女神に嫌われた俺に与えられたスキルは《逃げる》だった。

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エリアボス

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 丸見えのダンジョン程面白く無い物は無い。《感知》で広く周囲を見渡すと、迷路型の通路を雑魚モンスターや雑魚冒険者が歩いてるのが見える。とは言え此処は地下一階。下に降りれば《感知》を使う暇も無いくらいの大冒険が待っているに違いない。一直線に階段に向かった。

「お、もう階段か。早いな」

「トカゲの居る階層まで直行するぞ」

「少しは殴らせろよ」

「時間は有限だ。殴るに値する奴が居ない限り放置だ」

「わーったよ」

地下二階。灯りも付けず、早足で歩き、階段へ。

「おいおい、早過ぎるだろ」

「そうか?」

「雑魚も出て来ないしどーなってんだこりゃ」

「俺達に恐れをなしたんだろ」

「そうか?」

「ダンジョンが俺を入れたくないなら、とっとと強い奴の所まで送って痛い目に遭わせるんじゃないか?俺なら最下層に転移させて全力で相手するがね」

「そう…かも知れんなぁ」

「ジョン、びびってる?」

「緊張はして…ます」

「カケルの傍に居れば安全」

階段を降りて、進み、階段を見付けて降りる。何度か繰り返していると高さ三ハーン程の扉が現れた。

「カケル、早過ぎて階層を忘れかけていたが十階。エリアボスだ」

「並んでるのは順番待ちか」

扉の前には二組のパーティーが鍋に火を掛けたりして並んでいた。

「そうだ」

「仕方無い、俺達もお茶にするか」

「お肉食べる?」

「自分で焼くなら食べても良いよ」

「たべる~」

列の最後尾に座り、鉄板二枚と石版を出して、ネーヴェには薄切り肉に塩等振って渡し、俺は煉瓦鍋で湯を沸かす。
炎の出ない調理器と、美味そうに焼けるトカゲ肉に注目が集まるが話し掛けては来ない。話し掛けて喧嘩になるのは無駄だからだ。
最前のパーティーが行き、更に一つ行ってやっと俺達の順番だ。

 扉を開けて、中に入って何じゃこりゃ?エリアボスと思しき大きいブフリムと取り巻きの数匹が壁に張り付いて屈んで小さくなってやがる。脳みそを《収縮》させると煙になって消えた。

「なんでエリアボスが…」

「恐れをなしたんだろ」

「あのな、ダンジョンのモンスターは恐怖の感情が無くて死ぬまで戦い続けるモンなんだ」

「そんなモン、ダンジョンの常識がこの子に通用しないってだけだろ?」

「おそれうやまえー」

「ドラゴン、なんだったな…」

「俺が思うに、ダンジョンがびびってんだ。だから生み出す雑魚にもその感情が伝染る。多分な」

「とっとといく」

「そ、そうだな…」

「シャキッとしろよ。トカゲとタイマン張るんだろ?」

「…考えずに進むしかないな。よしっ!やんぞ!」

やっと諦めが付いたか。その後は降りて降りて、昼飯挟んで降りて降りて、四回目のエリアボスでやっとトカゲタイプの敵が出た。棘のあるワニみたいな奴で、ジョンが縮こまってるトカゲ相手に必死になって倒してたよ。腕は良いけど剣が皮を通らないんだ。解体ナイフの方が切れるかも知れん。

「その剣、ダメだな」

「国の鍛冶屋の業物だぞ?まあ、研ぎ直してこのザマじゃ言い返せん、か」

「そのうち良い武器落ちるだろ。拾っとけ拾っとけ」

「敵が出るならな」

「カケル、お腹すいた」

「下に降りたら飯にしよう」

落ちてた魔石をちゅぱらせながら階段を降り、小部屋の隅で飯の支度を始める。サイコロ石焼肉と、シャバ生地を焼いた薄々ソーサー、そして《散開》で細かく砕いた野菜を入れて煮溶かしたとろみスープを作った。ポタージュとも言う。乾燥ハーブを散らすとそれっぽい見た目になった。手前味噌だが美味そうだ。

「これ、何の肉だ?初めて食うが美味いな」

「レッサードラゴンだよ」

「…これから倒すってのを今食ってんのか…」

「カケルの作ったご飯、おいしい」

「食ったら仮眠するから結界よろしくな」

「わかった」

「寝込みを襲う敵なんて居るのか?」

「居るだろ。人って敵が」

人はネーヴェを見ても怖がらない、厄介な敵だ。
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