女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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目の所をグサーッ

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 キリの良い数のノルマを達成し、樹冠の上に浮かせた土台の上でお昼のスープを作る俺。ワーリンは肉を焼く事が出来るそうだが、スープが出来るのをじっと待ってる。キュルケスは専ら食べる事に特化しているそうでワーリンの隣でじっと待ってる。
この国のスープはマタルをそのまま煮込んだぷりぷりでサラサラなスープなので、今日は少しだけ粉にしたのを混ぜてとろみをつけてやると、作った鍋が空になる程度には好評だった。

「お前ひゃん、ひたがあふい」

とろみを掻っ込むからだ。火傷した舌を治して使った物を回収したら、メインターゲットを探そう。《感知》を広範囲に広げて竜種を探す…、居た。

「ねえ。本当にドラゴン狩るの?って言うか狩れるの?」

「今の俺なら《威圧》で殺れる」

「オレは食われる自信しか無いな」

「私も同じく。今の俺ならって、以前はどんな手を使って狩ったの?」

「ブフリムっつー毛の無いケブみたいなのが持ってる臭いナイフで、こう、目の所をグサーッとな」

「ぎゃー」

トカゲの気分になったワーリンが目を押えて痛がってる。よしよし。

「所でさ、この土台、動いてるよね?」

「トカゲの所に向かってるぞ?落ちないように気を付けてくれ」

「前以て言っておくわ。私役に立てない」

「オレもー」

「特等席で見て行くが良い」

お茶を飲み飲み飛んで行く。雪深い、尖った森を暫く行くと、そこだけ木を切り雪かきをしたような、ぽっかり空いた空間に黒い塊が丸まってた。

「黒いのは初めて見るんだが、二人共、見た事は…無いよな?」

「「無い」わ」

黒い塊はゴツゴツしてデカい鱗を持つタイプのトカゲで翼は無い。釣りをする度俺を食う巨大魚と、首長竜を足したような感じに見える。大きさは丸まってて分かりにくいが魚より断然大きいな。

現在直上五十ハーン。普通、これだけ近付いたらブレスの一発くらい飛んで来て当たり前だ。改めて《感知》で見てみると、死に掛けてるみたい。更に診て、毒による衰弱と出た。ドラゴンを殺す毒って事は人なら即死か?とにかくこんなの狩っても食えないし危ないし、ダメだな。毒は身体中に回り、丈夫な肝臓も物言わぬ臓器になっている。
体表面に毒が無いのを確認して背中に降りる。腰の辺りに手を当てて、肝臓に向けて《治癒》を掛けながら《集結》で毒を直腸に集め、《収納》で回収した。

「グ、グル…」

「ギィギャー」

龍語だが、伝わったかは分からない。それでも動かずに大人しくしていたのは、動く気力が無いだけでは無いと思った。一言唸った後は、一瞥して目を伏せた。

「ふぅ、術式完了」

毒を全て《収納》し、回復した肝臓が機能すると、耐寒装備である鎧越しに体温が上がって行くのが分かる。湯気も出てるし、暫く寝てれば元気になるだろう。黒いのの腹から飛び上がり、浮いてる土台に上がっても、黒い奴は動く事が無かった。

「狩らなかったんだね」

何となく優しい目のワーリン。

「毒で死に掛けてたから治して来た」

「大丈夫なの?元気になって街に来たら大変よ?」

「その時は狩れば良い」

「敵として来たらねー」

「普通は惚れるわよね、ワーリンじゃ無くてもわかるわ」

「アレ、雌なの?」

「わからないわ。お礼に来ない事を祈りましょ」

トカゲ狩りは失敗だが、次の機会を待とう。戦利品が無い訳でも無いしな。街に戻ってギルドに入り、討伐依頼の俺達は買取カウンターへ直で向かう。朝対応した受付嬢が優しい目をしてる。畜生め。

「にゃ!お客さんまた来た!」

「カケルだ。何度でも来てやるぞー」

「にゃー!」

逃げてった。仕事を放ったらかしにして…。
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