女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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この宿はダメだ!

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 高級宿のお湯は、ぬるい。
お湯の量もちょろちょろで、魔力が足りないのかと注いでみるも、どうやらそうでは無いみたい。半身浴で長~く入るのには向いてそうだが、俺は肩までしっかり温まりたいのだ。
水の棒で浴槽を満たし、鉄板で湯を沸かした。これでは全然元が取れない。魔力注いだ分損まである。

「その魔道具、こうして見比べると凄いわよね」

「売ってるの見た事無ぇぞ」

売ってないからな。三人並んで湯に浸かり、洗い洗われ昼になる。食堂は地下にあり、暖房が効いてて部屋着でもほっと出来る。眠くなるのを堪えて出て来た昼食はヒラウオの切り身ステーキにマタルたっぷりスープとソーサー。酒は一杯目無料だが、お冷含めて何とおかわり自由だ。好きなだけ食え!
ヒラウオはしっかりと泥吐きさせたようで、ハーブも効いて臭み無く、カリカリでフワフワ。これおかわり自由なのは凄いなぁ。俺は二皿、ワーリンは四皿おかわりしてた。酒も一杯無料なのでエールをチビチビ。満腹で、暖かく、酔いと疲れで眠気が限界を突破する…。

「此処で寝ると折角のベッドが無駄になる…。部屋に戻ろう」

「あうーん」

「そうねー」

部屋へと向かう階段で、キュルケスはワーリンの腕にしがみ付いて浮いていた。覚えていれば飛べるだろうな。
食欲性欲睡眠欲、人間の三大欲求等と言って居るが、性欲など三大欲求の中で最弱。欲求の面汚しよ。性欲溜まってようがベッドに沈み込んだら泥のように寝てしまうのだからな…zzz

 目覚めたら夜。暗くて再び寝てしまいたいが、体力の回復に食事は無くてはならない物なので、二人を起こして飯に行く。焼いた謎肉に酸っぱいソースを掛けたのと、香草たっぷり魚のスープにソーサー、そして無料エール。焼肉は刻んだネギみたいなのが酸っぱくてレモンねぎ塩な感じ。スープはとにかく臭み消しの香草が皿を埋めつくしてて、表面だけ見るとサラダと言って良いかも知れん。久しぶりの生野菜?である。色はパクチーだけど味は生姜や茗荷に近い。薄味なので葉っぱだけもりもり行けちゃう。おかわりもしてお腹一杯、ふらふら部屋に戻ったら風呂に入ってベッドに埋もれ、意識を刈り取られた。

「この宿はダメだ!」

朝、朝食を摂って部屋に戻り、二人に告げた。

「そうね」

「オレ達がダメになっちまう」

二人も同じ考えらしい。食って風呂に入ったら寝ざるを得ない誘惑のスパイラル。これに慣れてしまうと王都の宿じゃ満足出来無くなってしまう。風呂を解体し、俺達はチェックアウトを決めた。ホテルニュー王都、恐るべき宿であった。
外に出て、目の前に商業ギルド。外から来る商隊が列を成して駐車場に入って行く。商業通りな事もあり、昨日の凱旋に比べてとても活気に満ちている。新しい宿を紹介してもらうのは午後からでも良いかな。

「アルア様は多分この門から来ると思うわ。前の依頼の時は此処を通ったから」

「「「へぇー」」」

三へぇ頂きました。三?

「お前等見ない顔だが冒険者だな?何でそんな事知っている?」

一へぇしたのはよくある衛兵の装備を着た衛兵でした。メットに通信の魔道具を仕込んでるのだろうか?

「昨日のハーク様の護衛で来たのよ。アルア様とも面識があるわ」

「出世街道を突き進んでる訳か、羨ましい事だ」

「オレ達ダンジョン潜りたいだけなんだけどな」

「出来れば関わりたくないのが貴族だからな、二人共きゃわゆいけど」

「流れに身を任せるのが浮草生活って奴だろ?」

「草より肉食べたい」

「食いたいなら内の仕事を手伝わないか?冒険者ギルドが無いから依頼を受けてくれる奴を探してんだ」
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