116 / 151
魔族
6
しおりを挟む
――目を離したのは、本当に少しだけだったのに……。
そのほんのわずかな時間を、これほど後悔することになるとは思わなかった。
なるべく自分の手で育てたかった。
自分が親の愛情に飢えて育ったから、我が子にはそうなって欲しくないと思った。それだけだった。
周囲は乳母に任せるべきだと言っていたけれど、どうしても子育てには自分が関わりたかった。
意地になっていたと思う。
乳母には頼らないと宣言した手前、許容量を超えているとは言い出しにくかった。
ただでさえ貴族としての生活に慣れなくて戸惑うことが多かったのに、そこへ子育てが加われば疲れるのなんて当たり前だった。
反省することはたくさんある。後悔してもしきれない。
「正確には殺していないよ。僕はね、そうしてみたらって提案しただけだから」
「……そう。それはね、殺したっていうのと同じなのよ」
そう口にした途端、周囲の消えかかっていた瘴気がぶわりと舞い上がってライラの周囲に集まってきた。
そのまま瘴気の渦がライラの身体を包み込もうとする。
ライラは慌てて瘴気が身体に触れないように振り払おうとする。
しかし、振り払おうとすればするほど、余計に身体にまとわりついてくる。
まるで、蜘蛛の糸が絡みついてくるようだった。
「それはね、負の感情に反応するんだよ。それだけ、憎い、殺してやるって物騒なことを考えていたら、そりゃまとわりついて離れないよねえ」
「――っ、くそ! 何よこれ、離れない!」
あっという間に目の前が真っ暗になった。
それと同時に、心の底からどす黒い感情が溢れてくる。
「……僕が君に要求することは一つだけだ。僕はね、君に壊れて欲しいんだよ……」
暗闇の中、どこからともなく少女の囁き声が聞こえた。
そのほんのわずかな時間を、これほど後悔することになるとは思わなかった。
なるべく自分の手で育てたかった。
自分が親の愛情に飢えて育ったから、我が子にはそうなって欲しくないと思った。それだけだった。
周囲は乳母に任せるべきだと言っていたけれど、どうしても子育てには自分が関わりたかった。
意地になっていたと思う。
乳母には頼らないと宣言した手前、許容量を超えているとは言い出しにくかった。
ただでさえ貴族としての生活に慣れなくて戸惑うことが多かったのに、そこへ子育てが加われば疲れるのなんて当たり前だった。
反省することはたくさんある。後悔してもしきれない。
「正確には殺していないよ。僕はね、そうしてみたらって提案しただけだから」
「……そう。それはね、殺したっていうのと同じなのよ」
そう口にした途端、周囲の消えかかっていた瘴気がぶわりと舞い上がってライラの周囲に集まってきた。
そのまま瘴気の渦がライラの身体を包み込もうとする。
ライラは慌てて瘴気が身体に触れないように振り払おうとする。
しかし、振り払おうとすればするほど、余計に身体にまとわりついてくる。
まるで、蜘蛛の糸が絡みついてくるようだった。
「それはね、負の感情に反応するんだよ。それだけ、憎い、殺してやるって物騒なことを考えていたら、そりゃまとわりついて離れないよねえ」
「――っ、くそ! 何よこれ、離れない!」
あっという間に目の前が真っ暗になった。
それと同時に、心の底からどす黒い感情が溢れてくる。
「……僕が君に要求することは一つだけだ。僕はね、君に壊れて欲しいんだよ……」
暗闇の中、どこからともなく少女の囁き声が聞こえた。
29
あなたにおすすめの小説
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活
アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。
妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。
貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。
しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。
小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。
BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。
辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん??
私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる