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行方不明
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「――っえ⁉ アヤちゃんが、いないの?」
ライラはルーディの訴えを聞いて、即座に気持ちを切り替えると真剣に問い返した。
すると、すっかり興奮しきっているルーディの代わりに、ジークが冷静に答えてくれた。
「義兄さんがちょっと目を離した隙にいなくなったんだ。すぐに帰ってくるかと思っていたのだが、こんな時間になっても戻ってこない。もちろん皆で探してみたが見つからなくてな」
ジークは壁にかけられている時計を見る。時刻はもうすぐ夕方の6時になるところだ。
小さな子供が外で遊んでいるにしては遅い時間だろう。
「ですから、まだ日没には時間がありますし……。そろそろ腹が減って戻ってくるのではないですか?」
ライラたちのやり取りを見ていた兵士が呆れた様子で言った。
その言葉を聞いたルーディが怒りで震えながら声を張り上げる。
「あの子はまだ5歳だ! こんな時間まで何時間も姿が見えないなんて心配じゃないか!」
「5歳なら自分の意思で自由に遊びまわりますよ。それに、別居している母親が迎えにきたって可能性もあるのでしょう?」
今のルーディと兵士の会話で、ライラには何が起きているのか理解できた。
エリクも察しがついたようで、顎に手を当てて何か考え込みはじめてしまった。彼はもしかしたら行方不明事件との関連を気にしているのかもしれない。
――……まさか、あの冒険者連中にさらわれた?
ライラの頭の中に先ほど森の中で見た冒険者たちのことがよぎる。
彼らはどう考えても様子がおかしかった。しかも、行方不明事件の関係者と思われる女と一緒にいたのだ。
「ねえルーディ。お義姉さんは別居のときアヤちゃんのことを引き取りたいとは言ってなかったの?」
「私は人生をやり直したいからアヤの親権はいらないって、はっきりと言っていたよ。それに義姉さんのところには行ったけど、いないって追い返されてしまったさ。心配なんてしていなかったね」
「…………そうだったの。身勝手な人ね」
ライラのそばでルーディの言い分を聞いていたエリクは、兵士に淡々と声をかけた。
「遊んでいるだけならさすがに街の外には行っていないだろう。お前たちも周辺を探してみたのか?」
「もちろん探しましたが見つかりませんでした。やはり母親と一緒にいるのではないでしょうか。取り返されたくなくて嘘をついているのでは?」
兵士は事件と確定していなければ、軍として今はこれ以上のことをできないと言う。家族間のトラブルだと思っているのだ。
兵士の言っていることは理解できる。しかし、ライラはどうにも気持ちが落ち着かなかった。
「私が精霊を呼びだしてアヤちゃんを探してみる。今日いなくなったばかりだから痕跡が残っているだろうし、探しやすいと思うわ」
ライラはそう声をあげた。
ルーディとジークが目を輝かせる。エリクは顎に当てていた手を下ろした。
「そうして頂けると助かります。私もできるだけご協力いたします」
「すぐに取りかかるわ。皆さまとお会いするのは後回しでもいいかしら?」
「もちろんです。皆さまご理解していただけるはずですから」
ライラがエリクと話をしていると、店の奥から弱々しい声が聞こえてきた。
「……あ、そういえば……これ」
声の方角に視線を向けるとそこにいたのはトゥールだった。彼は店内の一番奥の席でぽつんと座り込んでいる。
彼は顔色が悪くすっかり意気消沈している。
「……さっき店の前で拾ったんだ。探すのに使えるか?」
トゥールはそう言って目の前のテーブルの上に何かを置いた。
ライラはルーディの訴えを聞いて、即座に気持ちを切り替えると真剣に問い返した。
すると、すっかり興奮しきっているルーディの代わりに、ジークが冷静に答えてくれた。
「義兄さんがちょっと目を離した隙にいなくなったんだ。すぐに帰ってくるかと思っていたのだが、こんな時間になっても戻ってこない。もちろん皆で探してみたが見つからなくてな」
ジークは壁にかけられている時計を見る。時刻はもうすぐ夕方の6時になるところだ。
小さな子供が外で遊んでいるにしては遅い時間だろう。
「ですから、まだ日没には時間がありますし……。そろそろ腹が減って戻ってくるのではないですか?」
ライラたちのやり取りを見ていた兵士が呆れた様子で言った。
その言葉を聞いたルーディが怒りで震えながら声を張り上げる。
「あの子はまだ5歳だ! こんな時間まで何時間も姿が見えないなんて心配じゃないか!」
「5歳なら自分の意思で自由に遊びまわりますよ。それに、別居している母親が迎えにきたって可能性もあるのでしょう?」
今のルーディと兵士の会話で、ライラには何が起きているのか理解できた。
エリクも察しがついたようで、顎に手を当てて何か考え込みはじめてしまった。彼はもしかしたら行方不明事件との関連を気にしているのかもしれない。
――……まさか、あの冒険者連中にさらわれた?
ライラの頭の中に先ほど森の中で見た冒険者たちのことがよぎる。
彼らはどう考えても様子がおかしかった。しかも、行方不明事件の関係者と思われる女と一緒にいたのだ。
「ねえルーディ。お義姉さんは別居のときアヤちゃんのことを引き取りたいとは言ってなかったの?」
「私は人生をやり直したいからアヤの親権はいらないって、はっきりと言っていたよ。それに義姉さんのところには行ったけど、いないって追い返されてしまったさ。心配なんてしていなかったね」
「…………そうだったの。身勝手な人ね」
ライラのそばでルーディの言い分を聞いていたエリクは、兵士に淡々と声をかけた。
「遊んでいるだけならさすがに街の外には行っていないだろう。お前たちも周辺を探してみたのか?」
「もちろん探しましたが見つかりませんでした。やはり母親と一緒にいるのではないでしょうか。取り返されたくなくて嘘をついているのでは?」
兵士は事件と確定していなければ、軍として今はこれ以上のことをできないと言う。家族間のトラブルだと思っているのだ。
兵士の言っていることは理解できる。しかし、ライラはどうにも気持ちが落ち着かなかった。
「私が精霊を呼びだしてアヤちゃんを探してみる。今日いなくなったばかりだから痕跡が残っているだろうし、探しやすいと思うわ」
ライラはそう声をあげた。
ルーディとジークが目を輝かせる。エリクは顎に当てていた手を下ろした。
「そうして頂けると助かります。私もできるだけご協力いたします」
「すぐに取りかかるわ。皆さまとお会いするのは後回しでもいいかしら?」
「もちろんです。皆さまご理解していただけるはずですから」
ライラがエリクと話をしていると、店の奥から弱々しい声が聞こえてきた。
「……あ、そういえば……これ」
声の方角に視線を向けるとそこにいたのはトゥールだった。彼は店内の一番奥の席でぽつんと座り込んでいる。
彼は顔色が悪くすっかり意気消沈している。
「……さっき店の前で拾ったんだ。探すのに使えるか?」
トゥールはそう言って目の前のテーブルの上に何かを置いた。
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