込んでいる。
 彼は顔色が悪くすっかり意気消沈している。

「……さっき店の前で拾ったんだ。探すのに使えるか?」

 トゥールはそう言って目の前のテーブルの上に何かを置いた。
しおりを挟む
感想 248

あなたにおすすめの小説

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。 その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。 本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。 リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。 しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。 なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。 竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~

紅月シン
ファンタジー
 聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。  いや嘘だ。  本当は不満でいっぱいだった。  食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。  だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。  しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。  そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。  二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。  だが彼女は知らなかった。  三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。  知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。 ※完結しました。 ※小説家になろう様にも投稿しています

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...