女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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のんべんだらり

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「義父上!ご帰還心よりお待ちしておりましたぞ」

「待っていたのなら外で待て。其方のお嬢さんは何方かな?貴様の隠し子で無い事だけは判るが」

「私はカケル様のお世話をさせて頂きますキュルケスと申します」

「む、そうか」

なんかあっさり。バサッとマントを翻し、ゾーイ車に向かって歩き出してしまった。俺も…と思ったがキュルケスが睨んでるので止めました。
上座から、義父上、ゴモランさん、俺、キュルケスと乗り込んでゾーイ車が走り出す。そんなに急ぐ必要はあるのだろうか?
あった。夕飯に間に合わせる為だなこれ。何人家族か知らないが、焼肉くらいは提供したいのだろう。

 貴族街の制限速度は如何程か?そんな感じでぶっ飛ばしてデカい門前に停車した。此処からは歩きで行くそうだ。全員降りてギロチンみたいな門を抜け、走り出す貴族二人。歩くって言ってたのに競歩するでも無く普通に走ってる。置いて行かれたら不審者扱い待った無しなのでキュルケスの手を取り飛んで追い付く。

「既に貴様らが待機している体で話をしてある。なので急ぐのだ」

「流石義父上である」

追い付いた事に反応し速度を上げる貴族達。貴族ってもっとのんべんだらりとした生活送ってると思ってたよ…。
城の中を見回す事も出来ず、エントランスから最短距離と思しき速さで謁見の間に通された。

「カケル様」

何故か様付けのキュルケスが正面を見据えたまま囁く。

「謁見の作法は私を見て真似てね」

頷いて、《並列思考》をフル回転させておく。キュルケスを真似て膝を折り待つ事暫し、聞き慣れぬ野太い声に、この家の主の入室を告げられた。その後はキュルケスを真似て表を上げたり名乗ったり、トカゲの頭を出して見せたり仕舞ったり。驚きとやっかみの声が混じって聞こえていたが、正直よく覚えていない。部屋の左右から飛んで来る敵意に嫌気がさしていたのだ。お肉のお裾分けのつもりだったのに、横からの妄言で全部献上する事になってしまったし、ホント、貴族と関わるとろくな事が無い。
謁見が終わるのを告げられると、俄に奥の扉の方が騒がしくなり、扉が勢い良く開かれた。

「カケル!」

聞き馴染みのある可愛い声が、駆け寄って来て膝立ちの俺の頭を抱き締めた。

「お前達!カケルになんて事するんだ!?父上も奪うだけ奪うこいつらに何故何も言わないの!?」

「ハークよ、入室を許した覚えは無い」

そんな声にハークの魔力が膨れ上がる。

「良いんだ。元々食べてもらう為に持って来たんだ」

「それにしたって貰い過ぎだよ…」

「初めて会って話した事を覚えているか?」

少し小声でハークに告げる。

「勿論だよ」

ハークも小声で返してくれる。

「初めての仕事はしっかりこなせ。それでチャラだ」

「…解った。必ず全うするよ」

ぎゅっと抱き締め直すと静かに離れ、再び扉の奥に帰って行った。この家の主が退席し、俺達も退室する。ゴモランさん、キュルケスの後ろに並び、城を後にした。


「カケルよ、すまん!」

ジョービリン邸に寄ってライガーの肉と皮を置いてった後、ゴモラン邸に帰って来て早々、玄関前にてゴモランさんが頭を下げた。

「ははは、高い授業料と思えば大した事は無いさ」

「頑張ったわね、いいこいいこ」

メットの上から撫でられても感触が無いのだが、此処は素直に褒められておこう。

「皆おかえりー。夕飯の支度は出来てるぜー」

鎧にエプロンと言う不可思議な格好のワーリンがメイドに混じって現れた。

「貴女、何その格好?」

「飯作るの手伝ってたんだよ」

ワーリンは実家に居る頃から母の手伝いをしている良い子であった。
家主は着替えに行き、俺も借りたマントを返しに行く。キュルケスはメイド等に連れられて食堂に向かったようだ。

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