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「そんなことをおっしゃられても、私は騙されないですからね!」
ソフィアはまた大声で叫んでいた。再びイーサンの胸ぐらを掴んで睨みつける。
「旦那さまが女優さんと関係を持ったりするような方だって知っていますもの。誤魔化そうとしたって無駄ですから!」
「――っな、なぜ君がそんなことを知っている?」
イーサンの目が泳いでいる。その仕草に腹が立ったソフィアは、彼の頬を両手で挟んでにっこりと笑いかけた。
「旦那さまが私を放置するので色々と調べさせていただきましたわ。お相手して下さらないから、暇で暇でしょうがなかったですもの」
「そ、そういう君こそ、わざわざ男を呼び寄せて足繁く通っているじゃないか」
「エイナルのことですよね? 彼は私の兄弟子です。私の要請に応じてわざわざ辺境まで来てくれた優しい同門の魔術師ですよ!」
エイナルのことを引き合いに出されて、ソフィアは怒りが頂点に達した。ついイーサンの頬に触れている手に力が入る。
その瞬間、バチンと大きな音が部屋の中に響いた。
ソフィアの両腕に激痛が走る。慌ててイーサンから手を離すと、その場から一歩後ろに引いた。
「――っ痛あ……!」
ソフィアは腕の痛みに顔を歪ませる。イーサンに触れたままの手に魔力を集中させてしまったので、どうやら彼が身につけている魔術攻撃に対する防御を行う道具を発動させてしまったらしい。
「……っああそうね、一応は辺境伯さまですもの。魔術による攻撃への対策はされておりますよね」
ソフィアの手からぽたぽたと血が滴り落ちる。辺境伯の命を守るために作られたものだけあって、呪詛返しの威力が強い。イーサン本人が情けない人物なので油断してしまった。
「だ、大丈夫か? 一体何が起きたんだ」
イーサンは目の前で起きたことの意味がわかっていないようで、慌てて立ち上がる。怪我を心配してくれているようだが、ソフィアは大丈夫だと言って彼を自分には近づけさせなかった。
いま傍に来られては、また道具が発動してしまうかもしれない。それは勘弁して欲しかった。
「先ほどの旦那さまの話し振りですと、自分は叔父に命を狙われている、いつ死んでもいいのだと諦めているご様子でしたのに……。しっかりとご自分の命を守る対策をされているのですね」
ソフィアは自分の怪我の治療をしながら嫌味ったらしく言った。命を諦めている男が、これほど立派な魔術対策をしているとはおかしな話だ。死にたいのであれば、魔術による攻撃に備える必要などない。
ソフィアは自身の怒りを鎮めるために深呼吸をする。気持ちを十分に落ち着けてから、冷静にイーサンに問いかけた。
「結局、旦那さまはこれからどうされたいのですか。領主であり続けたいのですか? それとも、叔父さまに地位をお譲りになりたいのですか?」
イーサンは、ソフィアが自分の傷をあっさりと治す姿を、驚愕の表情で眺めていた。しかし、ソフィアに淡々と話しかけられると、真面目な顔をして視線を合わせてきた。
「…………話には聞いていたが、見事な魔術の腕だな」
イーサンは感心した様子で言った。
「ありがとうございます。エイナルお兄さまと一緒に、父には随分としごかれましたから」
「そうなのか。医療魔術とは魔術の中でも繊細な技術がいると聞く。それほどの腕になるには、よほどの努力を積み重ねてきたのだろうな」
「当然です。よろしければ、ぜひ今度の無料診療の日には見学へいらしてくださいませ。もっと私の魔術の腕を披露させていただきますわよ」
「そうする。案内してくれ」
「ええ、喜んで」
ソフィアが笑顔で返事をすると、イーサンは大きく頷いてからソファに座り直した。
ソフィアは恐る恐る彼の傍に近付いて、ゆっくりと隣に腰掛けた。
