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番外編・17
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「――っうぐ! ど、どうした?」
エイナルの気配がしなくなると、ソフィアが勢いよくイーサンに抱き着いてきた。
彼女はそのままイーサンの胸に頬をすりつけてくる。
「なんだか想定外のことをたくさん聞かされて疲れてしまいました」
ここ最近はソフィアとの距離が縮まったとは思っていた。しかし、彼女がこれほど露骨に甘えるような仕草をしてくることはめずらしい。
イーサンが突然のできごとに困惑していると、彼女の身体が小さく震えだした。
「……我が家の揉め事に辺境伯家を巻き込んでしまって申し訳ございません。イーサン様にも多大なご迷惑を……」
ソフィアが絞り出すような声で謝ってきた。
実の姉に命を狙われていると告げられたばかりなのだ。受け入れるには時間がかかるだろう。それでも、彼女は自分ではなくこちらの心配をしている。
イーサンはソフィアの身体を抱きしめ返してぽんぽんと背中を叩いた。
「叔父がまんまと口車に乗せられたのが悪いのだ。ソフィアが気に病むことではない」
「そう言っていただけると心が軽くなりますわ」
ソフィアはそう言いながらイーサンの背中にまわしている手に力をいれた。
「私、今のようにぽんぽんてされるのが好きなのです。もう少しだけお願いしてもよろしいですか?」
「こうするのがか? こんなことでよければいつでもしてやれるぞ」
「ふふふ、ありがとうございます」
それからしばらくの間、イーサンはソフィアの望む通りに背中を叩いていた。
「……これからは、とても忙しくなりますわね」
「大丈夫だ。ソフィアの命は奪わせない」
「まあ、素敵なお言葉。しっかりと胸に刻ませていただきますわ」
身体の震えが止まったソフィアがイーサンを見上げてきた。
「私もイーサン様のお命を奪わせるつもりはまったくございません。私のことを下に見て馬鹿にしているお姉さまには目に物見せてやりますわ」
口の端を上げてニヤリと笑ったソフィアに、イーサンは苦笑いをした。
「ほどほどにしてくれよ?」
「ふふふ、うちのお父さまがいつもおっしゃっておりましたの」
「……あまり聞きたくはないが、お父上はどんなことをおっしゃられていたのだ?」
「馬鹿にしてくる奴には自分の愚かさをとことんわからせてやれって。だから、お姉さまでも容赦はいたしませんわ」
にやついた顔をしまい、大真面目な表情でさらりと言ってのけたソフィアに、イーサンは背筋が寒くなった。
「………………うう、やっぱり魔術師は怖いな」
「何かおっしゃいまして?」
ソフィアがぎろりと睨みつけてくる。彼女がイーサンの額に向かって手を伸ばしてきた。
イーサンはさっと身体をのけぞらせた。額を弾こうとした指が目の前を彷徨っている。
「あら、避けられてしまいましたわ。残念」
「さて、エイナル殿から頼まれたことを済ませに行かなくてはな」
イーサンはソフィアに向かって微笑みを浮かべて立ち上がると、ドアを指差した。
「あら、ではご一緒させていただきますわ」
ソフィアもイーサンに続いて立ち上がると、腕にしがみついてきた。
もう彼女の身体は震えてはいないが、もしかしたら今は一人でいるのは心細いのかもしれないと思った。
「では、二人で行こうか」
これからは二人で領地を守って行かなくてはならないのだ。
道のりは険しいが、少なからず頼りになる味方がいる。
それに、ソフィアと二人なら乗り超えられる気がする。
イーサンはソフィアの手を掴んで歩き出した。
――――――――――――――――
2022/4/8
これにて番外編終了でございます。
エイナルの気配がしなくなると、ソフィアが勢いよくイーサンに抱き着いてきた。
彼女はそのままイーサンの胸に頬をすりつけてくる。
「なんだか想定外のことをたくさん聞かされて疲れてしまいました」
ここ最近はソフィアとの距離が縮まったとは思っていた。しかし、彼女がこれほど露骨に甘えるような仕草をしてくることはめずらしい。
イーサンが突然のできごとに困惑していると、彼女の身体が小さく震えだした。
「……我が家の揉め事に辺境伯家を巻き込んでしまって申し訳ございません。イーサン様にも多大なご迷惑を……」
ソフィアが絞り出すような声で謝ってきた。
実の姉に命を狙われていると告げられたばかりなのだ。受け入れるには時間がかかるだろう。それでも、彼女は自分ではなくこちらの心配をしている。
イーサンはソフィアの身体を抱きしめ返してぽんぽんと背中を叩いた。
「叔父がまんまと口車に乗せられたのが悪いのだ。ソフィアが気に病むことではない」
「そう言っていただけると心が軽くなりますわ」
ソフィアはそう言いながらイーサンの背中にまわしている手に力をいれた。
「私、今のようにぽんぽんてされるのが好きなのです。もう少しだけお願いしてもよろしいですか?」
「こうするのがか? こんなことでよければいつでもしてやれるぞ」
「ふふふ、ありがとうございます」
それからしばらくの間、イーサンはソフィアの望む通りに背中を叩いていた。
「……これからは、とても忙しくなりますわね」
「大丈夫だ。ソフィアの命は奪わせない」
「まあ、素敵なお言葉。しっかりと胸に刻ませていただきますわ」
身体の震えが止まったソフィアがイーサンを見上げてきた。
「私もイーサン様のお命を奪わせるつもりはまったくございません。私のことを下に見て馬鹿にしているお姉さまには目に物見せてやりますわ」
口の端を上げてニヤリと笑ったソフィアに、イーサンは苦笑いをした。
「ほどほどにしてくれよ?」
「ふふふ、うちのお父さまがいつもおっしゃっておりましたの」
「……あまり聞きたくはないが、お父上はどんなことをおっしゃられていたのだ?」
「馬鹿にしてくる奴には自分の愚かさをとことんわからせてやれって。だから、お姉さまでも容赦はいたしませんわ」
にやついた顔をしまい、大真面目な表情でさらりと言ってのけたソフィアに、イーサンは背筋が寒くなった。
「………………うう、やっぱり魔術師は怖いな」
「何かおっしゃいまして?」
ソフィアがぎろりと睨みつけてくる。彼女がイーサンの額に向かって手を伸ばしてきた。
イーサンはさっと身体をのけぞらせた。額を弾こうとした指が目の前を彷徨っている。
「あら、避けられてしまいましたわ。残念」
「さて、エイナル殿から頼まれたことを済ませに行かなくてはな」
イーサンはソフィアに向かって微笑みを浮かべて立ち上がると、ドアを指差した。
「あら、ではご一緒させていただきますわ」
ソフィアもイーサンに続いて立ち上がると、腕にしがみついてきた。
もう彼女の身体は震えてはいないが、もしかしたら今は一人でいるのは心細いのかもしれないと思った。
「では、二人で行こうか」
これからは二人で領地を守って行かなくてはならないのだ。
道のりは険しいが、少なからず頼りになる味方がいる。
それに、ソフィアと二人なら乗り超えられる気がする。
イーサンはソフィアの手を掴んで歩き出した。
――――――――――――――――
2022/4/8
これにて番外編終了でございます。
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