女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

もる

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彼奴が動いた

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 ふと気付いた事を聞いてみた。

「ならさ、俺達があの場所を避難しても危険が無い程度に管理なり整備するのはどうかな?俺達が家を建てたいのは島だけだし、森に壁を建ててモンスターが出られないようにしたり、森の外に水路を引いて利用しやすくするくらいなら出来るぞ?」

「モンスターを囲うなんて、街とは真逆の発想ですね」

「森の中を狩り尽くすような事が無ければゴーラには事欠かなくなるな」

「居なくなったら補充してあげますよ、うふふ」

「値下げ交渉としては突飛過ぎて私個人での裁量を超えます。上の者と相談させて頂いてよろしいでしょうか?」

「王家のメイドが来た時点でそうすべきだよ。待ってるから相談して来ると良い」

受付嬢は席を立つと一礼して階段を上がって行った。俺達は空いてる椅子にでも掛けて待つとしよう。にこにこしてるリュネが何か不気味だが、怒ってる顔よりは良い。せめて暴れ出さないように手を繋いでおこう。

「んふ」

「嬉しそうだな」

「昼間に二人きりなんて初めてですから。ずっとこうしていたいです」

俺の手をにぎにぎして嬉しそうなリュネだが、ギルマスが降りて来たらこの辺りは更地になってしまうかも知れない。

「俺、この商談が終わったら、肉でも狩りに行きたいんだ。一緒に行くか?」

「何処までもお乗せしますね!」

取り敢えず更地になるのは回避された。更に暫く待って、受付嬢が上に案内してくれるので付いて行く。ギルマスの部屋は何処も同じ感じがする。ギルド全体を見てもどの都市も同じような作りだ。大工は同じ筈が無いので、設計図や仕様書が似たり寄ったりなのかな?

「カケル殿、だったな。話は聞いておる。商業ギルドに値切りを掛けるとは面白い男だの」

「こちらは商業ギルドが売る気の無い商品をボッタくってる可能性ありと聞いて確認に来たんだ。売る気はあるのか?」

「利用価値は職員が話した通りだ」

「より利用し易くしてやっても良いぞ?職員に話した通りだ」

「で、値切れと」

「魔石で良いなら満額払っても良いと思ってるぞ?要は売るのか売らないのか、だ」

ギルマスは答えない。それが答えなのだな。そして彼奴が動いた。動いてしまった。
 ギルマスは体を強ばらせ動けなくなった。隣に居た受付嬢は這いつくばり、全身から水分等を垂れ流す。俺まで動けなくされた。

「答えなさい人の子。お前の時間は有限ですよ」

俺の横に座る笑顔に、慈悲の心はまるで無い。

「ぐ…、それは…、脅しぎゃああああっ!!」

社長机に隠れて此方からは見えないが、多分腰から下は相当痛い目に遭っているようだ。微動だに出来ず、悲鳴だけを響かせている。

「答えが違います。答えなさい」

「ひぎっ!いぎゃっ!やめっああああっ!!」

「答えぬモノに応える義理はありません。答えなさい」

「ぎゃああああっ!!こたぁ!答える!ぎゃめてぐひいいいいいっ!!」

「お前の代わりはいくらでも居ます。人はポコポコ湧きますし」

泣いて叫んで血を流し、泡を吹いて気絶したのを《洗浄》して目覚めさせる。ボロ雑巾になったギルマスを回復の光が覆う。傷付いたであろう場所が治療され、ほっとした所に更なる傷が付けられたみたいで再び奇声が上がる。回復しながら痛め付けてるのだろうな。

「リュネ、人は血が足りなくなると死ぬ。せめて答えさせてから楽にしてやれ」

「んもう、仕方無いですね。カケルさんが答える機会をくれましたよ?」

「あ…、彼処には、あの島…には、宝が、ある…」

「……ねーよ」「ありませんね」

二人の《感知》で見たのだから間違いない。あるのはせいぜい血止め草の畑くらいだ。
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