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プロローグ
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春夏冬菊那(あきなし きくな)が住んでいる青燕ノ谷という町には、不思議なお屋敷があった。袋小路にある広い敷地にある煉瓦作りのお屋敷は、背の高い塀で囲まれおり、来るもの拒む、そんな雰囲気がある場所だった。入り口は立派な門があり、草花の彫刻が施された豪華な作りの扉がついている。しかし、その扉が開くことはほとんどない。
けれど、時折ここに住む主人が出入りする時に門の扉が開く。
偶然その屋敷の中を見た人がおり、そこから噂が広がったのだ。
屋敷には大きな庭があり、四季折々の花が咲いているというのだ。冬が終わり春の訪れを感じさせる桜やチューリップ、夏の向日葵や朝顔、秋は金木犀やコスモス、そして冬の花の椿やスノードロップ。その他にも一緒に咲くところなど見る事が叶わない花達が一同に咲き誇っているというのだ。
その噂はあっという間に町に広がった。
あのお屋敷だけ異世界ではないか、主人は魔法士なのか、それとも時を止められるのではないか。そんな夢のような噂が語られるようになった。
けれど、その袋小路に足を運んでも、ドアが開くこと滅多にないのだ。
そして、その庭園を見た人は屋敷に閉じ込められるという噂も流れ始め、子どもも大人も近づかなくなった。
ただただ青燕ノ谷の噂話として語られるだけだった。
けれど、その花屋敷に3つの視線が向けられている。
静かな袋小路が少しずつ騒がしくなるのをまだ誰も知るはずもなかった。
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