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医療には高額の金がかかる。
医薬品は貴重な品だ。どこの領地に行っても不足している。
ましてやここ辺境伯領では隣国との小競り合いのせいで、多くの怪我人を常に抱えている。入荷してくる医薬品のほとんどは軍にまわされ、民間の診療所に卸される量は極端に少ない。
医療魔術を使える魔術師にいたっては存在自体が稀なので、たいていは軍か有力者のお抱えだ。その恩恵を民が受けることはない。
魔術師が足りていないと伝えても、せいぜい医薬品を安く提供してくれる程度かと思っていた。
「どうせ出し渋ると思って大げさに書いたのに、あっさりと差し出してくださったのよね」
「さすがにソフィア様に対して悪いことをしたと思っていらっしゃるのでは?」
「あのお父さまが? そうだったら嬉しいけれど、さすがにこれは辺境伯家に対しての詫びだと思うわよ」
隣国との国境で日々争いが起きております。常に怪我人が沢山いるというのに、この地では医師はおろか医薬品すらまったく足りておりません。医療魔術師などいないも同然です。助けてお父さま! と、ソフィアは大げさに書き連ねた手紙を父へ送った。
仰々しく書けばどれか一つくらい要望が通ると計算してのことだった。まさか手紙に書いた要望が全て通るとは思いもしなかった。
「今日の診療はいまの方で最後です」
「ありがとうエイナル。いつも悪いわね」
ルイースと話しこんでいたソフィアに、一人の男が声をかけてきた。
「いいえー、ソフィアお嬢さまの頼みですから。これくらいは苦ではありませんよ」
「そう言って貰えてありがたいわ。報告書は後でいいから休憩してちょうだいな」
「ぶっちゃけ臨床試験がしたいだけですからねえ。んじゃお言葉に甘えて少し横になってきます」
「まったく、身も蓋もない言い方ねえ」
ソフィアが溜息まじりに言うと、声をかけてきた男、エイナルが笑った。
エイナルは父の弟子の一人だ。彼はソフィアと同じく医療系の魔術が使える魔術師で、兄弟弟子という間柄だ。
ソフィアが父へ手紙を書くと、その返事と共にエイナルが医薬品を大量に抱えて辺境伯領に現れた。
彼は姉と同じく魔術研究院で主任研究員を務めており、そこで魔術を用いた医薬品の開発を行っていた。
エイナルは自分の研究チームを連れてきていた。彼はこの地で自分のチームと共に医療奉仕を行うと言ってくれた。ただし、それは開発中の医薬品の治験や、新しい治療の術式を実験させて欲しいというのが条件だった。
ソフィアは自分の願いが叶い、エイナルも得をする良い落としどころだと思った。
ソフィアはさっそくエイナルたちのための滞在場所を手配した。
辺境伯領にある一番大きな教会の敷地内に、彼らのための研究室が用意された。エイナルはそこでチームの面々と日々医療の研究にいそしんでいる。彼らが作り出した医薬品は優先的に前線に送られている。
そして、隔週に一日だけだが、教会ではエイナルたちが領民に向けて無料の診療を行っている。
あくまで新薬の開発が目的であると周知してあるが、今まで高額すぎて医療を受けることを諦めていた領民たちには好評であった。
この日にはソフィアもできるだけ顔を出している。領民と直接触れ合い、話を聞くことのできる良い機会だからだ。
医薬品は貴重な品だ。どこの領地に行っても不足している。
ましてやここ辺境伯領では隣国との小競り合いのせいで、多くの怪我人を常に抱えている。入荷してくる医薬品のほとんどは軍にまわされ、民間の診療所に卸される量は極端に少ない。
医療魔術を使える魔術師にいたっては存在自体が稀なので、たいていは軍か有力者のお抱えだ。その恩恵を民が受けることはない。
魔術師が足りていないと伝えても、せいぜい医薬品を安く提供してくれる程度かと思っていた。
「どうせ出し渋ると思って大げさに書いたのに、あっさりと差し出してくださったのよね」
「さすがにソフィア様に対して悪いことをしたと思っていらっしゃるのでは?」
「あのお父さまが? そうだったら嬉しいけれど、さすがにこれは辺境伯家に対しての詫びだと思うわよ」
隣国との国境で日々争いが起きております。常に怪我人が沢山いるというのに、この地では医師はおろか医薬品すらまったく足りておりません。医療魔術師などいないも同然です。助けてお父さま! と、ソフィアは大げさに書き連ねた手紙を父へ送った。
仰々しく書けばどれか一つくらい要望が通ると計算してのことだった。まさか手紙に書いた要望が全て通るとは思いもしなかった。
「今日の診療はいまの方で最後です」
「ありがとうエイナル。いつも悪いわね」
ルイースと話しこんでいたソフィアに、一人の男が声をかけてきた。
「いいえー、ソフィアお嬢さまの頼みですから。これくらいは苦ではありませんよ」
「そう言って貰えてありがたいわ。報告書は後でいいから休憩してちょうだいな」
「ぶっちゃけ臨床試験がしたいだけですからねえ。んじゃお言葉に甘えて少し横になってきます」
「まったく、身も蓋もない言い方ねえ」
ソフィアが溜息まじりに言うと、声をかけてきた男、エイナルが笑った。
エイナルは父の弟子の一人だ。彼はソフィアと同じく医療系の魔術が使える魔術師で、兄弟弟子という間柄だ。
ソフィアが父へ手紙を書くと、その返事と共にエイナルが医薬品を大量に抱えて辺境伯領に現れた。
彼は姉と同じく魔術研究院で主任研究員を務めており、そこで魔術を用いた医薬品の開発を行っていた。
エイナルは自分の研究チームを連れてきていた。彼はこの地で自分のチームと共に医療奉仕を行うと言ってくれた。ただし、それは開発中の医薬品の治験や、新しい治療の術式を実験させて欲しいというのが条件だった。
ソフィアは自分の願いが叶い、エイナルも得をする良い落としどころだと思った。
ソフィアはさっそくエイナルたちのための滞在場所を手配した。
辺境伯領にある一番大きな教会の敷地内に、彼らのための研究室が用意された。エイナルはそこでチームの面々と日々医療の研究にいそしんでいる。彼らが作り出した医薬品は優先的に前線に送られている。
そして、隔週に一日だけだが、教会ではエイナルたちが領民に向けて無料の診療を行っている。
あくまで新薬の開発が目的であると周知してあるが、今まで高額すぎて医療を受けることを諦めていた領民たちには好評であった。
この日にはソフィアもできるだけ顔を出している。領民と直接触れ合い、話を聞くことのできる良い機会だからだ。
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