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「…………父のような領主になりたいと思っていた」
ソフィアは、イーサンが何を語りだしても苛立ちはしないという心構えをしていた。
「だが、私には無理なのだ。叔父の方がきっと領主にふさわしい」
「………………………………………………………………はあ?」
心の準備をしていたつもりだったが、無理だった。
ソフィアは落ち着けと心の中で何度も自分に言い聞かせてから、隣に座るイーサンを見上げた。
「私は最初から無理って言う方は嫌いです!」
はっきりとそう口にすると、イーサンは驚いた顔をしてソフィアを見つめてきた。
ようやくこちらを見てくれるようになった。少しは進歩したと喜ぶことにしよう。そうでもなければ、また怒りが爆発してしまいそうだ。
「旦那さまはこれまで領主として、この土地を豊かにさせようだとか、領民のことを考えてご自身で何かをなさろうとされておりましたか?」
しておりませんよね、と念を押すように言う。イーサンはソフィアの勢いに押されて口ごもってしまう。
「そ、それは……」
「ご自分をよく見せようとなさっていたことはわかっています。旦那さまがしていることって、それだけですわよね」
「そ、そんなことは……」
「ご自分のことばっかりです! 全て人任せにして積極的に何かに関わることはなかったのではないですか? それではお父上のような領主になれるわけがありませんわ」
「そ、そんなつもりはなかったが……」
「そんなつもりはないとおっしゃる? だとしたら相当まずいですわよ」
はあ、とソフィアがこれみよがしにため息をつくと、イーサンは気まずそうにしながらもごもごと話し出した。
「…………正直に言うと、あえて関わらないようにしていた。どうせ叔父が、全てうまく進めてくれるだろうと……」
ソフィアはイーサンの言葉を聞いてがっくりと肩を落とした。
「私は嫁いで来たからには、早く子供が欲しいと思っていただけなのに……。こんなに大きな子供が欲しいわけじゃないのに……」
ソフィアは自分にしか聞こえないくらいの小さな声でぼやいた。
「ど、どうかしたのか?」
ソフィアがいきなり頭を抱え込んでしまったので、隣にいるイーサンが困惑している。心配そうに声を出しながら、ソフィアの肩に手を置いてきた。
どうして自分の夫の手はこんなに頼りないのかと悲しくなる。
「ねえ、旦那さま。どんなことだって完璧なんてことはないと思うのです。まあまあでいいのですよ」
ソフィアは、気持ちを切り替えて顔を上げると、イーサンの手に自分の手を重ねた。
「最初から全てをうまくこなそうとしなくていいのです。どうせそれなりでいいのですから、そんなに肩ひじ張らずに領主としてやっていこうと思いませんか?」
イーサンは怪訝そうな顔をして首を傾げた。なので、ソフィアは自分にも言い聞かせるように話を続けた。
「何かを成そうとする時、だいたいのことは八割くらいできたらよしとなりませんか? 毎回完璧なんてことはないと思うのです」
完璧であることを求めてはいけない。この人を相手にするならば尚更だ。八割をもって良しとしなければ、疲れてしまう。いや、八割だって厳しいかもしれない。
「想定を上回る成果が出たら嬉しいですけれど、毎回そうであるとは誰も期待していないのです。大体のことは、これくらいでいいかなってなるのですよ」
「……そうだな。そうかもしれないが……」
「が?」
イーサンが言い終わる前に、ソフィアは食い気味に問いかけた。イーサンはごくりと息を呑んでから、ボソボソと話し出した。
「……き、君は完璧を目指すタイプだろう? やはりこんな私と君では釣り合わない。だから……」
「ええ、私はそのための努力は怠りませんからね!」
ソフィアは我慢していたが、つい苛立ってしまう。重ねていた手を離して、イーサンのおでこを指ではじいた。
「もう言い訳は禁止です! そんなことを並べ立てる前に、領主でいたいのかどうかだけを教えてくださいませ!」
イーサンは今までにこんなことをされたことがないのか、目を白黒とさせていた。
「どうなのです? ここで暮らしていたくはないのですか⁉」
ソフィアがきつく問い詰めると、ようやくイーサンは本音を口にした。
「…………領主でいたい。ここでずっと暮らしていたい」