「それで、私の質問にはお答えいただけないのですか?」
ソフィアはまた大声で叫んでいた。再びイーサンの胸ぐらを掴んで睨みつける。
「旦那さまが女優さんと関係を持ったりするような方だって知っていますもの。誤魔化そうとしたって無駄ですから!」
「――っな、なぜ君がそんなことを知っている?」
イーサンの目が泳いでいる。その仕草に腹が立ったソフィアは、彼の頬を両手で挟んでにっこりと笑いかけた。
「旦那さまが私を放置するので色々と調べさせていただきましたわ。お相手して下さらないから、暇で暇でしょうがなかったですもの」
「そ、そういう君こそ、わざわざ男を呼び寄せて足繁く通っているじゃないか」
「エイナルのことですよね? 彼は私の兄弟子です。私の要請に応じてわざわざ辺境まで来てくれた優しい同門の魔術師ですよ!」
エイナルのことを引き合いに出されて、ソフィアは怒りが頂点に達した。ついイーサンの頬に触れている手に力が入る。
その瞬間、バチンと大きな音が部屋の中に響いた。
ソフィアの両腕に激痛が走る。慌ててイーサンから手を離すと、その場から一歩後ろに引いた。
「――っ痛あ……!」
ソフィアは腕の痛みに顔を歪ませる。イーサンに触れたままの手に魔力を集中させてしまったので、どうやら彼が身につけている魔術攻撃に対する防御を行う道具を発動させてしまったらしい。
「……っああそうね、一応は辺境伯さまですもの。魔術による攻撃への対策はされておりますよね」
ソフィアの手からぽたぽたと血が滴り落ちる。辺境伯の命を守るために作られたものだけあって、呪詛返しの威力が強い。イーサン本人が情けない人物なので油断してしまった。
「だ、大丈夫か? 一体何が起きたんだ」
イーサンは目の前で起きたことの意味がわかっていないようで、慌てて立ち上がる。怪我を心配してくれているようだが、ソフィアは大丈夫だと言って彼を自分には近づけさせなかった。
いま傍に来られては、また道具が発動してしまうかもしれない。それは勘弁して欲しかった。
「先ほどの旦那さまの話し振りですと、自分は叔父に命を狙われている、いつ死んでもいいのだと諦めているご様子でしたのに……。しっかりとご自分の命を守る対策をされているのですね」
ソフィアは自分の怪我の治療をしながら嫌味ったらしく言った。命を諦めている男が、これほど立派な魔術対策をしているとはおかしな話だ。死にたいのであれば、魔術による攻撃に備える必要などない。
ソフィアは自身の怒りを鎮めるために深呼吸をする。気持ちを十分に落ち着けてから、冷静にイーサンに問いかけた。
「結局、旦那さまはこれからどうされたいのですか。領主であり続けたいのですか? それとも、叔父さまに地位をお譲りになりたいのですか?」
イーサンは、ソフィアが自分の傷をあっさりと治す姿を、驚愕の表情で眺めていた。しかし、ソフィアに淡々と話しかけられると、真面目な顔をして視線を合わせてきた。
「…………話には聞いていたが、見事な魔術の腕だな」
イーサンは感心した様子で言った。
「ありがとうございます。エイナルお兄さまと一緒に、父には随分としごかれましたから」
「そうなのか。医療魔術とは魔術の中でも繊細な技術がいると聞く。それほどの腕になるには、よほどの努力を積み重ねてきたのだろうな」
「当然です。よろしければ、ぜひ今度の無料診療の日には見学へいらしてくださいませ。もっと私の魔術の腕を披露させていただきますわよ」
「そうする。案内してくれ」
「ええ、喜んで」
ソフィアが笑顔で返事をすると、イーサンは大きく頷いてからソファに座り直した。
ソフィアは恐る恐る彼の傍に近付いて、ゆっくりと隣に腰掛けた。
「それで、私の質問にはお答えいただけないのですか?」
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