女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

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体の一部に人には見せられぬしこりがある

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「今夜が野営の最終日となる。総員気を抜かず職務に当たるように」

宿営地に着くと護衛の代表が声を上げる。疲れて集中の切れる頃に敵が現れるのはよくある事で、事実ハークやアルアに会ったのはそんなシチュエーションだったのを思い出す。
煉瓦建築を設営しながら《感知》を広げて索敵すると、街道の十キロハーン程先に人の反応が見えた。一定間隔で立つ二人組に歩き回る二人組。これは城の衛兵だろうな。ブルランさんに確認するとやはり城詰めであるとの事。あちらからも確認出来るように火を焚いて煙を出すのが良いそうなので、城から見易そうな位置に排煙口を作り調理スペースにした。良い匂いが外に出てしまうが多分大丈夫だろう。
今夜は明日の朝食の分の料理も作るそうで、メイド三人フル稼働である。城に着いたら捨ててしまう事になって勿体無いので肉と野菜を使い切るのだそうだ。明日は鍋を温め直して焼肉を作るだけだと言う。野菜を振る舞われてゾーイ達も嬉しそうだ。
鍋が二つにソーサーも二倍と調理時間が長い為、ハークとブルランさんは先に風呂に入る事になった。ハークはどうしても俺と風呂に入りたいようだったが、俺には体の一部(主に股間)に人(主に男)には見せられぬしこ(しこする)り(っぱなモノ)があるので断固として断った。

「ワーリン達とは一緒に入るクセにずるい!」

グチグチしながら浴室へと連行されて行った。

ほかほかと湯気立つハークを迎えて夕飯を食べたら警備を交代したり風呂に入ったり仮眠した後警備に戻ったりと夜の仕事をこなして朝になる。
馭者と交代したら仮眠をせずに直ぐに朝食の時間。焼肉に、温め直したスープと冷めたソーサーで腹を満たし、手早く準備を整える。家の解体が済んだら出発だ。城までは十キロハーン程、一オコンもすれば着くだろう。

 城に向けて暫く行くと、森林が伐採された平地となり、一面の雪が眩しい。そして平地の中央に壁が見えて来た。きっとあちらからも確認出来ている事だろう。

「カケル!あれが旧王都で王城のあるミソプファンティアだよ」

二号車の後部窓から顔を出して説明してくれるハーク坊っちゃま曰く、遷都しても都市としては機能しているので王都と遜色無い街が見られるそうだ。
眩しい街道を移動していると、壁から五百ハーン程手前だろうか、赤と黄色のタペストリーみたいな旗が刺さってる。描かれている絵は王家の家紋なのかな?魚かこれ?
どうやら此処から先触れを出すのだそうで、単騎が二人走って行った。俺達は先触れが戻るまで待機となる。

「ハークよ、この旗に描かれているのは何だ?」

「それは父上の家紋だよ?ヒラウオと六本のミズマタル」

「マタルはスープに入ってるぷりぷりだよな?ヒラウオって何だ?」

「浅い沼地に生える種類のマタルだよ。ヒラウオは同じ場所に住む魚だね。平たいんだよ?」

「ミソプファンティアでは肉と同じく日常的に食されております」

「干物に加工されたりもしてるわね」

川魚の干物とは珍しいな。

「カケル、見ててね」

後部窓から手を伸ばし、街道の横に風を放つ。吹き散らかした雪の中からは一面に張った氷が姿を現した。さっきまで伐採された平地と思っていたのは実は沼地であったのだ。

「辺り一面沼地なのか」

「驚いた?」

「驚いた。もしや沼地の真ん中に城を?」

「その通りでございます」

「どれ程の時間を要したか想像も付きませんね…。もはや執念とも取れます。遠目からは至極単純な壁に見えて居りましたが、節穴である事を恥じるばかりです」

「良いのです」

「またカケルが家の話してるー」

ぷくーしてるハークきゅんは氷の下で蠢いてるヒラウオを見せたいらしい。氷が厚くて泥が巻き上がってるのしか判らないです。
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