ソフィアは、イーサンが何を語りだしても苛立ちはしないという心構えをしていた。
「だが、私には無理なのだ。叔父の方がきっと領主にふさわしい」
「………………………………………………………………はあ?」
心の準備をしていたつもりだったが、無理だった。
ソフィアは落ち着けと心の中で何度も自分に言い聞かせてから、隣に座るイーサンを見上げた。
「私は最初から無理って言う方は嫌いです!」
はっきりとそう口にすると、イーサンは驚いた顔をしてソフィアを見つめてきた。
ようやくこちらを見てくれるようになった。少しは進歩したと喜ぶことにしよう。そうでもなければ、また怒りが爆発してしまいそうだ。
「旦那さまはこれまで領主として、この土地を豊かにさせようだとか、領民のことを考えてご自身で何かをなさろうとされておりましたか?」
しておりませんよね、と念を押すように言う。イーサンはソフィアの勢いに押されて口ごもってしまう。
「そ、それは……」
「ご自分をよく見せようとなさっていたことはわかっています。旦那さまがしていることって、それだけですわよね」
「そ、そんなことは……」
「ご自分のことばっかりです! 全て人任せにして積極的に何かに関わることはなかったのではないですか? それではお父上のような領主になれるわけがありませんわ」
「そ、そんなつもりはなかったが……」
「そんなつもりはないとおっしゃる? だとしたら相当まずいですわよ」
はあ、とソフィアがこれみよがしにため息をつくと、イーサンは気まずそうにしながらもごもごと話し出した。
「…………正直に言うと、あえて関わらないようにしていた。どうせ叔父が、全てうまく進めてくれるだろうと……」
ソフィアはイーサンの言葉を聞いてがっくりと肩を落とした。
「私は嫁いで来たからには、早く子供が欲しいと思っていただけなのに……。こんなに大きな子供が欲しいわけじゃないのに……」
ソフィアは自分にしか聞こえないくらいの小さな声でぼやいた。
「ど、どうかしたのか?」
ソフィアがいきなり頭を抱え込んでしまったので、隣にいるイーサンが困惑している。心配そうに声を出しながら、ソフィアの肩に手を置いてきた。
どうして自分の夫の手はこんなに頼りないのかと悲しくなる。
「ねえ、旦那さま。どんなことだって完璧なんてことはないと思うのです。まあまあでいいのですよ」
ソフィアは、気持ちを切り替えて顔を上げると、イーサンの手に自分の手を重ねた。
「最初から全てをうまくこなそうとしなくていいのです。どうせそれなりでいいのですから、そんなに肩ひじ張らずに領主としてやっていこうと思いませんか?」
イーサンは怪訝そうな顔をして首を傾げた。なので、ソフィアは自分にも言い聞かせるように話を続けた。
「何かを成そうとする時、だいたいのことは八割くらいできたらよしとなりませんか? 毎回完璧なんてことはないと思うのです」
完璧であることを求めてはいけない。この人を相手にするならば尚更だ。八割をもって良しとしなければ、疲れてしまう。いや、八割だって厳しいかもしれない。
「想定を上回る成果が出たら嬉しいですけれど、毎回そうであるとは誰も期待していないのです。大体のことは、これくらいでいいかなってなるのですよ」
「……そうだな。そうかもしれないが……」
「が?」
イーサンが言い終わる前に、ソフィアは食い気味に問いかけた。イーサンはごくりと息を呑んでから、ボソボソと話し出した。
「……き、君は完璧を目指すタイプだろう? やはりこんな私と君では釣り合わない。だから……」
「ええ、私はそのための努力は怠りませんからね!」
ソフィアは我慢していたが、つい苛立ってしまう。重ねていた手を離して、イーサンのおでこを指ではじいた。
「もう言い訳は禁止です! そんなことを並べ立てる前に、領主でいたいのかどうかだけを教えてくださいませ!」
イーサンは今までにこんなことをされたことがないのか、目を白黒とさせていた。
「どうなのです? ここで暮らしていたくはないのですか⁉」
ソフィアがきつく問い詰めると、ようやくイーサンは本音を口にした。
「…………領主でいたい。ここでずっと暮らしていたい」
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