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買った方が安い
しおりを挟む北東の大通りに出ると、店屋が多い通りなのが伺える。食料品や衣類、雑貨屋等、此処で暮らす為の品物が全て揃っているのだろう。キョロキョロしながら外門へ向かうと、壁沿いに四階建ての大きな建物が見えてくる。ゾーイ車の駐車場もあり、言われなくても商業ギルドであると予想出来た。
「あれだな?」
「そうね。正面をノックするより駐車場から行った方が早いわよ」
ゾーイ車が入れる開け放たれた門を潜ると、入口のドアの前に守衛が立ってる。挨拶して用件を話すとノックするより早く開けてもらえた。
先輩を先頭に背の順で受付に向かう。
「いらっしゃいませ。お名前とご用件をお願いします」
垂れ耳でふわふわ、可愛い系の犬系獣人な受付嬢だ。笑顔になると舌が出ちゃうのが可愛い。何故かワーリンが後ろから抱き着いて来るが、取られないから大丈夫だぞ?
「ハーク様の護衛依頼を終えた冒険者のキュルケスです。新都への護衛依頼もあるのでそれなりの宿を探そうと思っています」
「案内は有料となります。場所等ご希望はありますか?」
銀貨三枚。足で探すよりは早いし安全安心だな。内風呂と防音に拘ってチョイスして貰った。その結果、下級貴族も利用する、商人向けの宿を紹介された。商業ギルドが発行する鑑札を持って行くとちょっと安くなったりするそうだ。
場所はギルドから東に斜向かい。駐車場の正面だった。ギルドの駐車場から出たゾーイ車が、道を横切るだけで宿の駐車場に入れてしまう。
グループ企業の匂いがするこの宿は、都の宿ニュー王都。旧王都なのにニュー王都。王都のラブホ並に派手な外見で、入口には守衛が立っている。訝しむ守衛に鑑札を見せて中に入ると、豪華な作りのエントランスに石造りの受付カウンター。商談スペースに軽食を出すラウンジもあり、なんかホテルみたいだ。
受付の男に鑑札を渡し、内風呂と防音のある部屋を見繕ってもらう。因みに料金は先払いだ。三人様一部屋で一泊十五万ヤン!食事込み!ギルド証で払えて良かった…。
「オレ、こんな高い宿初めてだ。Aランクとかになったら定宿に出来んのかな?」
部屋に通され三人になると、ワーリンがごちる。
「無理無理。家買った方が安いわよ。家政婦雇ってパーティで住む方が断然安いわ」
ベッドに腰掛けブーツを脱ぎ捨てるキュルケスは冷静だ。脱ぎ散らかしたブーツをそのままにするな。
「折角の高級宿だ、元を取ろう」
「オレ、一杯食う!」
「良いけど、静かに食べなさいよね?追い出されたら凍え死ぬわよ?」
魚の匂いのする料理屋はキープのままで終わりそうだな。それより先ずは疲れた体を湯浴みで解して寝てしまおう。
おひとり様五万ヤンもするだけあって、内風呂も広い。五十ドン程と浅いが五人は余裕で横になれる広さの浴槽があり、洗い場はほぼ無い。…これは、浴槽で体を洗って、掛け湯で終了するパターンの風呂か?浴槽内には有るのだが、ほぼ無い洗い場には排水口が無い。湯が溢れたら下の階に降り注ぐ事になりそうだ。
「これから風呂を作る!」
「「え!?」」
「この風呂じゃ、湯が溢れたら下の階に漏れるぞ?それに、洗い場が無いなんて有り得ん」
「宿に風呂が有る時点でオレには有り得ないんだけどね」
「お風呂に入れるだけで有難いわ」
俺が風呂を作るのを、体を冷やす甘干しでも齧りながらゆるりと見られい。
先ずは床。全面に床張りして洗い場とし、縁を三十ハーン程の壁を立たせて横からの水漏れを防止する。そして浴槽を嵌め込む為の穴を開け、管状にした煉瓦を洗い場と元の浴槽内の排水口に向けて繋いだ。
次は浴槽。洗い場に開けた穴に、箱を作って嵌め込んだ。深さは一ハーン、広さは二×三ハーン。みっちり注いで六トンもあるので浮かせて使うしか無い。浴槽内の残り湯は《洗浄》で消えるので排水口は作らなかった。
最後に全てをくっ付け硬化させ、浴室の完成である。
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